193 公爵令嬢は専属侍女と専属料理人に質問される
「お帰りなさいませ、フラン様」
「フランちゃん、おかえり。」
「ただいま。」
「さぁ、全てを話してもらいますからね。」
「本当よ!
学校長さんから聞いた時、すっごく心配したんだからね!」
「……本当にごめんなさい。」
「まず、学校を出てから何があったのですか?」
「伯爵領へ向かうために、リリーちゃんとローズさんと一緒に重力魔法で向かったんだけど、その重力魔法が凄いの!」
「どう凄かったの?」
「空にフワフワと浮いたかと思ったら、真横に落ちるのよ!」
「「真横に!?」」
「そう!
重力の方向を変えて、落下を移動手段にしちゃうの!
ローズさんてば、凄い考えよね!」
「フラン様なら直ぐに思いつきそうな考えですけどね。」
「真横に落ちるって、どんな感じ!?」
「背筋がゾワゾワするって言うか、日常生活じゃまず体験できない不快感よ。」
「え、不快なの?」
「リリーちゃんなんて、気絶しかけてたんだもの。
今度、ローズさんに体験させてもらうといいわ。」
「ダメ!
私、高い所自体苦手だもの!」
「レベッカちゃん、高い所苦手だったんだ。
なんだか意外。」
「では、代わりに私が体験致しましょう。」
「……ローズさんに頼んでね。」
「で、そのまま現地へ?」
「途中、山火事を見つけてね。
水魔法を使える人がいなかったから、燃えてる部分を土壁で囲って、延焼しないようにしたの。」
「そこってどうなったの?」
「分からないわ。
騎士団の方がどうにかしてくれてるかもしれないけど、報告は聞いてないのよ。」
「ちゃんと報告した?
ホウレンソウが大事って、フランちゃんがいつも言ってるでしょ?」
「ちゃんとしたわよ!
失礼ね!
それで、そこから少し離れた村が、土砂崩れで埋まっていたから、まずはそこの救助活動をしたわ。」
「む、村が埋まってたのですか?」
「ええ、それも半分もの地区がよ。
本当に酷い有様だったわ。」
「村は掘り起こしたの?」
「ええ、覆いかぶさった土砂をゴーレムに変えて、何とか生き埋めになった方全員を探し出すことが出来たわ。
その殆どが亡くなってたんだけど、二人だけ奇跡的に助けることが出来たの。
リリーちゃんとローズさんがいなければ、その二人もきっと助からなかったわ。」
「それって、私の医学の腕じゃ治せない程だったの……?」
「生き埋めなんかで筋肉が圧迫され続けてると、筋肉細胞が壊死してきて毒素を発生させるの。
それを、救助する時に圧迫を解放した事によって、全身に毒素が回って死んでしまうことが多いのよ。
解毒のできるローズさんと、治癒のできるリリーちゃんでなければ、無事に助かる可能性はかなり低かったでしょうね。」
「なんと惨たらしい……
しかし、無事な方がいらっしゃって何よりでした。」
「村の方達からは沢山の感謝の言葉と気持ち、そしてプレゼントを頂いたの。
でも、私はこの時点で正気を保つのがかなりギリギリだったわ。」
「フラン様……」
「フランちゃん……」
「だって、市街地に着いた時、目の前には地獄しか無かったの。
立ち込める土埃、溢れる異臭、崩れた家屋、助けを呼ぶ叫び声と悲鳴、何一つとしてまともなものがなかったのよ。」
「「……」」
「どんなに私が動いても、全然無くならない瓦礫の山、その下で生き埋めになっている人達、そして、すぐ目の前で消えていく命……
『私なんかじゃ助けられない』って気持ちと『私でなきゃ助けられない』って気持ちで混乱して、正しく判断なんて出来なかったの。
だって、どんなに疲れて動けなくなっても、すぐそこにいる人が『私が動くことによって助かる』なら、二人だって助けるでしょ?」
「……確かに、そうかもしれませんが……」
「私の事なんて、二の次になってたの。
自惚れてたのよ、自分の事を。
まだまだ動ける、ってね。」
「……フランちゃん、元々体力も魔力もないんだから……
そこ、忘れちゃ……ダメじゃない……ヒック……」
「ホントね。
ごめんなさい、泣かせてしまって。」
「本当に、本当に心配してたんだよ!?
私も、リッカさんも!!
フランちゃんが目を覚まさないって連絡を聞いた時、胸が張り裂けそうだったんだよ!?
お父さんが、盗賊から私とお母さんを守って死んじゃった時くらい!!
悔しくて、悲しくて、でも、何も出来ない、この気持ちをどこにぶつけていいのか分からないんだよ!?」
「……レベッカちゃん……」
「人として、許されざる発言を申し上げることをお許しください。
私は、フラン様の為に生きております。
何百、何千人の見ず知らずの方の命助ける事より、フラン様たった一人の命を守る事を、私は迷わず優先させます。
フラン様が居られない世界で、私は生きては居られません。
お願い致します、フラン様の為にも、そして私の為にも、もっとご自身を大切にして下さい。」
「……リッカ……」
「……ご無事なお姿を拝見出来、本当に、本当に、心から安心致しました。」
「二人とも、本当にごめんなさい。」
「……グスッ。
はい!フランちゃんは次から気を付けるって事で!
ねぇねぇ!
フランちゃん伯爵になったんでしょ!
流石フランちゃんだわ!」
「フラン様の命の代償が、たかが二ツ星勲章と伯爵位陞爵だなんて、軽すぎます。」
「確かに命懸けって事には変わりないけど、私の貰った伯爵位陞爵って自分で言うのもアレだけどかなり凄いことなんだからね?」
「それで今日ご機嫌だったの?」
「ううん、それじゃなくってね、えっと、その……
ロナウドとね、恋人同士になれたの。」
「「えぇ!?」」
「それはそれは、おめでとうございます。」
「フランちゃんてロナウド王子と好き同士じゃなかったの?」
「好意はあったけど、今まではそれが恋愛どうこうってのじゃなかったの。
今回の災害救助で、お互い、自分の気持ちに気づけたの。」
「へぇー、で、初恋はどんな感じ?」
「ど、どんな感じって……
なんだろう、心の奥がポカポカして、でもドキドキしたりギュッてなったり。
なんだか落ち着かないわ。」
「ふふふ、フランちゃんの恋愛話が聞けるだなんて、なんか新鮮!
それで?」
「それでって?」
「キスした?」
「てっ、手の甲にならキスされたわっ。」
「もう、そうじゃなくて。
二人にはまだまだ早いのかなー?
これからが楽しみねー、フランちゃん。
うふふふ。」
「もう、レベッカちゃんてば!」
「テルユキさん、よろしいですか?」
「どうしたの?」
「テルユキさん、よろしいですか?」
「……なんだよ?」
「テルユキさんも、ロナウド殿下に恋をしてますか?」
「んなわけねぇだろ!!」
「じゃあ、どんな気持ち?」
「フランの恋愛してる感覚が伝わってくるな。
俺自体、恋愛どころか初恋すらしたこと無かったから、体験した事ない感覚でソワソワする。」
「男性同士の禁断の愛を楽しむつもりはないんですね?」
「なんじゃそりゃあ!?」





