174 公爵令嬢は桜餅を作る
あけましておめでとうございます。
今年も『ジャンクフード』をよろしくお願いします。
花が散って、校庭の桜の木には青々とした葉っぱと赤い木の実がなっている。
さくらんぼを知らないこの世界の人達に、さくらんぼのスイーツを作ってあげたところ、あっという間に木から実がなくなってしまった。
誰だよ、勝手に食べたヤツは。
生徒の殆どと先生何人かが挙手。
なぜ生徒会の三人も手をあげてるの?
こうして、早々に葉桜となってしまった。
桜の花やさくらんぼは勿論なんだけど、葉桜って太陽の光を和らげて心地よくしてくれる感じが好き。
寒くなってくると、枯れた葉っぱがサラサラと散っていく姿も、哀愁漂っててお洒落。
そして寒い冬を乗り越えて、小さな蕾が枝先にふつふつと付けていく様子を見て、新しい一年が始まるって元気が湧く。
全てを含めて、桜の魅力ってもんなんだよ。
どうにか、花とさくらんぼ以外の桜の魅力を伝えていきたい……
おっと、忘れちゃいけない桜の魅力を思い出した。
そんな素敵な魅力のひとつを、早速みんなに広めていかないと。
まずは、下準備。
もち麦を一晩水に浸けて、翌日、浸けておいたもち麦をザルに空け、18分(地球時間で30分)水を切る。
石臼でもち麦を粉砕、もち麦が砕けてドロドロになったら漉し布に入れて、水分を絞り出していく。
片栗粉を水で濡らした時と同じ様な感じになったら浅い容器に広げ、平たく成型して乾燥。
室温20~25℃くらいで2日程乾燥させ、すりこ木で粉々に砕けば、白玉粉の完成。
本来はもち米で作るんだけど、それっぽくなったから大丈夫かな?
白玉粉が出来たら、まずは生地作り。
白玉粉がダマにならないよう、少しずつ水を加え泡立て器で混ぜる。
これに砂糖、薄力粉、食紅、残りの水を加えてよく混ぜてこし器でこし、36分(1時間)寝かせる。
フライパンに火をかけて、熱くなったら濡れ布巾の上に乗せて、大さじ2杯分程の生地を楕円形に流し入れる。
再度弱火にかけて、生地の端が透明っぽくなってきたら生地をひっくり返して少し焼けば、生地の完成。
こしあんを挟んでくるっと巻き、塩抜きした桜葉の塩漬けで包めば、関東風桜餅、長命寺の出来上がり!
続いてもう一種類。
もち麦を洗って一晩漬けたものを蒸し、粗熱を取ったものを度々解しながら一日ほど乾燥させる。
これを二つ割に砕いたら、道明寺粉の完成。
砂糖と食紅を水で溶かして火にかけて、砂糖が溶けたら道明寺粉を入れてよく混ぜる。
沸騰してしばらくしたら火を止めて、18分(30分)程蒸らす。
蒸し上がったらざっくりと混ぜて、丸くしたこしあんを生地で包み、桜の葉を巻けば、関西風桜餅、道明寺の出来上がり!
桜の魅力は、観て良し食べて良し。
早速、生徒会のみんなに試食してもらおう。
あ、そう言えばあの三人はさくらんぼつまみ食いしてたの思い出した。
とりあえずジョニー先生にだけ食べてもらうか。
「ほぉ、このお菓子にあの桜の葉っぱを使ってんのか。
よし、みんなを代表して、サクラモチの感想を言ってやるからな。」
桜の葉っぱは食べる時に剥くんだよ、無理に食べなくていいからね。
まずは長命寺から。
「こっちの薄いやつは、饅頭に似た感じだな。
ただ、味は違うな。
程よく塩味の効いた桜葉が桜の匂いを醸し出して、餡子と生地の甘さとよく合ってんじゃねーか。」
続いて道明寺。
「こっちのつぶつぶの方は、赤飯みたいな食感だが、味はさっきのとよく似てる。
まぁ、どっちも桜みてぇで可愛らしくて美味いって事は間違いねぇ。」
小さな桜餅二種類を、生徒会三人の前でもりもり食べるジョニー先生に、三人はワナワナと震えている。
「俺がこういうの好きだって分かってて嫌がらせしてるのか!?
さくらんぼの件はゴメンて言っただろ!?」
「僕だってしっかりと反省しているんですから、少しくらい食べさせてください!」
「フラン様がこのような酷い仕打ちをするお方だったなんて知りませんでした!
でも、曲がったことが嫌いなフラン様のお姿は、とても素敵です!」
リリーちゃんは、ホントに反省してるのかな?
結局、試食用の桜餅はジョニー先生が大人気なく全部食べてしまったので、再度大量に作り直し。
三人以外にも、ポスカ君やレオ達三人、元一班の三人にも作ってあげたところ、高評価を頂いた。
どうでもいいんだけど、私の周り三人組多くない?
そして、今日も中庭のベンチに腰掛けているローズさんを見つけて、私は向かった。
「ローズさん、こんにちは。」
「こんにちは。」
「今日、私新しいお菓子を作ったの。
甘いものは好き?」
「はい。」
「良かったら、これ味見してくれるかしら。
美味しくできたとは思うんだけど。」
「はい。」
そう言って、二つの桜餅をローズさんに渡した。
小さな口で、ハムハムと桜餅を食べるローズさん。
ローズさんが食べる姿初めて見たけど、小動物みたいで可愛らしい。
二つとも食べ終わったローズさんは、感想を待っている私に顔を向けて、
「とても美味しかったです。」
初めて、ローズさんからの発言。
「嬉しい!
またお菓子を作ってくるから、今度は一緒に食べましょう!」
「はい、ご馳走様でした。」
桜色の頬にさくらんぼの唇をしたローズさんは、葉桜から溢れた陽の光のような柔らかい声でお礼を言ってくれた。





