191 公爵令嬢は災害救助をする4
体調は充分に回復したので、仮設避難所を出て、ロナウドとお兄様と一緒に街の様子を見て回ることにした。
すると、会う人会う人みんなから、多くの言葉を掛けられた。
「助けてくれてありがとうございます。」
「家族を見つけてくれてありがとう。」
そんな声をずっと掛けられている。
助けることが出来た人、見つけることが出来たご遺体。
私の到着が間に合わず、目前で助けられなかった人もいた。
大切な人を救えなかった私を恨む人の声も中には聞こえた。
心に深くささる。
でも、殆どが私に対して優しい言葉だった。
私は、その時はただがむしゃらに動いていたから、一人一人の顔なんて覚えていなかった。
でも、みんなは私の顔を覚えていてくれている。
そして、私を覚えてくれている人達の命を、私は救える事が出来たのだ、と前向きに捉えることにした。
街は私たちが来た時より随分と整理されていて、瓦礫はほとんど処理されていた。
何も無い更地が広がっている。
ここにはかつて、活気溢れる街があったのだ。
自然というものは、私達に恵を与えてくれて、時には多くのものを奪い去る。
今回の大地震だって、私たち人間ではどうすることも出来ないもの。
だからこそ、今後このような惨劇を繰り返さないように対策する必要もある。
この街を統轄している伯爵にお会いした。
伯爵邸もまた地震の被害にあい、屋敷の下敷きになった長女を亡くされていた。
「この度の大地震による被害、更にご令嬢をお救い出来なかった事、誠にお悔やみ申し上げます。」
「娘の件は仕方がない。
地震直後に屋敷に潰され、即死だったのだからな。
息子や妻が無事だっただけでも、ありがたいと思う事にするしかない。」
娘の死を目の当たりにしながら『仕方がない』と思わざるを得ない伯爵の心境を思うと、胸が潰れそうになる。
「街はまっさらになってしまったが、そなたらを始め、騎士団の皆が来てくれたことで、多くの領民を助けて貰えた。
いつになるか検討もつかないが、助かった者達と共に、また今までのような活気溢れる領地に変えてみせるよ。」
北東部への道は騎士団によって直されたけど、陸路での支援物資がここへ届くのはまだ当分先になる。
住む家をなくして、僅かな食料で生きなければならないこの環境を、少しでも早く解決しなければ。
「伯爵、この街の地図はありますか?」
「残念だが、屋敷が潰れた時に燃えてしまった。」
「では、私の自己流になりますが、街の復興をお手伝いさせて下さい。」
私はリリーちゃんとローズさんと一緒に、街の中心ヘ来ている。
「もう二度と無茶はしない。
だから、二人の力を貸して欲しいの。
お願い。」
私の言葉の後、少し間を置いて返事が来る。
「あのような事は、本当に、絶対しないと約束してください。」
「フランドール様の為に、私達も全力を尽くします。」
そして、三人で街の上空へ飛ぶ。
街全体が見渡せる高さに到着すると、私は魔法を使う。
街の中心から徐々に広がるように、建物が次々と建っていく。
どんどん増えていく建物は、秩序よく統一されて立ち並ぶ。
魔力はぐんぐん無くなっていくけど、リリーちゃんに魔力を常に回復してもらえる。
街全体を作っているのだ、集中力だって半端ないし、疲労だってどんどん溜まっていく。
二人に心配をかけないためにも、時々休憩を挟んでは再び街を構築を繰り返す。
夕暮れ近くになり、私たち三人は地面へと降りた。
街を遂に完成させた。
「フランドール令嬢、本当にやり遂げてしまったのか!?」
伯爵が唖然としながら私に話しかける。
「私たちが今いる慰霊の大広間を中心に、西に教会、南東に集会場、北東に伯爵邸が建っています。
この四点は大通りで繋いでいます。」
そして続ける。
「一度起きた大地震が、今後二度と起こらないとは限りません。
これらの場所は耐震強度を特に強く建てています、今回のような事があった際の避難所として使ってください。
それと、領民の皆さんへ、避難訓練の実施をお願いします。
万が一の災害の際に、どのように対処して、どこへ集合するか。
それが出来るだけでも、被害を少なくすることが出来、安否確認もしやすくなります。」
それを言い終えると、伯爵は涙を流していた。
「こ、これ程の事をして頂けるなんて……
感謝、という言葉なんかではとても言い表せない。
本当に、本当にありがとう……」
「私は建物を建てただけなので、内装は空っぽだし、庭だって何も手が入れられていません。
街も七割ほどしか作っていませんので、これ以上のことは伯爵と領民の皆さんで頑張ってくださいね。」
「……全身全霊で恩に報いる。」
通信用魔導具の修理は完了していて、国王陛下直々に連絡をとることが出来た。
私が無茶をして三日間寝込んでいた事は知られていて、心から心配されたと同時に、無事だった事を安心してくださった。
国王陛下にまでご迷惑をお掛けしてしまった。
予定されていた全校生徒、全先生の救助活動は、私達五人の活躍のおかげで予想を遥かに上回って早急に終息出来たことで、不要になったそうだ。
私達は、明日の朝ここを発つことになった。
到着次第、今回の災害救助の詳細を伝える為、国王陛下の元へ出向く。
帰りは気球で送ると騎士団の人に言われたけど、ローズさんの重力魔法の方が早いから、と断った。
男子二人が重力魔法を体験したかったらしい。
五人同時出来るのかローズさんに聞いたけど、瓦礫よりも軽いし、影魔法で物資運搬してないから多分行けると。
人のことは言えないけど、無理はしないでね。
いざ出発の時、多くの人が見送りに来てくれた。
沢山の感謝の言葉と共に。
助けられなかった人の事で気を病んでいたけど、この言葉だって私へ向けてくれている。
全てを全身で受け止めて、前を向かないとね。
さぁ、王都へかえろう。
みんなの待つ、学校へ。
私の作ったこの街並は、後に『賢者の街』と呼ばれるようになっていた。





