0015 幼馴染みVSライバル(2)
「ちょっと二人とも、私のために争わないでよ」
まさかこんな少女漫画みたいな台詞を言う日が来るなんて思いもしなかった。
間に入ってなだめると、二人はなんとか落ち着きを取り戻したようで。
「みーちゃんがそう言うなら……」
「穴吹さんがそう言うなら……」
お二人さん、実は気が合うんじゃない?
ヒートダウンしたかに思えたそのとき、剣さんがつーちゃんをキッと睨み付けた。
「羽ノ浦さん、でしたかしら? どうやらあなたはわたくしと同じような状況にあるとお察ししましたわ」
「一体なにが同じなの? あなたもみーちゃんに想いを寄せているってことは伝わったけど、一緒にしないで。わたしがみーちゃんと歩んできた長い時間は、誰にも負けない」
「ふん、時間でしか物事を計れないなんて、お可哀想な人ですわ。わたくしは穴吹さんと共に切磋琢磨し、研鑽し合ってきました。なれ合いだけのあなたとは格が違いますわ」
あーあ、また火花散らし合ってるし。
もう私しーらない。というか帰っていい?
「ひとまず、この後穴吹さんと過ごすのはわたくしですわ」
え⁉ 帰らせてくれないの⁉
「はあ、意味がわからないんだけど。みーちゃんはこの後わたしの家でお泊まりするんだよ。一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、ベッドの上でイチャイチャするの」
いやいやOKした覚えありませんけど⁉
「ふふふ、あなたの勝手な強がりだと穴吹さんの顔に書いてありますわよ」
私の困惑を汲み取った剣さんは、高飛車に笑った。見慣れた女王様スタイルだ。
「羽ノ浦さん、あなたには正々堂々勝負を申し込みますわ」
おいおいおい、私をそっちのけでなにするつもり?
「あなたのアピールを邪魔立てするつもりはありません。その代わり、この時間はわたくしにください。そうじゃなきゃ不公平ですわ」
まあ剣さんとは学校が違うから部活終わりくらいしか会えないよね。
でもどうして私を無視して話を進めていくのかなあ?
「その話こそまったく意味が分からない。恋愛はスポーツじゃないんだよ。条件を合わせる必要なんてないでしょ。不公平なんて当たり前だよ」
ふむ、それも一理あるような気がする。
でもつーちゃん、さっき私と毎日暮らしてる陽菜に対してなんて言ってましたかね?
「そこまで言うのならわかりました」
剣さんはなぜか哀れむように息を吐いたかと思えば、一転してつーちゃんに怖い顔を向けた。
「ならわたくしは早々に海帝山高校に転校し、理事長に圧力をかけ、あなたを退学にしますわ」
は⁉ どういうこと⁉
私は急展開に目をむき、つーちゃんは迫力に押されたのか一歩退いた。
その上で、剣さんは言葉を続ける。
「羽ノ浦さん、この提案はむしろわたくしからの譲歩と思ってください。日本を牛耳る財界の要、剣コンツェルンの力を使えばその程度は容易ですわ」
ああ、そういや剣さんってめっちゃお金持ちだったんだ!
その権力を振りかざしたらつーちゃんの退学すら容易であると、なるほどなるほど……ってそれはさすがにやめて⁉ てかなんで話がここまで発展するの⁉ 女同士の修羅場って怖い!
「ですがそれは致したくありません。なぜなら穴吹さんにはわたくしを一人の人間として愛してほしいから。そのために、恋敵を蹴散らすなら正々堂々と。これがわたくしの矜持ですわ」
ほほう、意外とかっこいいこと言ってる。
これが私を無視して進めた話じゃなかったら完璧だ。
「……ふん、わかったよ。この時間はあなたにあげる」
「ご理解頂いたようで幸いですわ」
おお、ついに当事者の私が一切発言しないまま話がまとまりましたね。ところで人権って知ってる?
「では穴吹さん、こちらへご案内しますわ」
「みーちゃん、お泊まりはダメだよ」
は、早く家に帰してほしい……。
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