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【番外編】王妃殿下専属侍女の一日

以前別枠で書いていた『番外編』を、本編とひとつに纏めました。


ここからは、ロナウドと結婚して王妃になったフランドールの後日談や、その周りの人達の日常を書いた番外編になります。

 夜明け目前、目を覚まして仕事の準備をする。


 まずは着替えて身だしなみを整えたら、フラン様の朝の支度の用意をする。


 フラン様の朝はとても早い。


 それまでに間に合うように、全ての支度を済ませておかなければならない。


 なんせ、下手すれば私達よりも早く起きて、ほとんど全部自分で準備してしまうのだから。


 王妃の専属侍女ともあろう者が、主のお世話が出来ずになんの役目があるというのだ。


 コンコン


 「失礼します、おはようございますフラン様。」


 「おはようリッカ。」


 「今朝ももうお目覚めだったのですね。」


 「今朝はさっき起きたばっかりよ。」


 「いつも申し上げてますが、もう少しゆっくりなさってください。

 仕事だって少なくないのですから、休める時にしっかり休んでおかないと。」


 「しっかり休めたから、自然と朝目が覚めたのよ。」


 「昨夜も随分遅くまで起きていらしたのに。

 睡眠不足は美容の大敵ですよ。」




 フラン様が王妃になってから、生活の多くが変わった。


 まず、私以外にフラン様の専属侍女が二人と専属文官が三人増えた。


 とは言っても、私は常にフラン様と一緒にいて身の回りの事をしているのだけど、今まで以上にフラン様の仕事は山盛り沢山。


 これだけ周りに助っ人がいても、のんびりしている余裕はない。


 何せ、ただでさえ量の多い王妃の仕事以外に、魔法研究専門機関の仕事があるのだから。


 主な仕事は魔導具生成だけど、王宮では出来ないから書類仕事。


 また新しい発見でも見つけるのかしら。


 あ、また腕組みしながら何か考えてるわ。


 こんな時は、他の侍女にアレを持ってきてもらう。


 そう、ポテチとコーラ。


 領主補佐時代のケンさんは、私以上に絶妙なタイミングでフラン様へポテチとコーラを用意していた。


 彼がいない今、と言うより初めから、フラン様のことを誰よりも理解しているのはこの私。


 抜群なサポートをして差し上げないといけない。




 「フラン様、そろそろ昼食の時間になります。」


 「今日は私が料理をしてもいい?」


 「どうせダメと言っても聞かないのでしょう?

 お供致します。」


 王妃になられても、フラン様はこうして度々料理を作られる事がある。


 「それで、今日は何をお作りになられるんですか?」


 「今日は牛丼が食べたいと思ったのよ。」


 「ギュウドン?」


 「ご飯を使った料理よ。

 美味しいんだから!」


 そしてキッチンへ向かい、料理を始められた。


 玉ねぎをくし切りに、生姜を千切りにして、水、醤油、調理酒、砂糖を入れた鍋に入れて中火にかける。


 煮汁が煮立ってきたら、牛肉を解しながら鍋に投入。


 灰汁を掬い取りながら、しばらくやや弱めに火にかける。


 玉ねぎがクタクタに透き通って煮汁が煮詰まってきたら、大椀にご飯をついで上から煮詰めたものをかけたら、牛丼の完成。


 「ご飯の上に掛けてしまうんですね。」


 「この煮汁の掛かったご飯が、本当に美味しいんだから。

 あぁ、紅しょうがが欲しいなぁ。」


 確かに、醤油と砂糖で味付けされた煮汁のいい匂い、思わずお腹が空いてしまいそうになる。


 「という訳で、これリッカの分ね。」


 「何度も申し上げますが、ご結婚前と違いフラン様は王妃なんですよ。

 侍女の私がお食事を共にしていい立場ではないんですから。

 料理も、ご自分のものだけご用意ください。」


 「もう、相変わらず融通が利かないんだから。

 冷めると美味しくなくなっちゃうわ。」


 「作り方は拝見してましたので、また後日作って温かいうちに頂きます。」


 「仕方ないわ、私だけでも出来たてを食べましょ。

 頂きまーす。

 んっ、おーいしー!」



 フラン様が昼食を召し上がり終えた後、私も牛肉を頂いた。


 クタクタに柔らかく火が通った牛肉と玉ねぎが甘じょっぱいタレとご飯とマッチ。


 確かに、これは温かいうちに食べておきたかったなぁ。




 昼食後、フラン様はまた仕事。


 今度は近々ある外交に向けてやり取りをしている。


 本人曰く外交はあまり得意ではないらしいけど、誰とでも仲良くなれてしまうフラン様なら全く問題無さそうだと思う。


 「大人の汚い部分が出てくるから好きじゃないのよ。

 はぁ、いつまでも子供のままでいられたら良かったのに。」


 そう言いながらも、目の前の仕事をどんどんこなしていくフラン様。


 「でも、いつまでも子供のままですとロナウド陛下とも結婚できないままでしたよ?」


 「そ、それは嫌だけど……」


 「私は早くお二人のお子様を抱きたいと思っておりますから。」


 「そ、それはもう少し先の話に……」


 「あら、お二人の関係が上手くいってらっしゃらないんですか?」


 「そ、そういう訳じゃなくて……」


 「では、可愛いお子様期待してますよ。」


 「〜〜〜〜!!」




 夕食は、ロナウド陛下、先王陛下、先王妃陛下、ロナウド陛下のご兄姉もご一緒なさっている。


 「フランや、今日はギュウドンという新しい料理を作ったそうだな。」


 「はい、コックにレシピをお伝えしておりますので、是非召し上がってください。」


 「フランは本当に料理が得意なのね。

 このイカ飯だって、フラン考案の料理でしょ?

 わたくし、イカがこれ程美味しい食材だったなんて、フィアンマ男爵領が出来るまで知りませんでしたから。」


 「食に関して、フランは世界一だもんな。」


 「そんな、みんな言い過ぎですって。」


 「そういえば、今日何やら大きな鉄の箱を作ってたけど、あれはなんだったんだ?」


 「ロナウドの力を借りて、中に食べ物を入れて魔力を流すと、食べ物が温まる箱を作ったんです。

 限定された人しか使えませんが、料理の幅が大きく広がる物なんです。」


 「へぇー、フランドールさんはやっぱり凄いですね。」


 もしかして、冷めた牛丼を食べる私を見て思いついたのかしら。


 流石フラン様、お優しい。




 夕食が終わってからが、私達の本当の戦い。


 夜更かししたいフラン様VSフラン様を休ませたい私。


 激闘の末、一旦勝つのはいつも私。


 ただ、私が部屋から出ていくといつも何かしら実験や仕事をし始めるのがフラン様。


 今日も……ほら、布団から出てどこからかこっそり持ってきた薬草を調合しているわ。


 「フラン様!いい加減にしてください!」

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