185 公爵令嬢は再びパーティを主催する
夏に入り、制服も衣替えされる頃。
私とロナウドは去年同様、週一で行われているパーティの主催担当が近づいていた。
去年行ったのは、地球の民族衣装を着てディスコで軽快に踊る仮装パーティ。
その仮装パーティーがかなり評判良くて、今年の私達主催のパーティのハードルはズドーンと突き上げられてしまったていた。
いや、参った。本気で参ってる。
「どうするかな、今年のパーティ。
去年やり過ぎた感が凄すぎて、みんなからの期待度が高いんだよ。」
ホントそれ。
去年参加した二年生だけでなく、噂を聞いた一年生が背ヒレ尾ヒレをつけて更に想像力豊かに事を大袈裟に触れ回ってて、「今年の生徒会長と副会長の主催パーティはヤバすぎる」って事になってしまっている。
どうしてこうなった?
ロナウド、何か打開策ない?
「あったらこんなに悩まねえっつーの。」
はぁ、だよねぇ。
過去に何度かパーティを開催したけど、最初の提案はみんな私に丸投げしてくるから、私が何か思い付かなければ実行出来ないんだよねぇ。
あ、でもロナウドは何だかんだヒントくれてるなぁ。
ロナウドの誕生日パーティの時も、去年の生徒主催パーティも、「こんな感じのパーティ出来ない?」って言ってくれてた。
今回は何かないのかなぁ。
「うーん、なんか、クリスマスパーティみたいな年間行事っぽいヤツとかやってみたいかな。」
ほら、何だかんだ言いつつ結局アイデアくれるんだよ。
成程、年間行事っぽいパーティかぁ。
そもそも、そんなパーティってある?
新年会とか忘年会とか?
うーん、ただの飲み会じゃない。
ハロウィン?
男爵領で収穫祭してるわ。
イースターとか灌仏会とかは、この世界の宗教とは全然関係ないからなぁ。
とか言いつつ、クリスマスやってんだけど。
ん?
ちょと待てちょと待てお兄さん。
クリスマスっぽい事、あるじゃん!
さすがロナウド!
早速準備に取り掛かろう!
今回の主催パーティは、私とロナウドだけじゃ絶対に出来ないから、去年以上にたくさんの助っ人を呼んだ。
最初に準備するのは、楽器。
協力してもらうのはポスカ君。
欅の巨木を生やしてもらって、ロナウドの風魔法で切断。
大体の形を切り出して、私の熱魔法とロナウドの風魔法で割れないように慎重に乾燥。
完全に乾燥出来たら形を整えて中をくり抜く。
次に、牛皮の埃や傷を取って生皮を巨木の大きさに裁断、型胴にかけて型を取り乾燥。
新しい革は伸びやすく音色も悪いので、本来なら地球時間で約一週間天日干しにした後、最低でも2、3年室内で乾燥させるんだけど、時間が全然足りないから魔法で時短。
出来上がった楽器を鳴らしてみる。
ベゥォオン。
忘れてた、私、楽器全般使えなかったんだ。
ロナウドに交代。
んー、即興で作ったにしてはまぁまぁかな。
ついでだから大小様々な形の物を作ってみたけど、どれもそれなり。
私、楽器職人じゃないし。
雰囲気が楽しめればいいでしょ。
次に用意するのは、作曲家。
助っ人はもちろんセシル様。
さっき作った楽器に笛を合わせて、それっぽい曲を作ってもらう。
一応、私楽譜なら書けるから、見本の楽譜を渡してそれをアレンジしてもらう事に。
お、中々いいんじゃない。
いつもありがとう。
お次はダンス。
助っ人は、かなり大勢。
セシル様、リリーちゃん、アンリさん、ウッディ君、ビクター君、ポスカ君、レオ、例の彼、そして意外やローズさん。
「フランドール様のお力になれるのなら、是非協力させてください。」
と自ら名乗りあげてくれた。
今回のダンスはペアじゃなくて個人で踊るもの。
パラパラ漫画でロナウドに振り付けを教えて、それをみんなにも練習してもらう。
と言っても、振り付け自体は単調なもので、みんな直ぐに慣れてくれた。
「この踊り、マジウケる。」
レオはそう言うと思ってたよ。
最後の準備は、私とロナウドで仕上げる。
特に、出し物のひとつであるコレは、多分私しか作れない。
硝石、硫黄、炭を混ぜて作った黒色火薬。
この世界には火薬の存在がまだ発見されていないから、本当ならこれだけでも凄い発明になっちゃうんだけど、面倒くさいから報告とか今はしない。
それはまた日を改めて。
で、その黒色火薬を使った小さな玩具で、今回のパーティを更に盛り上げよう。
パーティ当日。
みんなお揃いの衣装で会場へ向かってもらう。
その衣装とは、浴衣。
着物とは違って素肌に直接着用して、麻の生地が汗を良く吸うので気心地もさっぱり。
足袋を履かず下駄を直履きする事で、足元も涼しげ。
扇子替わりの団扇で、更に清涼感アップ。
チラリと見えるうなじや足首が、いつもとはまた違う色気を醸し出している浴衣の評判は、男女ともに好評。
いざ、メインステージへレッツゴー!
会場は屋外。
食事は屋台で、たこ焼き、焼きそば、わたあめ、唐揚げ、たい焼き等、目の前で料理を作ってくれる。
つらづらと並んだ提灯の明かりで会場は照らされて、中央には大きな櫓が佇んでいる。
「今回のパーティのテーマは、『先祖への感謝』。
この国を作られた先代の王や国民、今は亡き先祖へ、我々が今を生きられる事への感謝を示し、パーティを楽しんでくれたまえ。」
挨拶を終えたロナウドの、金髪蒼眼の浴衣姿に誰もが見とれている。
さすが私の婚約者。
そしてなり始める、和太鼓と笛の祭囃子。
さぁ、盆踊り、始めるよ!!
櫓の周りを囲む、助っ人ダンス団。
太鼓の音頭に合わせて、手の動きよりも足の動きを重視。
盆踊りは、神送りの意味をもつもので、天地の間にいる人間が地を踏むという動作に、霊を封じ込める鎮魂の意味があるのだと。
『踊』という字が足偏なのも豆知識。
ちなみに、神迎えは手を重視した『舞』。
パターンの決まった踊りを繰り返す事で、(私以外)誰でも手軽に踊れる盆踊り。
参加したくなったらいつでも加われて、疲れたら自由に休憩出来るのも良い点。
助っ人ダンス団の踊りを真似て、みんなも楽しく踊ってくれている。
「さすがフランさんとロナウド。
今年も面白いパーティが出来ましたね。」
「フラン様の浴衣姿、とてもお似合いです。」
リリーちゃんだって、とっても可愛いじゃないの。
薄紫の浴衣と揺れるルビーの簪が、ピンクゴールドの髪と相まって本当に美しきかな。
「私はどうですか?」
ローズさんも、素晴らしいわ。
アップされた黒髪や黒い浴衣から醸し出される愛らしさと色っぽさが、言葉に出来ない程。
そして二人の目があわさって鳴り響くゴング。
なんなんだよ、この二人の争いの原因は。
パーティも終わりに近づき、私の作った玩具をみんなに配った。
一人三本づつ配られたそれは、線香花火。
着火して火球になっては気泡が破裂し、を繰り返すその姿は『蕾』、液体状に変わった火球が破裂し力強く飛び出す火花は美しく咲き誇る『牡丹』、多くの火花が四方八方に激しく飛び出す『松葉』、火花の勢いは衰え火花は細く垂れ下がった『柳』、消える直前、最後まで美しく咲きながらも花弁をひとひらずつ落としてゆく『散り菊』。
まるで人の一生を重ね合わせたかのようなその姿は、パーティを締めくくるのにピッタリだった。
「線香花火って、凄いね!
火種を大切に育てないと直ぐに落ちちゃうけど、育ちきった時の火花の綺麗さったら!
あんな綺麗な火花、初めて見たよ!」
ポスカ君が興奮して私に抱きついてきた。
それを引き剥がす生徒会メンバーとローズさん。
「フラン様はいつもワタシ達の想像もつかない事を実現されますね。
とても感動しました。」
「盆踊りって、楽しいですね。
ペアで踊るダンスも良いけど、みんなで輪になって踊るのが良かったです。」
「太鼓の、お腹に刺さるような音、気持ちいい。」
楽しんでもらえて、良かったよ。
「会長、ちょマジやり過ぎって。
次やる俺らの事も考えて。」
あ、次の担当ってレオとローズさんだったのね。
うん、なんかごめん。





