210 公爵令嬢は魔女の家族に物申す
ローズさんの家族が、この会場のどこかにいるらしい。
ご両親、姉二人の家族総出だそうだ。
「どうして分かったの?」
「心の声が聞こえたんです。」
一応まだ会って会話したとかはないらしいんだけど、向こうはローズさんを探しているそうで、ローズさんは家族から逃げ回っている。
「どうして会わないの?
魔法はもう解いたの?」
「この学校へ入学する時に魔法は解きました。
その時、両親からは期待の声、姉達からは罵倒を浴びせられました。」
その期待の声というのが、心を操ることが出来ることを知ったご両親が、その魔法でエレメント魔法学校を支配するようにと言うものだった。
更に、今日のローズさんの魔法の実力を見て、ご両親は期待を完全に現実のものにさせようとしている。
その為、ローズさんに接触をしようと会場中を駆け回っているんだそうだ。
姉二人を連れてきたのは、ローズさんににとって二人がトラウマだから。
二人を使って言う事を無理矢理聞かせようとしているんだと。
何とも酷い話だ。
ガタガタと震えるローズさん。
「私が一緒にいてあげる。
だから、もしご家族にあっても堂々とするのよ。」
「あ、ありがとうございます。」
それでも不安そうなローズさん。
観覧者は段々と帰っていき、生徒も会場の片付けを始め出した頃、遂にやってきた。
「ローズ!ここに居たのか!
会いたかったよ!
いやぁ、見違えるほど成長したな!」
恰幅のいい小柄で成金ぽい格好の男性が、ローズさんに声をかけてきた。
「随分と立派な魔力使いになって。
お母様感動しちゃったわ!」
大量の宝石と毛皮を身につけた化粧の濃い女性も、ローズさんへ話かける。
「「……」」
後ろに着いてきた派手なドレスを着た女性二人は、ローズさんを睨むように見ている。
これがローズさんの家族……
話には聞いてたけど、本当に嫌な雰囲気がプンプン漂ってくる。
「それでローズよ、学校のみんなとは仲良くなれたかな?」
私を無視して話が進められて、ローズさんの表情は一段と険しくなる。
「ええ。
フランドール様、この四人が私の家族です。
お父様、こちらフランドール様です。」
「初めまして。
フィアンマ公爵家が長女で、フィアンマ伯爵当主、フランドール・フィアンマと申します。
お見知り置きを。」
「おお、君があのフィアンマ女伯爵か。
ワシはローズの父、ドミニク・シュヴァルツだ。
こちらが妻のネテフ、長女のマリーと次女のペオニーだ。」
大きな態度で挨拶をしてくるローズさんの父親。
「ほぉ、フィアンマ女伯爵がローズの最初の"ともだち"かい?」
「……。」
ローズさんが反応に困っている。
「ローズさんには日頃から親友として仲良くさせて頂いております。」
「フランドール様!?」
「そうかそうか、これからもよろしく頼むよ。」
私の方が爵位が上なのに、この人、私が若い女性だからって完全に見下してきている。
「じゃ、これから家族だけの団欒をしようじゃないか。
ローズ、来なさい。」
ローズさんが完全に強ばった。
「失礼を申し上げます。
ローズさんは先程の武闘会でかなり疲れております。
ご歓談はまた後日にしては如何ですか?」
「君は何を言っているんだね?
部外者には関係ない、口出ししないでくれたまえ。」
どうしても連れていくというのか。
「ローズさん、大丈夫。
私はずっとそばにいるから。」
そう言って、ローズさんの手の中に収まる程の大きさにしたミニゴーレム前庶務を渡した。
「……ありがとうございます、フランドール様。」
そして、四人とともにどこかへ行ってしまった。
「どうだねローズ、計画は順調か?」
「……この学校を乗っ取るっていう話ですか?」
「そうだ。
成長したお前の実力なら、簡単に手に入れることが出来るだろう?
ワシらを操った時のように。」
「……本当にごめんなさい。」
「いやいや、済んだことはもういいんだ。
ほら、姉さん達もお前に言う事があるそうだ。」
「ねぇ、あなたロナウド殿下と知り合いだそうね。
私に紹介しなさいよ。」
「セシル様やポスカ様、レオ様でもいいわ。
顔良し頭良し家柄良しの男性なんて、然う然う現れるもんじゃないわ。」
「どうにかして、私達とあの殿方達との間を取り持ちなさい。」
「まさか出来ないなんて言わないでしょうね?
ローズのくせに、私達に逆らうなんてあってはならないことよ。」
「ほら、お母様も何とか言って。」
「ローズ、分かっているわよね?
あなたに、私達四人の人生がかかっているのよ?
