165 公爵令嬢は暇な三日間を持て余す
新年度を迎えた私達は、2年生になった。
先輩たちが卒業した今、新一年生が入学するまでの三日間は、生徒が半分近く居ないせいかガランとしていた。
カーネル前生徒会長、ミラ前副会長、エリックはちょくちょく顔を覗かせている。
なんでも、魔法や武術が優秀な三人は、時々講師として学校へ来るそうな。
また会える事が嬉しい反面、いつも居た三人といつでも会える状態でない事に、寂しさもあった。
まぁ、あの三人は元々が実力者だから、仕事も初日から期待されていたし、会えるのは休日くらいだと言っていた程忙しいみたい。
いつかまたみんなでお出かけとかお茶会とかしたい。
さて、この三日間で二年生がする事は、ただの日常だった。
生徒会が入学式やレクリエーション、パーティの準備をする事以外、特別な事は何も無い。
しかも、これらは卒業式と違って、例年通りのやり方だと決まりがあり、派手なレクリエーションや奇抜なダンスパーティを計画する事が出来ない。
なので、座学、武術、魔法実技を淡々とこなすだけ。
二年生しかいない特別な三日間なのに、ただ普段と変わりない時間を過ごすなんて、なんかつまらない。
……生徒が少ないなら、増やせばいいじゃない!
ちょうど学校内には、大量のゴーレム達がいる。
彼らを新一年生と見立てて、私達と同じように授業を受けさせると、明日からは特別な二日間になりそう!
私の魔法技術も鍛えられるし、一石二鳥だわ!
そうと決まれば、早速行動開始!
初日を平凡に過ごした翌日、学校内には三十体の様々なゴーレムがうろついていた。
座学の時間には、授業を受けるフリをしたゴーレム達が、一年生の教室を埋めつくした。
授業態度は様々で、先生の発言を一生懸命聞くゴーレム、ひたすらノートに書き物をするゴーレム、居眠りをして授業をサボるゴーレムと、様々な態度で授業を受けるフリをしている。
フリなので、先生は先生に見立てたオリハルコンゴーレム。
もちろん、オリハルコン先生も授業を教えるフリをしている。
本物の先生は、新入生の事で手一杯だそうで、「お前の暇つぶしに付き合ってられない」と無視された。
武術の時間は、全員が組手やチーム戦等で戦っている。
これも、私のゴーレムを操る技術の訓練になるからね。
やっぱりと言って当たり前なんだけど、ただ座ってた座学と違って、かなり魔力や操作力が必要になる。
でも、今日明日の二日間は、リリーちゃんの助けを無しに過ごすと決めていた。
昼食の時間も、ゴーレム達は食べるフリをしに食堂へ集まる。
もちろん食べるフリなので、食器の中身は空っぽ。
私は食材を無駄にしない立派な女性だからね。
昨日とは違って、食堂がゴーレム達により食堂の半分を占領された食堂は、別の意味で賑わっている。
「フランのやる事って、本当に訳分からねえ。
まぁ、面白いから全然問題ないんだけど。」
「本当ですよね、喋らないゴーレム達が彷徨く学校って、なんだか魔物屋敷みたいで少しワクワクしてしまいます。」
セシル様は魔物屋敷でワクワクしちゃうのか。
「これ程のゴーレムを操るんですから、魔力が足りなくなりそうな時は私を必ず頼ってください!」
ありがたい申し出だけど、頼らないように頑張るよ。
「こんだけの量のゴーレムって、見なくても操れるのか?」
「一応、魔力感知で一体一体の動きは把握出来てるから大丈夫。
朝よりもだいぶ慣れてきたし、午後の魔法実技も何とかしてみせるわ。」
「マジかよ。
将来フランひとりで戦争とか出来そうだな。」
そんな野蛮な事しませんから!
午後の魔法実技の授業は、二年生とゴーレムの合同訓練。
訓練場に入って早速魔法実技の先生にゲンコツを食らった。
もう、この先生の理不尽なゲンコツには、段々慣れてきた気がする。
別に、変な意味ではないからね?
生徒達は、ゴーレム相手に魔法を使ったり、ゴーレムに魔法のコツを教わったりしていた。
喋れないゴーレム相手によく魔法を教われるな。
オリハルコン先生も健在で、授業をサボりがちなゴーレム生徒にゲンコツを食らわせていた。
それを見ていた魔法実技の人間の先生は、また私にゲンコツをかましてきた。
ゲンコツを食らうのを分かっていたけど、この風景をゴーレムでやってみたかったんだよ。
何とか魔力が足りた放課後は、ゴーレム達をダラダラさせていた。
図書館で本を読むフリをするゴーレム、中庭で昼寝をするゴーレム、校舎の影でイチャイチャするゴーレム二人、そして生徒会庶務をするゴーレム等々。
「朝異様だったこの風景も、一日通してなんか見慣れてきた。
まぁ、異様な風景には違いないけど。」
「僕はまだ慣れてませんよ。
自律式ゴーレムが彷徨く学校だなんて、聞いた事ありませんから。」
まるで、ゴーレムダンジョンみたいな様だからね。
「私、すごく楽しめました。
まるで、フラン様が沢山いるような気分に慣れたんですもの。」
「確かに。
一体すごくフランに似た動きをするゴーレムいたよな。」
「あのゴーレムは、見てて思わず笑ってしまいました。」
なぜ笑う?
生徒会庶務ゴーレムがお茶を入れてくれた。
そして空のカップでお茶を飲むフリをするゴーレム。
「コイツ、もう名前付けて生徒会のメンバーにしねえ?」
「それはいいですね。
学校の名物生徒になるに決まってます。」
「生徒会でフラン様二人に会えるだなんて、私幸せです!」
リリーちゃんは、ゴーレムと私を完全に同一視しちゃってる。
「おい、まさかこのゴーレムをオリエンテーリングに連れていく気か?」
ジョニー先生の問いに、「勿論」と答えた私達四人。
「名物というか、笑いもんになっちまうだろ。
ただでさえ今日の異様な光景に、生徒も先生方も混乱してんだからよ。」
「大丈夫です、明日には見慣れます。」
「そういう問題じゃねぇよ。」
そう言って、脳天チョップを食らった。
そろそろ私、頭が物理的に固くなりそうだ。
たった二日間をゴーレム達と過ごした学校は、巷ではゴーレム屋敷と恐れられるようになった。





