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【完結済】此彼村で漫画家を探しています  作者: 稲井田そう
【第十一章】此彼村・屋敷地下
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怪異の原理

 私は福爲が老婆に案内された屋敷に入った。


「漫画家さ、入りそうな場所あった?」

「いや、廊下しか歩いてないですね。あと、案内された、荷物置くための和室……」

「へー」

「あと……、そ、外の蔵に、橋本の、死体があって……そこから、あの、荒破さんが倒した髪の毛のぶわっていう、気持ち悪いやつ、出てきて」


 福爲は屋敷に入ってから危険情報を後出ししてきた。ただ、心の整理がついていなかっただろうし、ここで責めるともっと言えなくなりそうなのでやめた。


「蔵ってどこ?」

「左側の外です」


 つまり、屋敷に入って左側の外の蔵に橋本ヒロキがグロい感じになってる死体がある。でも福爲が空から降ってきた位置は、屋敷の右側のあたりだ。


「お前、髪の毛から逃げる時に屋敷の真ん中突っ切ってきたの? それとも外周?」

「ま、真ん中ですね」

「体力あんね。学生時代なにしてたの」

「バドミントンとカヌーです。何かしら部活入らないと駄目みたいな感じだったんで」

「へぇ。じゃあ運動部で……基礎体力は持ってるほうか」


 私は屋敷の回廊を進んでいく。すると、障子の扉がぶち抜かれたような、えぐれた跡があった。


「福爲もしかしてここ通った?」


 問いかけると、福爲は引き気味に「あ、はい……」と頷く。


「怖かったねえ」


 壁は毛髪の集合体の勢いを物語る壊れ方をしていた。トラックで突っ込みましたといっても過言ではない惨状だ。怪異は、これだけの力を持つ……ということだろう。


 そこでふと、疑問を抱いた。


「あのさー」

「はい」

「憑りつかれてる系の平野マナの首絞めたら、止まったっていうか普通に力緩んだんだけど」

「怖い」


 福爲が私に怯えた。私をサイコパスかなんかだと勘違いしているのかもしれない。見捨ててしまえば良かった。なんだこいつ。


「怪異ってさ、壁ぶち抜ける力を持つわけじゃん。なんで平野マナは、私……迎え撃てたんだろう」


 平野マナは私に手鋸を突きつけ、なんなら殺そうとしてきたが、腕を掴んで防衛することは出来た。


 手鋸を使わず、そのまま本人が捨て身でタックルしてくれば、私はこの壁のように粉砕されていてもおかしくない。


「普通さ、マリオネットっていうか、肉体を直接操るような──ポルターガイストみたいな、そこら辺にあるボールを操ってぶつけるみたいなことだったら、私が首絞めようがお人形動かしてるノリで関係なかったわけでしょ。平野マナが痛がろうが。でも、平野マナ、首絞め効いてたんだよ。だから、人間にとりついた時って、動かす運動神経を勝手に操作する感じだから、首絞められたり神経を断つような行動をされると、駄目なのかも」

「平野が、取りつかれてるでもなく、自主的に襲ってる可能性は」


 それまで相槌に努めていた福爲が指摘した。


「襲う理由がない。初対面だし」


 しかし福爲は「札」と呟いた。


「札?」

「一回……村、出たんですよ。札持ってると、出れるみたいな話になって……」

「え~」


 私の時は山田さんと出ようとしても出られなかった。なら札は貼ってるか持ってるかすると、村を出れる脱出アイテムに変わる、ということか。


 山田さんは一枚持ってるし、希乃ちゃんも背中にぺったんしているので、出れるかもしれない。


「じゃあなんでお前うろうろしてんの。お神酒で帰ればいいのに。ほかのサークルの人間探してるの?」

「え」


 福爲は目を丸くした。まるで一切想定していなかった質問とでも言いたげだ。


「多分お神酒でも帰れるよ。お神酒は神主、札は僧侶から貰ってるんだけど、どっちが強いですか? って聞いたら乱闘騒ぎになるくらいの対抗意識があるから」

「お寺と神社って別じゃないですか」

「別だよ。別ジャンル別カテゴリなのになんでか競い合ってる。それでなんだけど、普通に、どうすんのサークル」

「どうすんのって言われても……」


 福爲は困っている。


「私、漫画家の背中に札をぺったんしなければならないから、行きますけど」

「じゃあ、普通に、行きます」

「ああそうですか」


 ついていきたいのか、仕方なくなのかよく分からない。ただ私としては漫画家を見つけに行きたいし、福爲を一人で下山させるのも心配だし、福爲についていって下山を見送り戻ってくる間に漫画家が死んだら、というのもリスクなのでこのまま進む。


「じゃあ、話戻すんだけどさ、平野マナが自発的に札を奪いに来たとしたらさ、なんで途中撤退するの? ホラーエンタメなら分かるのよ。尺の問題だなって。場面都合。今は何のため? と思って」

「分が悪いと感じたから……?」

「相手死んでるじゃんもう。死んでるの分かってないなら、なおさら生きるために粘るじゃん。手鋸を持って襲い掛かってくる時点で後に引けないわけだし。それを引いたなら、可能性として死体を、操っている何かがある」

「なにか?」

「うん。だって老婆とみしゃわ様的には、女欲しいわけじゃん。私、煙草吸わないし、仕事一本で独身だし、習わしが生贄目的なら全部満たしてるのよ」

「え」

「その時点でもう、女生贄が欲しいみしゃわ様と老婆の思惑から外れてるし、顔ギコられて手鋸で殺しに来た平野マナはおかしいし、何より変なのは、トイレの血」

「トイレ……ああ、平野マナが出てくる前のトイレですか」


 福爲がトイレに行ったとき、便器から血が流れたした。


 いわゆる恐怖演出なわけだが、あれの意味が分からない。


 儀式で生贄が欲しいなら、生贄が怖がることを何故するのだろう。


 下肢のない男の手記からして、男も女も使い道はある。人手不足というと不謹慎だけど、逃げられるような真似をするのはおかしい。



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