0053 妹とおうちデート(1)
「おうちデート?」
スケールの小ささに拍子抜けし、思わず聞き返した。
「うん。明日は家で一緒に過ごそ」
聞き間違いではなかったらしく、陽菜は平然と告げ、私はあっけに取られる。
つーちゃんには大阪、剣さんに至ってはハワイまで連れていかれたこのお出かけだ。
陽菜も対抗するように遠出を要求するだろうと、正直北海道や沖縄くらいは覚悟していた。
それがどうだ、まさかの自宅。
「本当にそんなのでいいの?」
「うん。ママは追いだ……お買い物に行ってもらうから」
予想と現実が乖離しすぎていたため再度確認してみたが、陽菜の答えは変わらなかった。
でもまあ、奇抜な見た目に反して陽菜は昔からインドア気質なところがある。それを鑑みれば、なくはない選択なのかな?
あと、あまりお母さんを雑に扱い過ぎちゃダメだよ。
「はあ、おうちデートねえ……」
デートという単語に引っかかりを覚えたが、私としても自宅で過ごせる喜びは大きい。
唯一の休日である日曜に遠出が続いていたせいか、最近体が重かったのだ。
明日は疲れを解消できるぞ。
「わかった。家で過ごそうか」
元々陽菜の言うとおりにしようと思っていたし、予想外に私のニーズまで合致した。反論など生まれるわけもなく快諾する。
「何時に起きればいい?」
「何時でも。起きたいときに起きてくれたらいい」
「いいの⁉ お昼になっちゃっても⁉」
「うん、いい」
これも予想外だ。
早朝移動や時差を悪用してまで私と多くの時間を共有しようとしていた他の二人とは大きく異なるものがある。
楽できて嬉しいけど、やけに淡泊だなあ、と。そんな感想を持った。
――もしかして。
早くも私への恋心が冷めつつあるのでは?
本当にそうなら望んでいた展開だ。陽菜が私以外の人を好きになることで、円満に姉妹関係が維持される。ものすごくいいことだ。
……うん、いいことだ。
正体不明の暗雲が心に影を落とそうとしていることに、自分でもよくわからなくなった。
それでも元来が細かいことを気にしない性格だ。陽菜の善意に甘えて、明日は目覚ましで起きなくてもいいと考えると、心は安堵で満ちる。
今はその幸せを噛みしめるとしよう。
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