216 公爵令嬢は魔法学校を卒業する
遂にこの日が来てしまった。
今日は卒業式。
私達二年生の最後の登校日。
このエレメント魔法学校では色んな事があったなぁ。
元一班のアンリさん、ウッディ君、ビクター君と仲良くなれたのも、カーネル元生徒会長、ミラ元副会長、エリックと出会えたのも、レオ、例の少年、ローズさんを助ける事が出来たのも、この学校のおかげだ。
先生方にも、お世話になったりお世話したりしたなぁ。
特に、ジョニー先生とは色んなやり取りをした。
魔法実技のゲンコツ先生にゲンコツされるのも、もしかしたら今日が最後かもしれない。
楽しい事が沢山あった。
悔しい事や辛いこともあった。
でも、どれも私の大切な思い出だ。
そして、これから始まる卒業式が終わると、私達二年生は生徒ではなく元生徒になる。
卒業式は毎年恒例、午前が卒業式、午後が卒業パーティになる。
新生徒会長の例の少年が祝辞、元生徒会長の私が答辞を読み上げる。
答辞を読み上げている時、内容に釣られて学校での思い出が頭をよぎる。
目頭が熱くなりながらも、何とか滞りなく答辞は終わった。
卒業式の一つの演目が終わるにつれて、私達の学校生活も終わりに近づく。
国王陛下の挨拶、一言一言が胸に刺さり、締め付ける。
卒業式って、こんなに切ない行事だったんだろうか。
去年は送る側として参加していたからか、卒業生に会えなくなる寂しさはあっても、これ程までに時の流れが身に染みる事はなかった。
そして、卒業式場から私達は退場。
残すは午後の卒業パーティのみになってしまった。
今年の卒業パーティの衣装は『学校で一番思い入れのある服装。』
制服や武道着、ドレス姿の人もいれば、アンリさんのようにプリキュン衣装、ウッディ君のように盆踊りで着た浴衣、ビクター君のように仮装パーティで着た民族衣装のポンチョ等、本当に様々な格好をしている。
私はやっぱり制服。
元生徒会メンバーも、制服姿。
「これで、制服着るのが最後になるしな。」
「この学校の思い出といえば、やはり『日常』ありきですからね。」
「思い入れの沢山詰まった衣装ですから、最後までこの服を来ていたいです。」
みんなも私と同じだった。
会場は去年と同じ桜が咲く中庭。
去年、まだ入学前のポスカ君を呼び出して桜を咲かせてくれたんだよなぁ。
ローズさんと中庭でよく一緒に本を読んでた。
そういえば、レオと初めて出会ったのも中庭だったんだよね。
そんなレオに例の少年が助けて貰っていたのが、この中庭だったっけ。
目に触れるもの全てが、思い出に繋がる。
と、会場には既に多くの人がいた。
卒業生の家族だった。
生徒会を中心に、卒業生には内緒で全員の家族と連絡をとっていたのだという。
遠方の家族には、先生に協力してもらって気球で駆けつけてもらうといった大掛かりな事までしていて、卒業生全員家族の誰かが来てくれている。
学校生活最後の参観日だ。
我が家は、お父様とお母様が来てくれていた。
卒業式に親が来るなんて、日本では普通だけどこの学校では初めての出来事。
なんだか顔を合わすのが少し照れる。
「「この巨大白金ゴーレム、武闘会の時にはなかったよ?」」
開口第一声がそれかよ!
挨拶が例の少年によって行われ、卒業パーティが始まった。
パーティ内容は、例年通りとそれ程変わらず、ダンスや立食、歓談が行われている。
食べ物は、私が自由研究で渡したレシピを使っているようで、みんな満足の食事内容だ。
最初の余興として、二代目プリキュンによる演目。
最新作を作っていて、時の戦士プリティティンプスと狭間の戦士プリティローグスが登場。
話の内容も面白くて、みんな大盛り上がり。
もちろん、国王陛下も大満足。
これで、プリキュンはもう安泰だ。
続いての余興は、なんと卒業証書授与式。
最初に私が呼び出されて、
「卒業証書、授与。
フランドール・フィアンマ女伯爵。
あなたは本校において魔法に関する課程を修了したことを証する」
そう言われて渡されたのは、去年作られたものと同じ、ひらがなで書かれた卒業証書だった。
去年の卒業生が兄弟にいた一年生がいた事で、ひらがなの解読と卒業証書の作成が可能になったのだ。
渡された卒業証書を見て、あぁこれでもう本当に卒業なんだ、と実感させられて、目が潤む。
もしかすると、これから来年以降も卒業証書は受け継がれていくのかな。
いよいよ最後のイベントとなってしまった。
在校生からの花渡し。
ポスカ君お手製のブリザーブドフラワー。
一人三本ずつ持った一年生が、卒業生へ花を私に来た。
嬉しいことに、一年生全員が私に一本ずつ花をくれた。
「学校祭、とても楽しかったです!」
「被災地での活動話、感動して涙が出ました!」
「盆踊り楽しかったです!
来年、俺の主催パーティでさせてもらいます!」
「プリキュンステッキ、私の一生の宝物です!」
「運動神経悪いのに、あんなに武闘会で強いフランドール様の姿を見て尊敬しました!」
沢山の嬉しい言葉。
こんなに私の事を好いてくれてただなんて……
段々と花束が大きくなり、遂には抱えられない程になってきた。
一般生徒がはけた頃を見計らって、新生徒会五人が来てくれた。
「せっかくフランちゃん先生と一緒に通えたのに、また別々になっちゃうんだね。
僕の事、絶対に忘れないでよ?」
制服姿のポスカ君。
魔法研究専門機関で週二で会うでしょ、忘れるわけが無い。
「会長のおかげで、学校がチョー楽しかった。
マジガチサンキューじゃ足りねーし。
またいつでもデート待ってるから。」
何故か普段着のレオ、本人曰く私に指輪を渡した時の衣装だったらしい。
制服姿の例の少年は、私のおかげで今の自分がいるんだ、ととても感謝してくれた。
モブ会計の彼は、生徒会に入れてくれてありがとうございますと言っていた。
「フランドール様……
本当に、本当にありがとうございました……
感謝してもしきれません……」
ゴスロリドレスを着たローズさんが、ボロボロと泣きながら私に抱きついてきた。
その姿と行動で、遂に我慢していた涙が溢れ出る。
明日から、この学校での『日常』がなくなってしまう。
そう思うと、どうしても堪えられなくなってしまった。
抱きついてきたローズさんの肩を借りて、抱き合いながらお互いに泣いた。
今日だけはリリーちゃんからのお咎めもないみたい。
そんなリリーちゃんも涙を流している。
しばらく泣いていたら、ローズさんからボタンを渡された。
金と銀に塗られた木で作られたボタン。
「フランちゃん先生みたいに純金純銀じゃ作れないけど、これなら僕達でも作れたよ。」
うん、素敵なボタンだ。
数は、去年と同じ銀がよっつに金がひとつ。
大切な人に渡すように言われたけど、みんな大事な人だから選べない。
「貰えなかったからって、誰も怒らないから。」
「そうですよ、フラン様に大切なされているのは、皆さん十分にご存知ですから。」
みんな……ありがとう。
悩みに悩んだ末、銀ボタンは、被災地での救助活動を共にしたリリーちゃんとローズさん、生徒会役員として一緒に過ごしたセシル様、先生方の中で一番お世話になったジョニー先生に渡した。
そして金ボタンは、私の初めての友達で、恋人で、婚約者のロナウドの元へ。
このボタンを渡すと、卒業パーティも終わってしまう。
涙が止まらない。
周りのみんなも、つられ泣きや鼻を啜ったりしている。
「みんな……今まで、本当に……楽しかった……
本当に、本当に、ありがとうっ……!」
こうして、長い様であっという間の学校生活が終わった。





