168 公爵令嬢は新入生歓迎パーティをする
昼になり、昼食兼新入生歓迎パーティがもうすぐ始まる。
生徒会のメンバーは、一年生が迷子になっていないか、サボる生徒が居ないかの見廻りをする事になっている。
だから、去年図書館でカーネル前生徒会長に会ったのか。
みんなバラバラで校内を巡って、生徒が居ないか確認する。
私はお気に入りの中庭を探索。
花に囲まれた噴水周りを楽しんでいると、一人の少年がいた。
灰色の髪の毛と瞳を持った、綺麗な顔立ち、背もまあまあ高めで、女性に人気のありそうな人だ。
「ここで何してるの?
もうすぐ歓迎パーティがあるから、そろそろ会場に向かわないと。」
「時間になったら行くし、俺に指図すんじゃねーよ。」
おや、この反抗的な態度は、不良系男子かな?
「君、サングリティッシュ侯爵の次男、レオだよね。
この学校の規則として、爵位や階級は厳守だって事分かってる?」
「だから?
親が偉いかどーかて決められた事が、そんなに偉ぇ訳?」
「あら、私の場合親は関係ないわ。
だって、七歳の時に国王陛下直々に男爵位を頂いたもの。
私は実力で男爵筆頭になったのよ?」
「はっ、なにそれ自慢?
王子サマの婚約者だからっつって、コネで貰った爵位っしょ?」
ははーん、コイツ強がってるけど、何かコンプレックスでもあるのかな?
強がってても、エリック程の威圧感はない。
エリックが不良の族長だとしたら、レオはヤンキーのリーダーって感じ?
もう、これ以上何か言っても、多分焼け石に水だ。
「ハイハイ、もうわかったわ。
私は先に行ってるから、サボらずパーティに参加してよね。」
「お節介とか、マジうぜー。」
「返事は!?」
「うっせー!」
全く、どの学年にも問題児っているもんだ。
それに比べて、私達の学年はみんな優秀なのだから。
少しは見習って欲しいわ。
「オメェがそれ言うか?」
何よジョニー先生、その言い方!
まるで私が問題児みたいな言い方して!
「どう考えても問題児だろ。
去年居た不良エリックより、自覚が無い分よっぽどタチが悪い。」
失礼しちゃう!
いよいよ始まった新入生歓迎パーティ。
去年と同じく、爵位の低い順に入場していく。
セシル様、リリーちゃんペアは最後から二番。
侯爵家、伯爵家のペアは、特に学校内でもトップクラスに入る。
まぁ、私達王族、公爵家兼筆頭男爵ペアには誰も敵わないけど。
新入生ペアで気になったのが、最後から四番目の二人。
ヤンキーのレオ・サングリティッシュとダークヒロインのローズ・シュヴァルツ。
気になる二人がペアという事は、二人は婚約者同士なのかな?
と思ったら、ただ単にクジで組まされていただけだった。
機嫌の悪そうなレオと目が死んでるローズさん。
すっごく参加したくなさそうな雰囲気満載だ
因みに、ポスカ君は最後から三番目。
ポスカ君もペアがいないのでクジで組んでいたようで、ペアの女子生徒はニヤニヤが隠せていない。
最後に、ホストである私とロナウドのペアの入場。
魔法学校外でも有名な二人の入場に、会場の空気が凍る。
だからなんで私の時にそうなる?
生徒会長の私の挨拶。
「一年生の諸君、入学おめでとうございます。
私達、皆さんの入学を心から祝福しています。
これから、エレメント魔法学校の生徒として、魔法を学び、知恵と力を身に付け、一流の魔導師となってください。
それでは、交流、歓談、食事をお楽しみください。」
去年のカーネル前生徒会長の言葉を一字一句違わず言った。
だって、毎年同じ事をしなきゃいけないんでしょ?
