189 公爵令嬢は災害救助をする2
ロナウドとセシル様は、会議の後軽く準備をして直ぐに出発した。
飛ぶスピードはかなり早かったから、もしかしたら私達より早く現地に着くかもしれない。
リリーちゃんとローズさんと私は、先生達が用意してくれた支援物資を取りに行く。
流石は国の重要機関でもあるエレメント魔法学校、緊急避難所としても使われるこの学校の災害用備蓄品はかなりのものだった。
流石にこれを全部持っていくのは万が一の時に危険だから、予定の500キロ分の物資だけを持っていく事に。
あまりに多すぎると、ローズさんの負担にもなっちゃうし。
影魔法で物資を影に詰め込み、いざ出発。
重力魔法で空を飛ぶなんて、私もリリーちゃんも初めて。
どんな感じなんだろう。
「では、いきます。」
ふわぁ……と身体が軽くなる。
正に無重力状態。
「な、なんだか不思議な感覚ですね。」
初の無重力体験に、ちょっと驚きのリリーちゃん。
「先ず、移動中に障害物に当たらないように、ある程度の高さまで浮きます。」
ローズさんがそう言うと、ぐんぐんと上空へと身体が浮いた。
「では、私に捕まってください。
ここから災害地まで落ちます。」
次の瞬間。
ズォーーン
うぉああぁあ!?
水平に落ちてる!?
成程、『落下速度のスピード程度』ってこの事だったのか。
これは背筋がヒュンヒュンする。
リリーちゃんは平気なのかな?
……凄い真剣な顔してる。
「治癒魔法で状態異常回復をかけていないと、気絶します。」
リリーちゃんはジェットコースター駄目なタイプだったんだね。
しかしまぁ、これは速い。
ロナウドやセシル様の風魔法よりずっと速いわ。
もしかすると、日が暮れるまでに到着しそう。
私達が災害地へ落ち始めて、はや三時間。
飲まず食わずで影魔法を使いながら重力魔法を使うローズさんに、段々と疲れが見え始めた。
すると、落下に慣れてきたのか、治癒魔法を使いながらなのか、リリーちゃんがローズさんへ回復魔法をかけてあげた。
「……ありがとうございます。」
「私が力になれるのは、この程度しかありませんから。」
見る見るうちに顔色が戻るローズさん。
これを機に、二人の仲が良くなればいいんだけど。
と、何もしていない私は二人を見ながらそう思った。
災害地が段々と近づいてきたのか、なんだか匂いが変わってきた。
土埃の匂いや、物が焼ける匂い。
やばい、山火事だ!
ローズさんに一旦落下を止めてもらう。
どうにかしなければ。
でも、ここには水魔法が使える人はいない。
仕方ない、応急処置だ。
いでよ、土壁!
火事の外側を高い土壁で囲い、それ以上燃え移らないようにした。
本当なら、火事が鎮火するまで様子を見た方がいいんだろうけど、今は時間が無い。
再びローズさんに落下をお願いする。
再び真剣な顔をするリリーちゃん。
まだ慣れてなかったんだね……
落下中、土砂崩れがあった場所が目に付いた。
あ、あれは先生が言ってた、土砂崩れに埋もれた村!
村へゆっくりと落下して、到着。
大きな山の山頂付近から崩れていて、どこが村の端か分からない程の酷い有様。
土に埋もれてない家も、地震によって家屋が崩壊、村は壊滅状態。
リリーちゃんとローズさんに被災者の処置をしてもらっている間に、私はパワー全開、解放!
いでよ、大量の土ゴーレム!
村を襲った土砂から、どんどん出てくる土ゴーレム。
ゴーレムが増えるにつれて、土砂はずんずん減っていく。
村に溢れかえるゴーレムを使い、救助活動。
今はもう無くなった土砂に埋もれて潰れてしまった家屋を撤去。
残念ながら亡くなってしまった人が次々と発見される中、奇跡的に二人だけ生存していた。
急いでリリーちゃんとローズさんが治癒魔法と毒魔法を使い、二人とも無事に生還することが出来た。
何とか村の端まで土砂を撤去した私は、完全に魔力切れ。
リリーちゃんの治癒魔法で回復したけど、学校を出てから一度も休憩していなかったので、ここで一旦休憩を挟む。
回復した私は再びゴーレムを使って、村の復旧作業。
リリーちゃんとローズさんには、被災者に飲食物と石鹸を配って貰った。
村全体の生存者はたった六割。
それでも、ご遺体になってしまった家族や知人を全員確認することが出来、村人たちには感謝された。
特に、生き埋めになっていた二人とその家族からは盛大に感謝され、村長から村の秘宝と呼ばれる大粒の翡翠のネックレスを頂いた。
誰が貰うか考えた挙句、三人の力なしでは出来なかった所業という事で、三人を代表して生徒会長の私が受け取り、魔法学校で保管してもらう事にした。
災害現場を目の当たりにしたのは俺を通じても初めてで、そこは混乱と悲しみ、そして大きな喪失感で溢れていた。
共に過した我が家が無くなり、変わり果てた家族の姿を目の前にした被災者の感情は、私の感じるものなんかの比ではない。
そんな光景を何度も見て、心が押しつぶされそうになった。





