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179.5 魔女は公爵令嬢に悩みを打ち明ける

 フランドール様は不思議な人だった。


 私は、会話がとても苦手。


 初見では、見た目が良いと言って近寄ってくる人はいるけど、それもその時まで。


 会話が上手くできない私から、誰もが直ぐに離れていく。


 最初は寂しかったけど、段々と慣れてくる。


 エレメント魔法学校に入学した時だって、それは変わらない。


 誰もが私と会話出来ずに去っていくなか、フランドール様は違った。


 最初こそいつものように会話が進まなかったけど、それでも一生懸命私と会話してくれようとしてくださった。


 会う度に声をかけてもらい、フランドール様について少しづつ知る事が出来た。


 読書が好きで、本を読むのがとても速い事。


 武器術というか運動全般が苦手で、全てを魔法で対処してる事。


 お料理が得意な事。


 レベッカさんという医学会でも優秀な専属料理人のご友人がいらっしゃる事。


 そして、私と違ってフランドール様は多くの方に愛されている事。


 そんなフランドール様は、私の拙い会話一つ一つを受け止めてくれて、喜んでくださる。


 「お出かけに付き合ってくれたお礼」と言って渡された本は、本当に素敵な本だった。


 私の為に、一生懸命選んでくださった本。


 「もし、ローズさんが大きな壁にぶつかって、どうする事も出来なくなった時は、迷わず私を頼ってね。

 一人では越えられない壁も、二人でならきっと越えられるかもしれないもの。」


 本を差し出した時の言葉が、今でも頭から離れない。


 この人なら、私の事を受け止めてくれてくれるのではないか。




 「あ、ローズさん!」


 そう言うとフランドール様は私に駆け寄ってきた。


 「あの本はもう読んだ?」


 「読みました。

 とても素晴らしい本でした。」


 「気に入って貰えて嬉しいわ!

 また一緒に本屋巡りしましょうね。」


 あぁ、この人はなんでこれ程眩しい笑顔を私に向けてくれるのだろう。


 「……少し、お話しても良いですか?」


 勇気を振り絞ってお願いをしてみる。


 「もちろんよ。

 どんなお話なの?」


 ここでは話しにくい内容だったので、戸惑っていると、


 「ちょっと場所を変えましょうか。

 人が多い所だと、話しにくいこともあるもんね。」


 あぁ、この人はなぜいつも、私の考えてる事が分かるの……?




 中庭の外れの人気が少ない場所へ案内された。


 「ここなら滅多に人が来ないわ。

 お話ってどんな事?」


 ……


 いざその瞬間になると、言葉が出ない。


 「無理はしなくていいわ。

 落ち着いてからで構わないのよ?

 日を改めてもいいし。」


 先延ばしなんで出来ない。


 今を逃せば、二度と覚悟が出来なくなってしまいそうだった。


 「……いえ、今言います。」




 私は貧乏な男爵家の三女として生まれた。


 跡継ぎになる男児でなかったことに、両親は心底ガッカリしたという。


 しかし、五歳の成認式でその環境は一変。


 私は一家唯一の魔力持ち、しかも稀属性の闇属性持ちで魔力量は最大の10レベル。


 両親は私をとても喜んでくれた。


 でも、二人の姉は私の状況が気に食わなかった様で、両親のいない所で色々と酷い目に合わされた。


 魔法の訓練をしていくうちに、影だけでなく重力も操れるようになっていった。


 すると両親は、私を使って金儲けをしだした。


 初めは大手商屋の荷物運搬等、表向きの仕事をしていたけど、段々と裏稼業にも手を染め始めた。


 敵対する貴族へのスパイ、重力を使った武力行使。


 仕舞いには、私に暗殺業をさせようとする始末。


 仕事をする度に褒めてくれる両親の本心が分からなくなり、姉二人の嫉妬から来る嫌がらせに耐えきれなくなった時、あるものが聞こえてきました。



 「……私、人の心が読めるんです。」


 驚いた様子のフランドール様。


 「ただ、誰でもではありません。

 人の、心の闇の部分だけです……」


 これ以上言うのは怖い……


 喉が詰まったような感覚になり、声が出ない。


 「無理に言葉にする必要ないわ。

 これだけでも十分に頑張ったでしょう。

 話してくれてありがとう。」


 ……やっぱり、この人には伝えたい!


 「私っ……ひ、人の心が、操れます……」


 思わず涙がこぼれ落ちた。


 私の両親は、私の事を金の成る木としか見ていない。


 私の姉達は、私の事を邪魔者としか見ていない。


 私は誰にも愛されていない。


 ショックのあまり、思わず四人の心を操作してしまった。


 それから、家族はみんな私に優しい。


 とても大切にしてくれている。


 「でもそれは、偽りの愛なんです……

 私の事なんて、誰も見てくれません……

 私に近寄ってくる人の殆どが下心を持っているので、心を読んでしまいます。

 なので私は、誰にも近寄られないようにしてました。」


 涙を拭いて顔を上げると、フランドール様は涙を流していた。


 「フ、フランドール様が……私に話しかけてくれた時……本当は、泣きそうな程嬉しかったんです……

 心に闇が一切なくて、純粋に私と会話してくれて……」


 それ以上は声が出せなくなってしまった。


 止まらない涙を手で拭っていると、フワッと抱き寄せられた。


 「今まで本当に辛かったのね。

 気づいてあげられなくてごめんなさい。」


 「違うんです!

 フランドール様は何も悪くないんです!

 ……私の心が、弱かっただけなんです……」


 「貴女は立派よ。

 誰にも言えない悩みを一人で抱え込んで、それでも今日まで過ごしてこられたんだもの。

 よく頑張ったのね。」


 そう言ったフランドール様の心は、曇りひとつなく澄んでいて、心を読むことが出来ないくらい眩しかった。


 「今までは貴女一人で頑張って来たけど、今日からは私も一緒よ。

 改めて宜しくね。」


 そう言って、涙でグシャグシャになった手を取って、固く握りしめてくれた。


 「っ………」


 私はそこから、嗚咽で言葉が出なくなった。

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