その分、料理に力を入れてるよ。
レベッカちゃんが用意してくれたジャンクフードは勿論、卒業パーティで振舞った寿司と赤飯も用意した。
一昨日の夕方から男爵領へ行って新鮮な魚を調達後、深夜にカーネル前生徒会長宅へ突撃していたのだ。
「こんな深夜に訪問だなんて、常識無さすぎですよ。」
そう言いながら、瞬間冷凍してくれるカーネル前生徒会長、何だかんだ良い人なんだよ。
本当にありがとうございます。
初めて食べる寿司や赤飯に、
「生の魚が意外と臭みがなくて、麦の塊が口の中でモッチリホロホロとほぐれていく。
そして何より、味付けの醤油と緑のペーストのツーンと鼻を通る香り、こんな料理、食べたことが無い!」
「魚の種類も豊富で、油の乗ったこってりした魚から、あっさりとした赤身の魚、貝や海老の物や、肉やタマゴ、野菜の物までありますわ!」
「俺、毎日、いや、毎食この魚料理でも良い!」
「塩味の効いたもち麦に、小豆のほろっとした食感と香り、このような料理、見た事も食べたこともありません。」
「毎日お祝い事をすれば食べられるのか?
じゃあ、毎日記念日を作ってしまおう!」
と、卒業生と同じく発言をしていた。
「フランちゃん先生!」
と言って、卒業式前同様私に抱きつくポスカ君。
と、それを引き剥がす三人。
「ポスカ君ももう十五歳なんだし、人前で抱きつくのは控えた方がいいよ?」
「うん、分かった。
人前じゃないところでハグするね。」
そういう意味で言ったんじゃない。
案の定、三人に叱られている。
周りにいるポスカ君愛好家の女性陣は、私を睨みつける。
本当勘弁してくれ。
音楽がなり始めて、ダンスの時間になった。
実は私、ダンスが以前より上手になりましたの。
カーネル前生徒会長との訓練や、老馬レックスへの乗馬の経験により、少しづつコツが掴めていた。
ロナウドとのダンスは勿論、セシル様とも踊れるようになったのだ。
何故かリリーちゃんが男性パートを覚えていて、彼女とも一緒に踊ることになった。
そんな様子を見て、ポスカ君は
「凄い!フランちゃん先生!
昔みたいな駄ンスじゃ無くなってるね!」
無意識なんだろうけど、言葉には気をつけようね?
そしてポスカ君とも一緒に踊った。
「足を踏まれなかった!」と喜ぶポスカ君。
……なんかツラい。
と、いつもの私達だけで溜まるのは良くない。
色んな生徒に声掛けして行かなきゃ。
「僕もフランちゃん先生について行くー。」
なんで?
「今まで会えなかった分、フランちゃん先生を補充しておかないと。」
どう言う理屈?
ポスカ君と一緒に廻る私。
私達の周りには人溜まりが出来た。
但し、その中心はポスカ君なんだけど。
大勢の人に囲まれたポスカ君に「ちょっと離れるね」と言って、私はある人の所へ行った。
壁の華と化しているダークヒロイン、ローズ・シュヴァルツさん。
輝きを失った瞳は、会場全体をボヤっと他人事のように見ていた様だった。
「初めまして。
私、生徒会長を務めています、フランドール・フィアンマと申します。」
「ローズ・シュヴァルツです。」
「パーティは楽しんでいらっしゃいますか?」
「はい。」
「料理はお召し上がりくださいましたか?」
「はい。」
「ダンスは踊られましたか?」
「はい。」
…………
会話が全然続かない。
質問の仕方が悪かった、オープンクエッションで再度質問。
「パーティのどのようなところがお気に召しましたか?」
「雰囲気です。」
「それは嬉しいです。
パーティは毎週ありますので、これからも是非楽しんでください。」
「はい。」
「料理は何が気に入りましたか?」
「チョコレートです。」
「私もチョコレートは大好きなんです。
好きなだけ召し上がってくださいね。」
「はい。」
「ダンスはどなたと踊られたんですか?」
「レオさんと。」
「レオ君以外とは踊ってらっしゃらないのですか?」
「はい。」
コミュ障かよ!
会話をしていても、ちっとも私に興味を示してくれないし、全体的に素っ気なさすぎる。
まるで俺を彷彿とさせる様なやり取りだ。
…….自分で言ってて悲しくなった。
まぁ、一緒に過ごす学校生活もあと一年はあるし、ゆっくり心を開いてもらおう。
「フランちゃん先生、なんで勝手にどっか行くの!?」
ポスカ君にプンスカされた。
一言断り入れたでしょうが。





