176 公爵令嬢は魔法研究専門機関に就職する
魔石の加工や魔宝石の生産の自由研究は、学校長に提出された。
これを見た学校長は、興奮のあまり雄叫びを上げて、私に固い握手を求めてきた。
学校長曰く、私の書いた自由研究は、国を、いや、世界をも揺るがす文献だそうだ。
早急に国王陛下の元へ向かうように指示が出された。
急に訪問しても忙しいんじゃないの?って思ってたけど、私の訪問なら何時でも来てくれていいらしい。
という訳で、学校の授業を抜け出して、王宮へ向かうことになった。
武術の授業がサボれた、ひゃっほう。
国王陛下はこの日、かなり仕事が多かったらしいんだけど、私が新しい発明をしたと聞いて、勢いよく仕事を終わらせて迎えてくれたらしい。
さすが国王陛下、有能すぎる。
早速、国王陛下と宰相であるお父様に、自由研究の内容とその最中にできた魔石や魔宝石の現物を見せながら説明した。
二人が固まった。
「一体……これ程の発想力は何処から湧き出てくるのだね?」
「こんな事、考えようとも思ったことがない……」
何故か二人は驚きを通り越して呆れている。
「とりあえず、これは今すぐ大々的に国から発表出来るものでは無い!
直ぐ様魔法研究専門機関に出向いて、この内容を説明し、改めて研究してくれたまえ。」
赤く青くと顔色をコロコロ変える国王陛下と、言葉が発せられずフリーズしているお父様から魔法研究専門機関に紹介状が出されて、翌日向かうことになった。
ちょっと久しぶりの魔法研究専門機関。
去年はオモカゲやら複合魔法やらで何度か呼び出されたけど、今年はこれが初めて。
と言っても、エレメント魔法学校の生徒で、これ程ここに出向かう人なんて過去にいなかったらしい。
今回の魔石や魔宝石の件は、自由研究のレベルじゃ済まないと言われて、一旦機密事項にされた。
魔石の方は、私以外の人でもどうにか生産する事が出来るかもと言う事で、量産化される様になれば発表する事になった。
「まず、魔法の威力が安定しない魔石を加工して魔法陣を描こうと思わないし、そもそも魔法陣を何度も繰り返し使うという発想からしてデタラメすぎる。」
この世界の人に好奇心はないのか?
魔法陣の件は、魔法陣を描いた羊皮紙や紙をいくつか持っていれば、一回ポッキリの使い捨てでも不便はないから、必要なかったと言えばそうかもしれない。
ただ、『何度も使える魔法陣があればいいのに』とかどうして誰も考えたことがなかったんだろう?
魔法研究専門機関に務めてる人は結構いるし、歴史も建国されて直ぐに出来たというかなり歴史のある所。
なのに、魔法の研究で新たな発見があったとかいう事例は、百年に一度程度しかないという。
なので、私が半年程度で何度も魔法界の常識を覆した事は、異例中の異例らしい。
この人達は一体何を研究してるんだろう?
私なんて、思い立ったら直ぐに試してみたくなっちゃうのに。
今だって、ここの現場を見れば見る程やってみたい研究や実験がどんどん湧いてくる。
新しい発見があるたび嬉しくなる私とは違って、この世界の人達は自分の知らない世界にやたらと怯えてる気がするなぁ。
初めてポテチを作った時も、『揚げる』って調理法をしようとしたらメッチャビビられてたし、成認式で私がみんなと並ぶ事ですら異常な目で見られてた。
海水浴だって、男女関係なく水着に対して恥ずかしがってたクセに、いざ遊びだしたらブームにまでなっちゃった。
私のする事なす事全てにビックリして、実際に完成品を手に取るまで否定的な考えをしてくる人達に、いつからか勿体なく思ってたんだよなぁ。
『変わらない』は無難で安心感はあるけど、『新しい』だっていい事は沢山ある。
そりゃ、最初は不安かもしれないけど、あまり否定的でいるといつまでも文明は発展しないし、何より本当に必要なものが見えないままになっちゃう。
私の夢は『世の中を美味しい食べ物や便利な物でいっぱいにする』事。
こんな世界だからこそ、俺の知識や地球の常識の中で、良かった物や便利な事をどんどん広めていきたい。
なのに、この世界の人ときたら、誰も彼もが現状で満足し過ぎてる。
本当に勿体ない。
さっきから何度も思ってるんだけど、ここで研究してる事って、新しい発見を見つける事じゃなくて、今ある常識の検証をしてるだけなのなら、もう魔法研究機関なんていらなくない?
と、思った事を機関の一番偉い人にただひたすら文句言っていたら、
「じゃあもう、いっその事今日からここで働いて、新しい発見を探してくれ」
と言われてしまった。
いや、将来ここに就職するとは言ってたけど、私まだ学生だし?
学校生活でまだまだやりたい事沢山あるから。
「じゃあ、週四でここに通って、色んな実験をして欲しい。」
学校生活の半分を魔法研究専門機関で過ごせというのかい。
せめて週二通勤で、学校行事優先にさせて欲しいよ。
「仕方ない、週二で手を打とう。
一刻も早く学校を卒業するんだよ!」
無茶を言うな!





