170 公爵令嬢はヤンキーを見張る
今日もローズさんがいないか中庭に向かったら、先客がいた。
ヤンキー系男子、レオ・サングラディッシュだ。
私に気付いたのか、顔を見るなり舌打ちをした。
なんだコイツ、いきなり失礼だ。
「舌打ちは挨拶の言葉じゃないでしょ。」
「うっせーなー、何生徒会長ぶってんだよ。」
何よ、私生徒会長だから何も問題ないでしょ。
「これから入り用なんだよ、アンタどっか行ってくんね?」
すると、気弱そうな一年生が中庭に来た。
「チッ、タイミング最悪。
わりーなー、コイツ邪魔してくっから、また後でもい?」
気弱な返事をして、一年生はどこかに行った。
「マジありえねー。
アンタ何邪魔してくれてんの?」
邪魔って何よ、どっか行けって言われた瞬間にあの少年が来たから、たまたま居合わせちゃっただけでしょ?
「私がいたら駄目な用事だったの?」
「そうだよ、どーしてくれんの。」
「そう、ごめんなさい。」
「はっ、マジふざけんなし。」
そう言って中庭から去っていった。
見た目だけじゃなくて喋り方まで最近のヤンキーみたいなやつだ。
結局、この後ローズさんが来る様子はなさそうだったので、私は図書館にむかった。
二日後、一年棟にたまたま寄る用事があったので、教室を覗いて見た。
放課後ともあって、教室に残っている人はほとんどいなかった。
と、男子がグループになって何かしているのが目に着いた。
「俺ん家貧乏だろ?
いいじゃん、少しくらい寄付してくれたって」
「そうそう、俺も親が厳しくてよォ、小遣い全然くれねんだよ。
いつもの様に、ちょっとだけでいいからさ。」
三人組の男子が、一人の少年を追い詰めながらそう言っていた。
ま、まさかカツアゲ!?
「ちょっと!
あなた達なにやってんの!?」
「アンタこそ、俺らの教室に何しにきたんだ?」
そこに居たのは、ヤンキーのレオを中心としたチャラそうな男子達。
「今の見たわよ!
そんな事していいと思ってるの!?」
「いーんだよ、俺らみんな合意でこれをやってんだからよ。」
「君も本当にそう思ってるの!?」
カツアゲされていた少年に声をかけた。
彼は震えるような仕草で小さく頷いた。
そ、そんな訳ないでしょ!?
「ほらな?
てな訳で、アンタの出る幕ねーの。
どっかいってくんね?」
そう言って教室を追い出されてしまった。
これは……かなり問題だわ!
「そんな事があったのか。」
「これは由々しき事態ですね……
どうにか対策をしないと。」
「ポスカ君はご存知ないのですか?」
「聞いてみたんだけど、人前ではただ賑やかな三人組らしいわ。
イジメがあった事は知らないみたいで、見つけ次第どうにかするとは言ってくれたけど、現行犯じゃないと何も出来ないからね……」
「そいつら、監視しとかないと駄目だろ。」
「そうですね、常に誰かが見張って起きましょう。」
「それなら、私が見張りをつけるわ。」
そう言って、手のひらサイズのゴーレムを作った。
「まぁ、可愛らしい。
ぴょこぴょこと動いて、まるで小動物みたいです。」
「ちっちぇけどちゃんと仕事してくれそうだな。
よろしく頼むよ、ミニゴーレム庶務。」
これで彼らを見張っておけば、なにか起きそうな時直ぐに駆けつけられる。
ミニゴーレム庶務にあんぱんと牛乳を持たせて、早速見張り開始!
この日は、午後の授業が終わるまで特に何か起きることはなかった。
ポスカ君が少年と一緒にいてくれている事もあり、三人組は三人でお喋りしていた。
と、三人組からレオが一人で行動を始めた。
すると、しばらくして少年もポスカ君の元を離れた。
怪しい。
ミニゴーレム庶務にレオの後を付けさせながら、私も現場へ向かう。
校舎裏、レオが人影のない所でポツンといると、そこへ少年が現れた。
これは事件の匂いがするぞ!
急いで現場に向かっていると、レオが少年に何かを渡していた。
それは大銀貨数枚。
「いつもわりーな、辛い思いさせて。」
受け取ったお金を見てうろたえる少年。
「慰謝料込みだよ、取っとけって。」
深くお辞儀をしてお礼を言うと、少年はレオから去っていった。
「なんで彼にお金を渡してたの?」
「げ、見てたのか。
覗きとか、マジ趣味わりー。」
「誤魔化さずに説明して。
なんでこんな事してるの?」
「うっせーし。
アンタにカンケーねーだろ。」
「関係あるわ。
私はこの学校の生徒会長よ。」
「……俺の連れの詫びをしてたんだよ。」
「どういう事?」
「奴ら、俺のいねー所でアイツをボコってたんだよ。
止めに入ろうにも俺喧嘩弱えから、カツアゲするフリしてその場凌いだけどよ。
そしたら奴らもボコるの止めて金巻き上げるようになって、仕方ねーから俺が後で弁償してやってんの。
て訳で、もう言う事なんもねーから、どっか行ってくんね?」
そんな事してたんだ、なんか意外、と言うか、実は良い奴なの?
「それで解決したと思ってるの?」
「思ってねーよ。
奴ら、なんでか俺に慕ってくっから、一応やり過ぎんなって注意してんだぜ?
でも、ガチで注意したら俺の知らねー所で周りに八つ当たりすんだよ。
仕方ねーじゃん。」
奴らは根から屑なのか。
この事件、月に代わってお仕置きよ!
「分かったわ、私が何とかしてあげる。」
「何とかって、どーやんだ。」
「ふふふ、言うこと聞かない悪い子には、お仕置が必要なのよ。」





