164 公爵令嬢は卒業パーティをする
さぁ、ついに始まる卒業ガーデンパーティ。
いつもは、みんな制服からドレスや正装に着替えて、ダンスや食事を楽しむんだけど、今年は一味違う。
在校生である一年生は制服のまま参加、そして卒業生である二年生は袴姿。
そう、これから行うのは、日本式卒業式。
卒業式の衣装といえば、やっぱ袴姿だよね。
そして、会場作りに貢献してくれたのは、お久しぶりに登場、ポスカ君。
「フランちゃん先生!
久しぶりに会えてとっても嬉しい!」
そう言っていつものように抱きついてきたポスカ君は、すっかり大きく私より頭ひとつ分背が高くなっていた。
弟系なだけあって、ロナウドやセシル様よりは背が低く、童顔であどけなさが残っているけど、もう立派な成人男性って感じになっていた。
俺からすりゃまだまだガキンチョだけどな。
「一年間で随分背が伸びたねぇ」
そう言って頭をナデナデする。
「えへへ、これでフランちゃん先生をエスコートする事が出来るよ。」
呼び方は相変わらず『フランちゃん先生』なんだね。
そして、抱きついたポスカ君を全力で引き剥がす三人。
なぜリリーちゃんまで?
ポスカ君にお願いしたのは、桜を咲かせてもらう事。
卒業式と言えば、桜でしょ。
風になびくとヒラヒラと花びらが舞い散るこの光景、うーん、卒業式っぽいねえ。
袴姿の卒業生がパーティ会場に入場、それを拍手で出迎える在校生と先生方。
見事に咲いた桜に、卒業生も在校生も先生もウットリしていた。
突然参加の国王陛下が挨拶をして、ガーデンパーティ開始!
まずは、普段通り立食や団らんを楽しむ生徒たち。
さぁ、パーティを楽しむためのお祝い料理、用意しましたよ!
じゃじゃーん!お寿司!
前々日にカーネル前生徒会長に魚を超急速冷凍してもらって、その状態が8時間60分(地球時間で約一日)続くようにしてもらったから、アニサキス対策もバッチリ。
これを解凍して、適度な大きさに切って、米代わりに麦で握った一口大のご飯に刺身を乗せれば、お寿司の出来上がり!
麦だけだとポロポロでまとまらないから、もち麦も混ぜてモチっとさせた。
皆さんの反応は如何かな?
「えっ、生の魚を食べるの?
大丈夫なのかな……」
「フランドール様が作られたそうだ、これなら安心して食べられるよ。」
「俺が食べてみる。
むむっ、これは!
美味い!!」
「生の魚が意外と臭みがなくて、麦の塊が口の中でモッチリホロホロとほぐれていく。
そして何より、味付けの醤油と緑のペーストのツーンと鼻を通る香り、こんな料理、食べたことが無い!」
「魚の種類も豊富で、油の乗ったこってりした魚から、あっさりとした赤身の魚、貝や海老の物や、肉やタマゴ、野菜の物までありますわ!」
「俺、毎日、いや、毎食この魚料理でも良い!」
好評なようで何より。
あ、この料理は新鮮な魚でこそ出来るものだから、安易に真似はしないでね。
続いての料理は、もち麦と小豆がメインのこれ。
もち麦を洗い、ざるにあげ水気を切る。
小豆を洗い鍋に入れ、かぶるくらいの水を入れたらすぐ火にかけて、沸騰してから少し煮て茹で汁を捨てる。
もう一度水を加えて火にかけて、煮立ったら弱火にし蓋をして18分(地球時間で30分)煮て、指でぎゅっとつまむとつぶれる程度まで煮たら、小豆と茹で汁に分ける。
茹で汁は空気に触れさせ酸化させて、冷めたら釜にもち米
とゆで汁を入れ、18分(30分)分程浸水。
塩を加え軽くかき混ぜて溶かし、小豆を入れて炊飯、炊き上がったらご飯をほぐし混ぜ合わせて、器に盛りごま塩をふったら、赤飯の出来上がり!
やっぱりもち米の赤飯とは味も食感も違うけど、赤飯を知らないこの世界の人たちには大丈夫でしょ。
「なんだ、この小豆の入ったこの料理は?」
「お祝い事の時に食べる料理なんですって。
頂きましょう。」
「これは、なんとも不思議な食感!」
「塩味の聞いたもち麦に、小豆のほろっとした食感と香り、このような料理、見た事も食べたこともありません。」
「毎日お祝い事をすれば食べられるのか?
じゃあ、毎日記念日を作ってしまおう!」
なんだよ、ラブラブカップルみたいなその考え方。
料理も中々好評なようで、盛り上がる会場。
ここで余興に、私達生徒会の出番。
ポスカ君がいることで実現できたマジカルレンジャー、そして我が校が代表する正義の魔法少女プリキュン。
元一班の三人にも協力をお願いして、演劇をした。
やっぱり、どちらも大盛り上がり。
一番盛り上がってたのが国王陛下だったとか、なんかもう予想通りだわ。
さぁ、続いての余興は、卒業証書授与式。
卒業式では、卒業証のバッジを貰うだけなので、日本の卒業式っぽく卒業証書を渡す。
最初の一人、カーネル前生徒会長から。
「卒業証書、授与。
カーネル・ウォンツ様
あなたは本校において魔法に関する課程を修了したことを証する」
読み上げて渡した卒業証書に書かれていたのは、日本語の平仮名。
暗号のような文字で何を書いてあるのか分からない卒業証書に、カーネル前生徒会長は衝撃を受けたようだ。
更に意地悪。
二人目、ミラ前副会長以降は「以下同文」。
最初のカーネル前生徒会長の時に言っていた内容を覚えていないと、解読がかなり困難になる。
卒業証書を受け取ったみんなで、和気あいあいと解読を進める卒業生達。
一年生が欲しそうにしてたけど、まだ魔法に関する過程を修了してないでしょうが。
そもそも、貴方たちは卒業しないでしょう、先生方。
さて、いよいよ最後のイベント、花渡し。
このバラの花、生徒会お手製のプリザーブドフラワー。
色とりどりに、赤やピンクとお馴染みの色から、青や黒といった普通では咲かない色まで多数ご用意しております。
湿度の低めなこの世界なら、だいたい4〜5年くらい持つんじゃないかな?
いつもなら何本でも花を渡していいけど、今年は限定五本まで。
さぁ、みんな誰に渡すのかな?
おぉ、やっぱり前生徒会のお二人は花束になってるねぇ。
「枯れないバラの花とは、また奇抜なものを作りましたね。
貴女らしいです。」
「とても素晴らしい技術だよ。
この花を見る度に、今年の出来事を思い出せる。」
お気に召したようで何より。
おや、意外にもエリックが小さな花束を作っているではないか。
「全部男からだよ。
『硬派な兄貴に憧れるッス』だとよ。」
なんか、日本の男子部員の後輩みたいなのが出来てたんだね。
ウッディ君もその一人。
「卒業しても、漢の喧嘩の仕方を教えてくれるって言ってました。」
不良化したウッディ君なんて、見たくないよ。
で、いちばん花の行き場が多いのが、渡さず自分で持って帰る案件。
そういうつもりで作ったんじゃないんだよ、なんでお持ち帰りするし。
さてさて、これで終わらないのが今年の卒業パーティ。
卒業生にも、あるものを渡していた。
それが、ボタン。
銀のボタンがよっつと、金のボタンをひとつ。
お世話になった人達へ渡すのだ。
一年生だけでなく、同級生や先生に渡していいんだよ。
唯一の金ボタンは、一番大切な人へ贈るもの。
特にお世話になった人や婚約者、好きな人等、自分にとって特別な人へ渡すボタン。
日本で言う第二ボタン的なやつ。
面白いでしょ。
さてさて、ボタンの行方はどうなるかな?
やっぱり先生方は沢山ボタンを貰っていた。
一番金ボタンを貰っていたのが、ジョニー先生。
まぁ、あの人は男女関係なく人気者だったからね。
私にもボタンをくれた人がいた。
「「「フランドール様のいた学校生活は、良い事尽くめだったから。」」」
ほぼ銀ボタンだけど、やっぱり貰えると嬉しいね。
そのボタンの山の中に、金ボタンがみっつ。
カーネル前生徒会長、ミラ前副会長、エリックの三人だった。
「貴女のいた学校生活は、平凡と言う言葉からかけ離れ過ぎです。
手のかかる事もありましたが、とても刺激的な一年でした。
お礼を言いましょう。」
「君がいてくれたおかげで、本当に素晴らしい一年を過ごすことが出来た。
感謝してもしきれない、本当にありがとう。」
「初めての俺の仲間だからな。
これで礼になるか分からねえけど、受け取れ。」
感動で思わず涙ぐんでしまった。
明日から、この三人は学校から居なくなる。
「私も、皆さんにお会い出来て、本当に良かったです。
お世話になりました。」
翌日、三人は学校へ来ていた。
「「「仕事が始まるのはもうしばらく先だから、寄り道しに来た。」」」
私の感動を返せ!





