201 公爵令嬢はデートをする2
ロナウドに買ってもらった靴を履いて、靴屋を後にした。
また、目的もなくブラブラと散策。
ふと、通りすがりの人波の中で目に付いたものがあった。
私達より幼い、男女二人組。
手を繋いで仲良さそうに歩いていた。
あの二人、カップルなのかな。
それとも、兄妹とか?
ちょっと羨ましい。
うん、勇気を出そう。
思い切ってロナウドの手を掴んだ。
「ん?」
「……手、繋ぎたい。」
「うん、いいよ。」
掴んだ手を握り返してくれた。
「えへへ。」
「どうした?」
「勇気を出して良かった。」
「何に?」
「手を繋ぐのに。」
「そっか、勇気出してくれてありがと。」
「どういたしまして。」
幸せだな。
どうせなら、もっと早く勇気出しとけばよかった。
「ねぇ、こっちに来たのなら、寄りたい所があるの。」
そう言って、王都の端の方へ向かった。
そこにあるのは、馬舎。
去年の狐狩りでお世話になった老馬、レックスがいる。
久しぶりに立ち寄ったけど、レックスは元気そうだ。
今はもう現役を引退して隠居生活中なんだけど、今年の狐狩りもレックスにお願いしたかったので寄ったのだ。
引退とは言ってもまだ人を乗せる元気はあるらしく、馬主さんからオッケーをもらえた。
「レックスに初めて乗った時、ロナウドの事考えてたんだよ。」
「なんで?」
「軽速歩をする時に、リズムが取れなくなりそうで混乱したの。
その時、ロナウドと初めてダンスした時に言ってくれた『落ち着いて。間違えてもいいから。もっとダンスを楽しもう。大丈夫だ、俺を信じて。』って台詞を思い出したのね。
そうしたら、自然とレックスに乗れていたの。」
「へぇ、こんなところで俺役に立ってたの。
知らなかった。」
「ホントね。
ロナウドはいつでも私のそばにいるのね。」
そう言いながら、レックスにおやつをあげたりブラッシングをして、暫く過ごした。
昼食を簡単に済ませて再び散策していると、ふと小さな花屋の前で足を止めた。
「見ていく?」
「うん。」
店先に並んだ色とりどりの花を、じっくりと眺めた。
「ロナウドは花好き?」
「綺麗だとは思うけど、特別好きとか意識したことは今までなかったな。」
「まるで私みたいね。」
「否定しないでおこう。」
「何よもう。
まあいいわ。
私もね、景色の一部としては好きなんだけど、花単体をどうなんだって言われると、そこまでなのよ。」
「へぇ、でもそうなんだろうなって思った。」
「なんで?」
「なんか、実験材料として取り扱ってそう。」
「間違ってないけど、なんか失礼ね。」
そんな他愛もない会話をしながら、お店の花を二人で見ている。
奥に入っていくと、店員さんがブーケを作っていた。
誰か結婚式をあげるのかな。
ふと、ブーケに使われていた花が目に止まった。
「ねえ、花言葉って知ってる?」
「うーん、詳しくないけど有名なやつなら。
赤いバラとか。」
「どんなの?」
「『あなたを愛してる』」
言わせておいて照れてしまう。
店員さんも、ロナウドに見惚れていた。
「じゃあ、これは知ってる?」
ブーケに使われていた青い花を指さした。
「なんて花?」
「ブルースター。
名前も知らないなら、花言葉も分からないわね。」
「だな。
これの花言葉は?」
「ふふっ、秘密。」
「何だよそれ。」
そのお店で、ブルースターの花の種を買った。
「私の今の気持ちよ。
この花が咲いたら、教えてあげる。」
「じゃあ、その時の楽しみにしておこうかな。」
そう言って、また手を繋いで歩き始めた。
日が暮れかけたので、そろそろ帰る事にした。
今日一日、すごく楽しかった。
あっという間だった、なんだか名残惜しい。
「また二人で出かければいいだろ。
いつでも一緒にいられるんだから。」
「そうね、また一緒にデートしよう。」
そうは言っても、今日この時間が終わるのが勿体ない。
もっと一緒にいたい。
ロナウドも同じように思ってくれてるのかな。
もうすぐ学校に着いてしまう。
「最後に、ちょっとだけ寄り道。
いい?」
「う、うん。」
「じゃあ、スカートめくれないように抑えてて。」
そう言うと、強い風が吹いて私たち二人はあっという間に空に浮かんでいた。
「か、風魔法?」
「そ。これで飛んだ事ないだろ?」
「想像通り吹き荒れるのね。
スカートどころじゃないわ、服も髪もボサボサになっちゃう。」
「もう帰るだけだから、いいじゃんか。」
遮るものが何も無い太陽が、地平線へ沈んでいく。
とても綺麗で、思わず見入ってしまう。
「今日、本当に楽しかった。
デート、誘ってくれてありがと。」
「私もすごく楽しかったわ。」
誰もいない空の真ん中で、二人きりの私達。
暫く見つめあって、自然と唇が合わさる。
後夜祭の時よりも、少し長めのキス。
ゆっくりと顔が離れて、もう一度見つめ合う。
「じゃ、帰ろっか。」
「うん。」
日が沈み切るのと同時に地面へ降りた私達は、いつもの日常へ戻って行った。
「最後なんで空飛んじゃうの!?
何してたかわかんなかったじゃない!」
だから着いて来るなと言っただろう!?
ブルースターの花言葉
「幸福な愛」「信じ合う心」





