表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/260

150 公爵令嬢は野外活動をする3

 夜が明けて夜営が無事に終わった頃、私達と同じく不穏な空気を感じた生徒がいた。


 ご想像通り、ロナウド、セシル様、リリーちゃん、ミラ副会長、そしてビクター君。


 いや、この錚々たるメンツと一緒に気付けたとか、ビクター君すごいな!


 このまま野外活動をしていると危険だと判断した先生方の決断で、活動を中止して帰ることに。


 畜生、燻製中のお肉を育てきれなかった。




 帰りがけ、とても静かな森でスムーズに進んでいく一同。


 いや、静かすぎる。


 鳥や獣の鳴き声は一切聞こえず、気配も全く感じられない。



 こういうのって、よくある話では


「「大型の獣か何かが出てきた?」」


 ジョニー先生とユニゾン。


 「フランドール嬢、おめぇもそう思うか?」


 「はい、昨日の不穏な気配が動物達の大移動だとして、今巨大な力を持った『ナニか』がこの近辺に居るとなれば……」


 「かなり危険な状態だ。

 スカウト役は細心の注意を払って周りの気配を感知してろ。

 戦えるやつは、すぐ戦える準備をしておけ。」


 私が出来る戦い方は例のサーモグラフィーと熱操作くらい。


 一応ゴーレムが石つぶてを投げたりとかも出来るけど、後衛組の攻撃に比べたら威力もスピードも桁違いに低い。


 そうだ、私には頭脳がある!


 昨日作っていた薬物を、出来るだけ多くの人に渡した。


 「この薬は、ある特定の生き物を即死させる事の出来る毒です。

 人間に害のない物で作ってあるので私達には無害ですが、その動物相手だと擦り傷程度で死に至らせることが出来ます。

 いざとなったら、これを使ってください。」


 「その、ある特定の生き物ってなんだ?」


 ジョニー先生の問いかけに私は答えた。


 「それは、魔石を持つ生き物です。」




 班別に別れて慎重に歩いていく。


 やっぱり気配は何も感じない。


 気のせいにしては胸がスキッとしない。


 かなり遠くまでサーモグラフィーをかけているけど、何も見えない。


 緊張感が漂う空気。


 その時間が刻一刻と過ぎていく中、急にゾワッと嫌な気配が漂った。


 全員が感じられる程の気配なのに、誰一人として見つける事が出来ない。


 そう、私ですら感知出来ない。


 「上だ!!!」


 誰かの叫び声で空を見ると、『ナニか』がものすごい勢いで落下してきた。


 思わず私は、みんなを囲むほどのアダマンタイトの障壁を三重に張った。


 ドォーーーンと言う衝撃音があり、また気配がなくなった。


 障壁を外すと、三重にも張っていたアダマンタイトが二枚目まで貫通していた。


 なんという攻撃力!


 そして目の前に、何やら白い物体が。


 猿のような形をした人間の子供程の大きさの『ナニか』。


 「お、オモカゲだ……」


 オモカゲ。


 それは、物理や魔法の攻撃が一切効かず、逆にこちらには攻撃出来る魔獣。


 人間や動物に悪い影響を及ぼさない、と言う風に魔獣図鑑には書いてあったけど、完全に私達に攻撃してきてるよね?


 一体何が起きたのだろう。


 再び私達に攻撃をしてくるオモカゲ。


 ビクター君が盾で攻撃を受け流してくれた。


 ビクター君、なんて奴だ!


 反撃をする生徒達と先生方。


 しかし、図鑑通りこちらの攻撃は一切効かず、私の作った毒を塗った矢や剣も効果は全くない。


 完全に受け身を取るしかない状態にされてしまった私達。



 

 なぜ私のサーモグラフィーに引っかからなかったのだろう?


 素早く動くオモカゲを目視して、熱操作で体温を滅却。


 こうかがないみたいだ……


 なら逆に、熱操作で加熱、過熱!


 こうかがないみたいだ……


 熱効果が一切ないだと!?


 実体がないとなれば、ゴースト系の可能性がある。


 図鑑にもそう書いてあった。


 つまり、リリーちゃんの光属性魔法の聖魔法ならどうだ!?


 こうかがないみたいだ……


 もう!なんなんだよコイツ!


