0054 妹とおうちデート(2)
翌朝、てかもう昼だ。
目覚ましをかけずに床に入った結果、案の定起床が十二時前になってしまった。
圧倒的な睡眠量により脳が溶けきったような感覚に陥る。一般的には『寝過ぎてだるい』と呼ばれる現象だろうが、私はこれが心地よかったりする。
そこから三十分ほど二度寝して、ベッドを出る頃には十二時を完全に回ってしまった。
自室からリビングに降りると、台所に立つ陽菜からお決まりの言葉が待っていた。
「おっそい」
「たははは」
うん、私も自覚してる。
ちなみにお母さんの気配は感じられない。食卓に並べられた朝食兼昼食が二人前であることからも、どうやら計画通り家から追い出されたようだ。
不憫だなあと哀れに思いながら食卓に着いた。
今日陽菜が作ってくれたのはたらこスパとオムレツとポトフ。
相変わらず品数が多くて豪華だ。
それに手が込んでいる。ナイフを入れたオムレツからチーズが現われ、そう思った。
「いつものことだけどとっても美味しい」
「ふん、当然」
頬を朱に染めて目を逸らす陽菜。本人としては感情を悟られまいとしているのだろうが、照れているのがバレバレだ。
ふん、なんて反抗期特有の素っ気ない返事をして強がっているところも、また可愛さを加速させている。
ああ、この時間だけで五感が保養されてゆくなあ。これこそ休日のあるべき姿だよ。
「デザートにババロア作ったから出すね」
食べきった頃に陽菜がそう言って冷蔵庫に向かった。
なんだか至れり尽くせりだ。いいのかこれで?
好きなだけ惰眠をむさぼり、極上の料理を享受されている私はいい気分だが、陽菜が楽しくないだろう。
日常感が満載すぎて、平等にあてがわれたお出かけの機会のはずなのに、つーちゃんや剣さんと格差を感じる。
「今日はなにがしたい?」
小皿に盛ったババロアを二つ持ってくる陽菜に尋ねた。
「なんでもいいんだよね?」
「もちろん」
なんでもしてあげたい。……なんかそういうエッチなことなどは除くが。
「じゃあ一緒にアニメ観よ。あたしが好きなやつ」
「アニメ?」
こりゃまた随分と簡単にできることだ。エッチなこと、なんて想像してしまった自分が恥ずかしい。
「どんなアニメ?」
「うーん、ジャンルとしてはラブコメになるのかな」
ラブコメ、というとあれだ。
自称冴えない普通の男子高校生が色んなタイプの女の子から簡単に惚れられて『やれやれ』とか言っちゃうやつ。
陽菜ってそんなの好きだったんだ。意外だなあ。
「いいよ。これ食べ終わったら一緒に観よう」
「うん」
ババロアに手をつけた。
甘酸っぱい爽やかな風味が広がるオレンジ味だった。
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