151 公爵令嬢は専門機関に呼び出される
先日の生霊事件について、私は魔法研究専門機関に呼び出しをくらっていた。
「先日、貴方はオモカゲの事をイキリョウと言っていましたが、詳しく教えて頂けませんか?」
機関で一番偉い人に質問された。
起こった事はそのまま最初から最後まで伝えた。
物理、魔法、聖魔法全ての攻撃がオモカゲには効かない事、逆にオモカゲの攻撃はこちらに通じる事、攻撃される瞬間だけ物理攻撃が可能で、魔石を持つ生き物だけに効果がある毒薬がオモカゲにも魔猿本体にも効果がある事。
それらの答えの結果が、魔猿の生霊じゃないのかと考えた。
「どうして、それをイキリョウだと思ったのですか?」
ドッペルゲンガーとは、地球では同じ人物が同時に別の場所に姿を現す現象を指す状態で、第三者が目撃する超常現象のひとつとしても扱われているもの。
「二重」「生き写し、コピー」という意味を持ち、英語風には「ダブル」、漢字では「復体」と書くこともある。
ドッペルゲンガー現象は、古くから神話・伝説・迷信等で語られて、肉体から霊魂が分離・実体化したものとされていて、この二重身の出現は、その人物の「死の前兆」と信じられた。
だそうだ。
俺自身はそういった霊的なものは一切信じてなかったけど、ウキペヂア先生がそう言ってるんだから仕方ないね。
この事を、どうやったら信じてもらえるか説明しようにも、宗教、というか世の理として魂が肉体から分離すると言う概念がないこの世界では、ウキペヂアの解説で信じてもらえるかどうか。
実際、死にかけの魔猿がオモカゲを出していた訳で、その魔猿本来の力以上の能力を持っていたんだから、肉体的に制限のある本体から離れたことで潜在能力が発揮されたとも言える。
でも、どうやったらこの世界の常識を覆すことが出来るんだろう?
事例として俺の事を伝える訳にはいかないし、例え言ったところで信じてもらえるか。
そんなもんハイリスク過ぎて出来るか!
「ハッキリと表現出来ないのですが、もし魔猿が自分の意思でオモカゲを操っていたとしたら、あのように食中毒で瀕死の状態であるはずがない、と思ったからです。
逆に、オモカゲ自身が意志を持って活動していたのなら、魔猿本体の意識は関係がないのではないでしょうか。」
「成程、一応理には適っている。
ですが、この世は魂と肉体が別れることはなく、死んだ後でもその魂が肉体から離れる事はない、という常識はご存知ですよね?」
「そもそも、その常識が間違っていた、とは過去に誰も思った事はなかったのでしょうか。」
「な、何!?」
「私たちが住むこの星が、平面ではなく立体、しかも円球の可能性がある事、空が動いているのではなく、この星自体が動いている可能性がある事、空のずっとずっと上空には空気がなく、光さえ吸い込む重力の塊が存在する可能性がある事……
そういった事は、想像したり調べたりした事はなかったのですか?」
地球で言うところの、天動説や地球平面説、ブラックホールのようなもの。
この世界が地球と同じかどうなのかは、詳しく調べてないから分からないけど、科学が発展してないこの世界ではこういったことを研究してこなかったのだろうか。
分からない事が満載で、ワクワクが止まらねぇんだけど、今はそれどころじゃない。
神や悪魔を割と雑に扱っているくらいだから、宗教的な物とかじゃなくて基本的な常識だとしか思ってないのかもしれない。
「そ、その考え方を本気で思っているのかい?」
「いえ、私の空想です。
でも、可能性として色んな意見がある事は良い事だとは思いませんか?
今後の研究題材にもなりますし、何より科学が大きく発展する可能性が秘められています。」
「し、しかし、常識ではそんな事……」
「あーもう!
こういった疑いがある、こういった可能性がある、それが気になる。
じゃあ嘘かホントか調べてみよう!
それでいいじゃない!」
何をグジグジ言ってるのか意味わからんけど、要するに、やりたい事はやってみないと分からないって事だよ!
何を躊躇う必要があるんだ?
失敗したっていいじゃない、失敗は成功の母だって言うんだし。
地球でもだったけど、これだから頭の固い屁理屈オヤジはいけ好かないんだよ!
俺だって私だって、どれだけ失敗してるか!
私なんて特に、地球の常識が全く通用しないから、何度実験室を破壊して、怪我を負って、リッカにこっぴどく叱られたか。
むしろそれが私の日常ってもんよ。
こうして、人々は文明を発達させて、新しい情報を知る事が出来るんだから。
ホントに、この世界に積極性ってもんがないのかしら!
「じゃあ、私がエレメント魔法学校を卒業したら、ここで働いて今までの常識を全部ひっくり返してやりますよ!
覚悟しておいてください!」
こうして、私の就職先は早々に決まった。
ちなみに、
「ねぇ、あのアダマンタイトの大きな盾、貰ってもいい?」
鍛冶屋さんが買い取ってくれた。





