199 公爵令嬢はデートに誘う
次の日、レベッカちゃんに「必ず誘うのよ!」と強制されて校舎へ向かった。
早速ロナウドに会う。
「フラン、おはよう。」
「お、おはようロナウド。」
「おはようございます、フランさん、リリーさん。」
「おはようございます、ロナウド王子、セシル様。」
うん、今二人きりじゃないし、今じゃなくてもいいよね?
今日はまだ始まったばっかり。
時間はたっぷりある。
魔法座学の授業中。
私の隣の席にロナウドがいる。
今なら、こっそりデートに誘える。
「ロ、ロナウド……」
「どうした?
授業中だぞ?」
「えっと、その……」
言葉が詰まる、出てこない。
「ぷっ。」
「え、何?」
「それ、ジョニー先生の似顔絵?」
「え、これ?」
ノートに描いたジョニー先生の落書きを見て笑われた。
「結構自信作なんだけど、似てない?」
「いや、メッチャ似てて笑えた。」
「そこ二人。
何おしゃべりしてんだ?
授業に関することか?」
「えーっと、ジョニー先生の事だから関係無くはないと思います。」
「その俺らしき人物の落書きの何処に授業と関係があるんだ?」
教科書で頭を叩かれた。
ちくしょう、覚えてやがれ。
じゃなくて!
デートのお誘いだってば!
ジョニー先生の監視の目が強くなって、その後は結局何も出来なかった。
武術の授業。
これは基礎練の私と武器術のロナウドとで完全に別行動だから、二人きりの時間なんて作れない。
あるとすれば、訓練場と更衣室までの行き来の時だけ。
でも、普段やってない待ち合わせとかすると、変に目立って逆に誘いにくい。
タイミングがバッチリ合うように、自然に……
全然タイミング合わなかった。
次だ、次。
昼食は毎度おなじみ大人数でのご飯タイム。
「まだ誘えてないの?」とレベッカちゃんにお叱りを受けて、只今監視され中。
席かいつも隣だから、いつでも声掛けは出来る。
ただ、周りにはみんなが居る。
しかも、レオに聞かれると冷やかしてくること間違いない。
慎重に、慎重に。
「あれ、会長なんかいつもと様子違くね?」
ちょっと、フラグ立ててんじゃないよ!
「どうして俺の事じっと見てんの?
もしかして、王子サマじゃなくて俺に惚れちゃったとか?」
そういうの、今いらないからー!
あーもう、ここじゃもう無理だ、次だ、次!
ヤバい、もう午後になっちゃった。
魔法実技の時間になった。
どうせ私達は自習か指導なんだし、ここで決めてやろう!
「ロナウド、私と勝負しない?」
デートのお誘いは出来ないくせに、どうして決闘の申し込みはスっと出来るのかな?
「いいぜ、何か賭けるか?」
「勝った方がお願い事を何でもひとつ聞くってのはどう?」
「いいぜ、いざ勝負!」
よし、これで勝ってデートに誘えばいい!
そうと決まれば、全力を出すぞ!
その様子を見ていたゲンコツ先生に速攻で中止させられた。
ついでにゲンコツも頂いた。
ちくしょう。
ってのが一日中続いて、気づけば放課後。
あーやばい、あっという間に今日が終わる!
どうしてデートに誘うってだけで、こんなに苦労しなくちゃいけないんだろう?
パッと声掛けてバパっとお誘いすればいいんだよ。
そうだよ、ほら、丁度いいタイミングでロナウドもいる事だし。
「ロ、ロナウド!」
思い切って呼び止める。
「ん、どうした?」
さあ、ここで「明日の休み、デートしよう」って言うだけ。
ほら、簡単じゃない。
「えっと、あのー、そのー、あ、明日って、その……て、天気いいかな?」
「多分いいと思うけど?」
「えっと……」
どうして?
なんで言葉が出てこない?
「今日のフラン、何だか変だぞ?
どうしたんだ?」
な、なんて言えばイーノック?
今まで、お出かけに誘うのに気軽に声掛け出来てたのに、デートのお誘いって意識するとこんなに緊張するなんて。
「……もしかして、この間のキスの事、困ってる?」
「え、それはどうして?」
「いや、急にあんな事されて、嫌だったのかなって今更思ってて……」
「い、嫌じゃなかったよ!?
すっごくビックリしたけど。」
「じゃあ、どうしてそんなに不自然な態度をとるんだ?」
ロナウドに不審がられてる。
ここはもう、勇気を振り絞って!
「あ、明日の休み、デート行かない?」
よし、言えた!
「いいよ。」
ケロッとした顔でアッサリと返事をされた。
い、今まで一日中「デートしよう」の一言が言えず悶々としてたのに……
「まさか、それを言うためだけに一日変な様子だったのか?」
変な様子ていうなよ。
「ぶっはっははは。」
「……何で笑うのよ?」
「いや、フランの意外な一面が見れたなぁって思って。
そんなに初心だなんて知らなかった。」
初心って言うなよ、恥ずかしい。
「俺の事を恋人として意識してくれるのは嬉しいけど、もっと気楽に、今まで通り接してくれればいいんだからな?」
「ロナウドは随分と余裕じゃない。」
「余裕って言うか、フランと一緒ならどんな時でも楽しいから、その雰囲気を流れに任せて楽しんでるだけだ。
そんなに余裕そうに見える?」
「ええ、まるで、私一人だけがドキドキしてるみたい。」
「そんな事ない。
俺だってドキドキするよ。
今だってしてるんだし。」
「全然そんな風に見えないけど?」
「フランが顔に出しやすいだけだって。」
「そんな事ないもん。」
こんな会話をしてても、私だってドキドキしている。
そのドキドキが、嬉しくて、ちょっと苦しくて、心地良い。
「デートでは何する予定?」
「デートに誘うので頭がいっぱいだったから、何にも考えてなかったわ。」
「じゃ、明日のデート何するか、お互い考えておこう。」
「うん、そうしよ。」
……沈黙が続く。
まるで、後夜祭の時のような空気。
まさか、まさか……
「あ、会長見っけ!
こんなところで王子サマとイチャイチャしちゃってんの?」
空気ぶち壊し。
ロナウドよりも先にレベッカちゃんとアンリさんがレオを追いかけ回していた。
お前ら……





