178 公爵令嬢は魔女と遊ぶ1
第一期試験が終わり、今日からテスト休み。
結果はいつも通り、座学一位、武術ビリ、魔法実技一位。
加点目的で提出用紙裏にびっしり魔法陣を描いたけど、ジョニー先生に丸めた紙で頭をポカンと叩かれた。
解せぬ。
魔法実技は、試験せず。
というか、自由研究の内容だけで魔法座学と魔法実技のテストはパス。
今後は、私はこの二つは試験免除されるらしい。
いやいや、私だって魔法の実力を成長させた所をみんなに見せたいのに。
仕方がないから、試験中暇つぶしにダイヤモンドの鎧を着たゴーレムにダイヤモンドのツルハシと剣を持たせて遊んでいた。
「試験中に遊ぶな」と魔法技術の先生にゲンコツを食らう。
だから、この人は何でいちいちゲンコツで会話をしようとするかね?
テスト休みで、みんなは何をするか聞いたところ、案の定フィアンマ男爵領で遊ぶらしい。
実家に帰らないのか聞いたけど、そんな事はどうでもいいと。
そこまで言ってあげるなよ。
私は、今回も居残りしようと思うと伝えたら、みんな、特にリリーちゃんに心底ガッカリされた。
「私、やっぱりフラン様と残ります。」
という事で、男子ばっかりになって居心地の悪くなったアンリさんも居残りする事に。
私のテスト休みの目的はズバリ、ローズさんと親睦を深める事。
毎日とまでは行かなくても、何度かお出かけやショッピングを楽しもうと思ってた。
けど、よくよく考えたらローズさんの実家、シュバルツ家は、領地を持たない男爵家で馬車で片道二日ほどの距離。
もしかしたら実家に帰るのかな、とか全然考えてなかった。
慌ててローズさんに確認とったところ、
「帰りません。」
との事。
「じゃあ、私たちと一緒にお出かけしましょう。」
「はい。」
いつも通りのあっさりとした会話。
まずは、目的なく王都内を散策する事にした。
メンバーは、リリーちゃん、アンリさん、そして私とローズさん。
初顔合わせのリリーちゃんとアンリさんが、ローズさんに挨拶。
「初めまして。
リリーと申します。
今日はよろしくお願いしますね。」
「アンリです。
よろしくお願いします。」
「ローズです。」
しーん。
ローズさんの口数の少なさに、少し焦る二人。
「じゃあ、早速だけど街中をブラブラと散歩しましょ。
気になるお店があったら、寄り道してもいいわ。
テスト明けの気分転換になるでしょう。」
という訳で、レッツゴーお散歩。
「今回のテスト、一年生は座学だけよね。ローズさん、テストの結果はどうだった?」
「普通です。」
「新入生代表だったし、今回も満点とか?」
「はい。」
「凄いじゃない!
私なんて、去年の第一期試験は先生の採点ミスで二位になりかけたのよ!」
「でも、フラン様は満点以外取ったことないじゃないですか。」
「リリー様もですよ。
いつもお二人は満点しか取ってないじゃないですか。」
「アンリさんだって、成績がどんどん上がってらっしゃるでしょう?」
「ローズさんは、武術は得意?」
「特には。」
「私、武術の試験はいつもビリなのよ。
まあまあ出来るだけでも、とても羨ましいわ。」
「確かに、フラン様の運動神経は皆無に等しいですよね。」
「最近少しダンスがマシになられましたけど、水泳以外何も出来ませんよね。」
「乗馬だって出来るわよ!
もうすぐ海事研修があるけど、ローズさんは泳げるの?」
「いえ。」
「じゃあ、私が教えてあげるわ!
私、運動全然出来ないけど、学年一水泳が得意なの!」
「水を得た魚とは、まさにフラン様のことを表していますね。」
「そうですね。
まな板の上の鯉とは、まさにフラン様の事を表してますね。」
……さっきから思ってたんだけど、二人とも私に話しかけて、ローズさんと会話をしてない気がする。
てか、二人とも私に対して辛口じゃない?
ローズさんは相変わらずのポーカーフェイスで、気分が良いのか悪いのか分からない。
「ローズさんは、休日は何をしているの?」
「特には。」
「この間貸してあげた本、いくらか読めた?」
「はい。」
「そう、何か気に入った物は見つかった?」
「はい。」
「良かったわ!
差し支えなければ、どの本が良かったかおしえてくれる?」
「『嫌われ者の武勇伝』です。」
「確か、主人公の邪悪な魔術を武器に、悪事を働く魔王や凶悪なドラゴンを倒していく物語ね。
私もあれはとても気に入ってるの。
なんだか少し、主人公に親近感が沸いちゃったの。」
「……私もです。」
(さすがフラン様、ローズさんと上手く会話をされてますね。)
(ワタシは会話が下手なので、全然話を膨らませることが出来ませんでした。)
二人とも、ヒソヒソ話が聞こえてるよ。
確かに、ローズさんと初めて会った時は、どう会話をすればいいか分からなかったけど、話をしてみれば一言づつだけどきちんと返事をしてくれるもの。
少しづつ、ローズさんの事が分かってきた。
「あの、今日も武器屋に寄ってみても良いですか?」
趣味が武器屋巡りのアンリさんの提案。
早速お店の中へ。
リリーちゃんはサーベル、アンリさんは双剣を物色中、ローズさんは特に何をするでもなく、お店全体を見ている。
「ローズさんはどんな武器を使うの?」
「武器は使えません。」
「奇遇ね!
私も武器は使えないの!
だから、最近は錬金魔法でゴーレムを沢山作って操って戦うことにしてるの。
ローズさんは魔法は得意?」
「……いえ。」
「そうなのね。
私、闇属性持ちの人って、ローズさんが初めてなの。
どんな魔法が使えるの?」
「……影を操れます。」
「それって、影縛りとか?」
「……影縛りが何かは分かりませんが、影から人型の物体を出して操れます。」
「それって凄いじゃない!
まるでジョニー先生みたいね!」
「ジョニー先生?」
「あ、二年生の魔法座学の先生で、生徒会の顧問でもあるの。
読書が趣味だから、気が合うかもね。」
「そうですか。」
「あ、でもジョニー先生ってば私をいつも子供扱いするの。
出会ったら気を付けてね。」
「はい、気をつけます。」
なんだか、会話が少しづつ弾んできたぞ。
リリーちゃんとアンリさんをほっぽらかして、ローズさんとの会話に夢中になっていた私は、二人から顰蹙をかった。