そこをしっかり自覚しなさい。」
「……」
ミニゴーレム前庶務を通じて会話は全部丸聞こえ。
もう黙って聞いてらんない!
「話は聞かせてもらったわ!
あなた達、とんでもない事を言っていたわね!」
「な、家族の団欒を盗み聞きとは、なんと無礼な!」
「無礼なのはそっちでしょう?
あなたは男爵、私は伯爵なのよ?
それに、『学校を乗っ取る』って、どういう事かしら?」
「そ、それは君の聞き間違いだ!
そんな事を言った覚えはない。」
「いや、俺達も聞かせてもらった。」
「「何!?」」
「ロナウド、セシル様、リリーちゃん、新生徒会のみんな!?」
震えるローズさんの元へ、例の少年が駆け寄って手を握って励ましている。
少し赤ら顔になっているローズさん。
あれあれ、これってまさか?
「盗み聞きして悪かった。
でも、二人の様子がおかしくて、どうしても気になったんだ。」
「ローズさんの優しい心に付け込んで学校を支配させようだなんて、あなた達許しませんよ!」
ロナウド、リリーちゃん……
「ロナウド殿下!セシル様!
こんな野蛮な女なんてやめて、今後私と共に過ごしませんか!?」
「貴様は何を言ってる?
俺にとってフランは、世界にたった一人の愛する女性だ。
貴様らのような奴らが『こんな野蛮な女』呼ばわりしていいやつじゃない!」
「生憎、僕にとってのリリーさんも、生涯をかけて大切にしていきたい女性です。
代わりになんてなれるわけがありません。」
ロナウド、セシル様……
「で、ではポスカ様、レオ様。
私達はまだ婚約者がいませんの。
是非、お相手になってくださらない?」
「僕、君達みたいな人がお嫁さんになるの、嫌だ。
フランちゃん先生を見習って。」
「俺もカンベン。
せめてローズちゃんくらいイケてる人じゃないと。
あんたらマジ無理案件。」
ローズさんの顔が思わず顔が赤くなってる。
あらあら、レオってばサラッと告白してない?
「て事だ。
貴様らは国家反逆罪と侮辱罪で、王宮へ連れていく。」
「ま、待ってください!
国家反逆罪だなんて、わしらは何もやってないではないですか!」
「まだやってないだけだ。
貴様らの悪事は常々耳にしていたが、証拠がなかったために捕られられなかった。
だが今、充分となる言質がそろった。
覚悟しろ。」
「ち、畜生ー!」
ローズさん一家はゴーレム達に捕らえられ、王宮へ送還された。
「ローズさん、ごめんなさい。
家族を逮捕してしまって。」
「いえ、とんでもないです。
ありがとうございました。」
これで、ローズさんを縛り付ける呪縛はなくなった。
武闘会での不安そうな顔色も、今ではスッキリとしたポーカーフェイスに戻っている。
そういえば、ここで数々の愛の告白が見受けられた気がしたんだけど?
セシル様は、ついにリリーちゃんを好きになったの!?
「今までと変わらず、リリーさんは僕にとって大切な人です。
フランさんだって大切ですよ?」
もう、そういう照れ隠しはいいから。
リリーちゃんはどうなのかな?
「私も、セシル様はフラン様同様、一生を共に添い遂げたい御相手だと想っています。」
だから照れ隠しはいいって。
あと気になるのが。
例の少年もレオも、ローズさんの事が好きなのかな?
例の少年は、ローズさんが心配で思わずとった行動だと弁解している。
へぇー、なるほどねぇ。ニヤニヤ
で、レオはと言うと。
「何言ってんの、魔女チャン超可愛くね?
当たり前過ぎな質問とか、ナンセンスっす!」
な、なんか本気かチャラいのかよく分からない反応だ。
そういえば、ポスカ君は誰が好きなんだろう?
「僕はフランちゃん先生一筋だよ?
いつでも僕に乗り換えていいからね!」
ニコッと可愛い笑顔で告白されながら抱きつかれた。
ま、まじですか……照れる。
「おい、フランは俺の恋人なんだからな!
横取りすんじゃねぇよ。」
慌ててポスカ君から私を引き剥がす旧生徒会のメンバー。
そんなみんなの反応に、ふっとローズさんが笑った。
初めて見るローズさんの笑顔。
うはぁ、やっぱ美少女の笑顔って格別だ!
「あ!ローズさん笑ったよ!」
「へえー、魔女チャンの笑顔バリイケてんじゃん。」
「ええ、とっても素敵です。」
みんなから笑顔を褒められて真っ赤に照れるローズさん。
素敵な人達に出会えて、本当に良かったね。
完全に置いてけぼりのモブ新会計を除いて。