 攻撃威力が高くて、みんながバンバカ怪我してるのをリリーちゃんの治癒魔法(エリア拡大)によって即座に回復されている。


 一瞬激痛に襲われるのに何も無かったことにされているとか、ただの恐怖でしかない。


 もうやめて!とっくにみんなのSAN値はゼロよ!




 おかしい。


 攻撃は与えられないのに攻撃をくらう。


 ゴースト系だとしても何らかの攻撃を与えられるはずなのに、オモカゲは一向にその気配がない。


 そして、私達に攻撃してくる瞬間だけ物理的に触れている。


 つまり……


 「オモカゲが攻撃してくる瞬間は実体になってる可能性が高いわ!!」


 一斉に私の作った毒薬を防具に塗った。


 すると、攻撃をしてきた瞬間、オモカゲは身体の一部が破壊された。


 「やった!

 効果があるぞ!」


 しかし、時間が経つとその身体の一部が元に戻ってしまう。


 こうかはいまひとつのようだ




 やっぱりおかしい。


 私の作った毒薬の効果が少ないし、何より蘇生している。


 私の毒薬はかなり強力で、触れただけでも細胞レベルで破壊されて治癒不可の状態になる筈なのに。


 地球の知識を洗いざらい整理して、見つかったのが、



 「生霊(ドッペルゲンガー)……?」


 「なんだそのイキリョウってやつは?」


 「生き物の魂が、独立してそれだけで活動している状態のものです。」


 「馬鹿な!?

 魂が肉体から離れるだなんて、そんな事有り得るはずがないだろ!?」


 そう、この世界で魂というものは、肉体が死んでなお、その身体に留まるもの。


 ゴースト系魔獣や悪魔付きはあっても、幽霊や成仏、輪廻転生の概念がない。


 つまり、目の前に未知なる恐怖が迫っている。


 私の一言が、余計にみんなのSAN値を抉りとった。


 そんなつもりじゃなかったんだよ!


 本当にゴメン!!


 ただ、仮説が一つ増えたという事は、対策が立てられるという事。


 どこかでこの生霊(ドッペルゲンガー)の元になる生き物がいるはず。


 気絶しているのか、自分の意思で動いているのかは分からない。


 だけど、それを見つけ次第退治すれば、オモカゲが消滅する可能性が出てきた。




 私のサーモグラフィーが反応しないという事は、外気や土、植物と一体化する程度の体温なのだろう。


 という事は、どこか見えないところで気絶、あるいは息を潜めているという事だ。


 セシル様に、


 「私たち以外の心音が聞こえる場所を探してください!」


 と伝えると、


 「分かりました、早急に!」


 と直ぐにとりかかってくれた。


 暫くして、セシル様は見つけてくれた。


 「東に十メートルと少し、深さ二メートルの所に何かいます!」


 「いっけぇえええ!!!」


 言われた場所へ土魔法をぶっぱなす。


 すると、地面の中からオモカゲと同じ形をした黒い生き物が出てきた。


 「私がやります!」


 氷魔法を使えるカーネル生徒会長が、毒薬の(やじり)を作って毒氷矢を放つ。


 ものすごいスピードで放たれた氷の矢は、見事その動物の胸を撃ち抜き、死に至らしめた、


 すると、さっきまで猛威を奮っていたオモカゲはスッと消えてしまった。




 王都に帰った私達は、魔物研究センターにその動物とオモカゲの特徴を伝えた。


 その動物の正体は、その辺にいる普通の魔猿。


 攻撃力が強いとか血の気が多いとか一切なく、その辺によくいるごく普通の猿の様なただの魔物。


 オモカゲが暴れた原因は、この猿が食あたりを起こして瀕死状態になってせいでオモカゲが発生し、暴れてしまった可能性があると。


 で、食あたりの原因は、チョコレートだと。


 犯人は、私かー!?

毒薬の作り方


①魔物にとって猛毒の植物を採取。

 (因みに、人間には全く害はないけど、かなり不味いので食用ではない。)


②その植物と砕いた魔石をよーーーく混ぜ合わせながら熱を加える。


③ペースト状になったらお湯を混ぜてろ過すれば、魔物専用毒薬の完成。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] チョコレートと玉ねぎを無事に食える哺乳類は少ないらしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