182 公爵令嬢は二度目の海事研修を行う2
海事研修二日目。
基本的にする事は初日と同じで、今日の夕方までにフィアンマ男爵領北西側海岸へ向かうこと。
ミニゴーレム庶務の伝達によると、セシル様・リリーちゃんペアのいる取り残され班は、朝早くから出発して乗合馬車を見つけ何とか目的地へと向かえているけど、今日中の到着はおそらく無理らしい。
ロナウド・ビクター君ペアのいる乗合馬車グループは、前日夜の夜営も順調で、目的地に予定通り到着できそうだと言う。
そして、私のいる先駆け二人組は、ゴーレムと仲良く手を繋いで三人で徒歩で目的地へと向かっている。
魔導具は使えるのだけど、魔法の扱いがそれ程上手じゃない二人にとって魔導具は出来すぎた代物。
魔力をほぼ使い切ってしまい、しっかりと睡眠が取れず録な活動も出来ない状態の彼らが、海事研修中にこの魔導具を再び扱う事は到底無理だろう。
という事で、私がこの魔導具を借りて試してみようじゃないか!
わぁ、私手作りでない魔道具を使うことなんて成認式の時以来。
この魔導具は、時間短縮の魔法が使えるのね。
つまり、早く動くことが出来るのかな。
じゃあ、1キロ先へ移動するのに、時間短縮!
おぉう!出来た!
すごいすごい!
が、もうやらない。
めっちゃ魔力持ってかれる。
ゴーレムに乗って走った方が一万倍楽だわ。
時間短縮ってのはとても魅力的な能力なんだけど、一定量の魔力が最低限必要になるタイプの魔導具だとしたら、魔力量がカスカスの私には向かない。
こういう、普通の魔法じゃ出来ないことを使えるようになる道具を作りたいんだよなぁ。
……海事研修中、新しい魔法陣でも作ってみるかな。
魔導具を返して、私は二人一ゴーレムを残し一足先に目的地へ到着して、みんなが来るまでただひたすら魔法陣の研究をしていた。
夕方、到着時刻になった。
乗合馬車グループの数班は、到着時刻ピッタリに到着。
馬車の中で組み籠をビクター君から教わっていたそうな。
和気あいあいと楽しそうな様子だ。
先駆け二人組は、遅れて到着。
誰よりも早く男爵領に入れたのに、どうしてこんなに遅いのか。
世界のうちでお前ほど、歩みの鈍いものはない。
ウサギとカメのダメなところを足して二で割ったようなやつらだ。
さぁ、時間も時間だ。
取り残され班を除いて、これから野営だ!
何度かの野営経験を行かそうと、食料調達組と場所確保組に別れて活動。
さすが、先駆け二人組を除いてチームワークはバッチリだ。
ただし、去年のようにいくとは思うなよ?
北西海岸部は、塩産業が栄えている場所。
というわけで、見渡す限り塩田。塩田。
風を遮る林もなく、生き物で溢れかえる森もなく、あるのはただひたすら、塩田。
食べ物の捕獲は、漁獲が基本。
日が暮れてからの素潜りは危ないから、食料を調達できない人で溢れかえった。
ただ、彼らもそこはちゃんと成長している。
目的場所の環境をしっかり勉強している人達は、保存食を充分に持ってきていた。
また、ビクター君を筆頭に昨日狩りをして肉を調達している人達もいた。
更に、風が強いこの地形での野宿をどうにかすべく魔法や道具で風を凌いだり、少しでも風を防げる場所を探したりと、役割分担がしっかりとされている。
ここは安心してロナウドとビクター君に任せられる。
さぁ、問題はこの先駆け二人組。
「ジョニー先生、この二人、どうします?」
「どうもこうも、と言うか手出しも手助けも何もしねぇよ?」
「「そんな!先生、酷すぎます!!」」
「『この海事研修で、チームワークと己の実力を研鑽しろ』と言っていたのに、そのどっちもをサボろうとしたテメェらが悪いんだろ。
今日は二人で力を合わせて、この一晩を乗り越えろよ?」
「大丈夫よ、人は一日くらい飲み食いしなくても生きていけるから。
応援ならいくらでもしてあげるわ。
頑張れ♬ 頑張れ♬」
先駆け二人組は、気絶するようにその場へ倒れ込んだ。
全く、寝るのなら寝袋くらい使わないと、風邪ひくわよ。
翌日からはメインの海事研修トレーニング。
体力作りに武術、そして魔法の訓練。
昼からは置いてけぼりチームも合流して、みんなでトレーニング。
そう、私達生徒会メンバーもトレーニング。
ツラい。
食事は班別で支度。
お、アンリさんの班とウッディ君の班が、何やら食材をトレードしているぞ。
うんうん、これもいいアイデアだ。
そう言えば、先駆け二人組はどうなったのかな?
置いてけぼりチームからハブられてる。
てか、置いてけぼりチームのふた班がひとつの班になっちゃってる。
「ちょっと、班別活動なんだから、二人も入れてあげなさいよ。」
「「「「チッ」」」」
うん、足並みバッチリだ。
生徒会メンバーは、先生方と活動することになった。
作業分担は、先生方が食料調達、生徒会・ビクター君が夜営場所確保。
結果をいえば、私たちの能力が圧倒的に高いので、先生方が訓練させられているぽくなった。
私、遠慮なく沢山食べるから、どれだけ採ってきてもいいわよ!
「程々にしてくれ」とジョニー先生から強めのデコピンを食らった。
その後はつつがなく進んでいった海事研修。
『この海事研修で、チームワークと己の実力を研鑽しろ』という課題もほぼこなせたようで、去年より過酷な環境にもかかわらず余裕すら見せる生徒たち。
働かない人達、改め、置いてけぼりチームの成長は凄まじく、ほぼ全員がしっかりと役割を果たし活動する様子が見られた。
先駆け二人組を邪魔者として扱う様子も全員一致。
そこは一致しちゃダメだって。
二人はきっともう反省してるんだから、学校に帰ったらイジメとか絶対しちゃダメよ?
「「アイツら、許すまじ。」」
事の発端はアンタら自身なんだから、ちゃんと反省しろよ!
「おい、フランドール嬢。
この大量の魔法陣が描かれた紙はなんだ?」
己の実力を研鑽してたんですけど?
「海事研修でする研鑽内容じゃない。」
魔法陣の描かれた紙を束にして、頭を叩かれた。
ジョニー先生、許すまじ。





