155 公爵令嬢は生徒会に入る
第三期テストの前に、新生徒会メンバーが決められる。
立候補でも可能だけど、基本的には先生や前期生徒会メンバーの推薦が殆ど。
生徒会に入りたくない人は場合によっては辞退も可。
ただし、優秀過ぎる人材は強制的に入れられる羽目になるそうな。
立候補、推薦の中で、生徒会長、副会長、書記、会計、庶務の五人が決められる。
さて、新生徒会はどうなるかな?
はい、分かりきったことでした。
ロナウド、セシル様、リリーちゃん、そして私の四人が、全生徒と全先生に推薦された。
あと一人誰かやって欲しいんだけど「このメンツに入る勇気がない!」と誰もが立候補してくれないし、推薦されても頑なに辞退している。
大変困ってしまった。
「貴方達なら、四人でも生徒会が出来そうですけど。」
いやいや、カーネル生徒会長マジで言ってんの!?
「私も同感だな。
とても優秀な君達なら、どんな困難でも乗り切れるはずだ。」
ミラ副会長まで……
完全に素を出す事に決めたんだね。
そういや、前期の書記、会計、庶務の三人はどんな人だったんだろう?
生徒会長、副会長が目立ちすぎてたから、全然存在感がなかった。
「彼らは良くも悪くも無難な方達でしたよ。
表立って何かをすることはほぼありませんでしたが。」
そ、そうですか。
「君達は四人とも圧倒的な存在感だから、誰も影に隠れることは出来ないだろう。」
全員が目立つ必要もないと思うんですけど。
とりあえず、生徒会のメンバーは決まった。
次は、誰が何を担当するか。
生徒会長はもちろんロナウドだとして、副会長はヒロイン枠のリリーちゃんかな?
だとしたら、領主経験のある私が会計と庶務兼役で、必然的にセシル様が書記になると言う事で決定でしょう。
「は?何言ってんだ?
フランが生徒会長に決まってんだろ」
なんでよ?
次期国王候補が生徒会長しなくて誰がするんだよ?
「「「「「だから、貴女がするんでしょうが!」」」」」
何故満場一致!?
「領主経験があるからこそ、リーダーシップがとれるんだろ?
それに、俺よりフランの方がよっぽど人気だぜ?」
んな訳あるかぁ!?
王子を差し置いて、小さな男爵領の領主が人気があるとか、冗談はよしこちゃん!
「いえいえ、フランさんの人気は絶大ですよ。
学力も魔法技術もこの学校では先生すら凌駕する程ですし、人望だってとても厚いんですから。」
「そうですよ。
小さくて愛らしいお姿や、運動神経皆無なチャームポイント、先生によく叱られているお茶目な所も、フラン様の魅力なんですもの。」
こら!リリーちゃん!!
「いい加減諦めて、生徒会長をしたらどうですか?
駄々をこねるだけ時間の無駄ですよ。」
「そうだ、君の統治に不満を発する者は誰も居ない。」
お二人とも……
よし、分かった!
仕方がないから私が生徒会長をしてあげるわ!
残り三人はどうするつもりなんだろう?
「俺らはくじとかで決めるのでいいだろ。」
何その適当!?
その後、しっかり話し合いをさせて、副会長がロナウド、会計がリリーちゃん、書記がセシル様になった。
庶務はいなくても何とかなるでしょう、との事。
さて、全校集会で新生徒会の紹介も終わったことだし、引き継ぎ作業をしていくか。
とは言っても、今までどんな事をしてきたか、これからする事は何か、の説明くらい。
生徒たちの風紀管理、オリエンテーションや学校祭等の行事の指揮、あとは先生から生徒への連絡や注意事項をまとめる程度の仕事はあるみたい。
で、今は取り急ぎ何も無いらしい。
領主作業の引き継ぎ時と全然仕事量が違う!
カーネル生徒会長曰く「全然忙しくないから、気負わずやってけ」との事。
まぁ、私が今までやってきた事に比べれば、聞いた限り鼻で息をする程に簡単な作業内容だった。
一応、第三期テストまでは新旧一緒に活動していくらしい。
では、新生徒会、活動開始!
と言っても、本当に忙しくない。
むしろ、暇と言っていい程。
だからカーネル生徒会長はいつも図書館でブラブラしてたのか。
あー、暇を持て余して遊んでるとか、どこの神々だよ。
「やっぱりフランには生徒会程度の仕事程度じゃ物足りないか?」
物足りないって言うか、時間が有り余ってるのがなぁ……
なんか新しい事でも出来ないかな……
そうだよ!
新しい事、いや、物を作ればいいんだよ!
昔からパソコン、せめてワープロがあればいいなぁとか思ってたんだよ!
せっかくだから、作っちゃおう!
ものすごく細かい作業になるから一発で上手く作れるか分からないけど、父親の腕時計同様、これも分解した事あるから仕組みは分かってる。
アームと呼ばれる先端部に活字が付いている部品が、機構を介してキーに直結している。
印字したい用紙をローラーにセット。
キーを押下すると、梃子の原理でアームの先の部分が、インクリボンの上からローラーに固定された紙を瞬間的に叩きつけることで、アームの先端についている活字の形でインクが紙に染み込んで印字される。
今回はインクリボンじゃなくてカーボン紙でやってみよう。
押下したキーから指を離すと、アームが元の位置に戻るのと同時に、紙をセットしているローラー部分が活字一文字ぶん左にずれる。
これを繰り返して、打鍵したい単語が右側部分に収まりそうにないと判断した場合は、ローラー部分に付いている改行レバーを掴んで印字位置を左側まで戻してやる。
この時に、改行の合図として「チーン」とベルがなるようにする。
これを繰り返す事で、用紙が文字で埋まっていく。
アームの先端には、2種類の活字が刻印されていて、大文字と小文字、数字と記号が刻まれていて、これらの印字の切替はシフトキーを押下しながらタイプすることで実現可能。
この文字をこの世界の文字に変えてやると、この世界専用タイプライターの完成!
いや、スっと完成したわけじゃないよ?
滅茶苦茶試行錯誤しながら作ったんだから!
それもこれも、生徒会が超絶暇だったからこそ出来た代物だからね?
さて、タイプライターのいい所は、清書がいらないこと。
使い方に慣れてしまえば、文字を書くより早く操作出来るようになるし、一石二鳥。
書記のセシル様に使い方を説明すると、あっという間に操作をマスター。
「これは面白いですね!
素早く綺麗な文字が書けるので、今後の書記作業がスムーズになりそうです!」
まあ、セシル様元々字が綺麗だからタイプライター必要ないかもしれないんだけど、楽しんでくれて良かった。
こらこら、ロナウドとリリーちゃん、セシル様からタイプライターを取り上げないでよ。
やりたいんなら順番にして。
カーネル生徒会長とミラ副会長も順番待ちかよ。
この話を聞きつけた先生は、いつも通り学校長に報告、国王陛下への讓渡品としてもう一台作る羽目になった。





