127 公爵令嬢は男爵領へ招待する
毎回テストが終わると、一週間(地球時間で十日)の
休みがある。
ここで一度帰省する生徒もいるけど、遠方の生徒はこのまま寮生活を続けている。
カーネル生徒会長とミラ副会長は居残り組。
なので、二人をフィアンマ男爵領へ招待する事にした。
「招待すると言って、何か企んでいるんじゃないでしょうね。」
そんな事するわけないでしょうが!
ただ単に、フィアンマ男爵領へ来たことがないから、招待してあげてるだけですって。
「なぜ副会長が一緒なんですか?」
「最近仲良くなったんです。
ミラ副会長も寮で過ごされるより、男爵領で楽しんでい頂けたら、と思いまして。」
「ありがとうございます、フランドール様。」
そしてコソッと
「本当にありがたい。
会長と一緒に旅行だなんて嬉しい限りだ。」
そんなつもりでは招待した訳じゃなかったんだけど、喜んで貰えるなら何よりだ。
馬車で二日近くかかる道のりなので、男爵領で過ごすのは六日間。
その旅路も、三人で会話をしながらのんびりと。
優しい言葉と笑顔で人気のメガネ男子カーネル生徒会長は、本当は思ったことをなんでも言う口の悪い人。
無表情で所作が美しい才色兼備の高嶺の花ミラ副会長は、本当は男言葉を使い喜怒哀楽が激しく、とても努力家。
相変わらず二人とも、私と二人の時以外は猫を被っていて、お互いの会話もすごく他人行儀っぽい。
二人とも、普段通り素直になればいいのに。
男爵領へ入った途端、景色はガラリと変わる。
高層住宅が立ち並び、日が暮れそうだと言うのに街中は賑わいを絶やさない。
そこらかしこから漂う、空腹を刺激する匂い。
王都より賑やかな街並みを見た二人は、驚きを隠せない。
「これが私の領地、フィアンマ男爵領へようこそ。」
「こ、これが噂のフィアンマ男爵領ですか……」
「想像していたより、ずっと華やかで活気があるのだっ、ですね……」
ミラ副会長、驚きすぎで素が出かけてましたよ。
「まずは夕食を食べましょう。
何を食べたいですか?」
「「逆に、何がオススメですか?」」
うーん、難しい質問だ。
さっぱり系かこってり系か、がっつり系かあっさり系か。
「私はお腹が空いているので、こってりがっつり系で。」
「で、では私もそれでお願いします。」
がっつりこってりと言ったら……
「へい、とんこつラーメン一丁上がり!」
「牛すじ味噌煮込みお待ちどうさま!」
「カレーをご注文のお客様!」
とりあえずこの辺りかな。
「これが噂のラーメンですか……」
「ミソという調味料とカレーのスパイシーな香りが、なんとも食欲をそそる……」
「いつまでも見ていないで、どうぞ召し上がってください。」
二人とも使い慣れない箸でラーメンを食べようとするけど、上手く使えない。
カーネル生徒会長は、以前私があげた銀の箸で練習していたのか、以前よりはマシな箸使いで、不器用ながら何とか食べていた。
そんなカーネル生徒会長を見たミラ副会長は、気合と根性で食べている。
ミラ副会長、所作がちょっと崩れかけてますよ。
「こんなにコシのある麺は初めてです。
そして、その麺に絡まるこってりとしたスープ、相性が抜群ですね。」
「肉がほろほろと溶けていくほど柔らかい甘辛の肉とスープ、なんだか心身ホッとします。」
「香辛料の風味と香りがガツンとくるソースを、パンで掬い上げながら食べるこれは、全身がカンカンと熱くなる……!
クセになりそうな食べ物だ……」
あ、ダメだ、ミラ副会長は完全に素が出ちゃってる。
「はぁ、フィアンマ男爵領というのは、これ程に美味しいもので溢れているのですね。」
「まだまだ美味しいものは沢山ありますよ、ミラ副会長。
ここにいらっしゃる間は、ご馳走をどんどん食べてもらいますからね。」
「これらを開発したあなたは、どれだけ食いしん坊なんですか。」
ボソッと素を出さないでくださいよ、カーネル生徒会長。
宿は一泊しかリゾートホテルが取れなかったから、他の日は男爵邸で寝泊まりしてもらう。
「随分と小さな邸宅ですね。」
だから、ボソッと悪口言わないで!
「庭は意外と広いですね。
な、なんだあの金属の樹木は!?」
もうこの人、素を隠す気すらないな。
部屋は一番広い部屋と二番目に広い部屋を貸し出し。
「是非、会長が一等部屋をお使いください。」
「いえ、女性に狭い部屋を使わせるわけにはいきませんから。」
今、狭いと言ったな?
あとミラ副会長、一等部屋って程ゴージャスではないから、あんまり期待しないで欲しい。
二日目は色々な施設巡り。
劇場や野球場、様々な工場や介助施設に子ども園。
全部は廻りきれないから素通りしたところもあったけど、野球観戦や演劇を楽しんで、介助施設と子ども園を見学に。
「教会を細分化してより内容を特化した訳ですか。
貴女にしては中々良い発案の施設開拓ですね。」
カーネル生徒会長も堂々と素が出てきたな。
「実に素晴らしい施設の数々だよ!
あのマジカルレンジャーと言う演劇は、とても面白かった!」
この人は完全に素を曝けきってる。
二人が特に気に入ったのがビール工場。
試飲をした時、今日夜はこれに合う食べ物が食べたいと言っていた。
なので、夜は居酒屋でたこ焼きやイカフライ、スルメの炙り等のおつまみ系を食べる事にした。
二人ともビールを結構な勢いで飲んで、酔っ払っている。
羨ましい、私も飲みたい。
「店員さんから聞きましたよ。
なんでも、フランドール嬢は新しい食べ物を開発するために、周りの人に多大な迷惑をかけているそうですね。
これは由々しき事態です。」
それは、イカタコ鰻事件かな?
それとも、魚醤悪臭問題かな?
「フランドール嬢、貴様は本当によくやっている!
これ程の名領主は聞いたことがない!
さぞや並々ならぬ努力をしたのであろう!
改めて見直したぞ!」
あーうん、頑張ってはいたけど、ほとんどテルユキの記憶の財産のおかげだからね。
てか、二人ともベロベロだな。
とりあえずウコン茶を頼んで、二人に飲ませておいた。
明日二日酔いしなければ良いのだけど。
二人ともしっかり二日酔いしていた。
「頭が痛い……
昨日何があったのですか?」
「うっ、き、気持ち悪い……
き、昨日は醜態を晒してしまって、すまなかったな……
オェエェェっ……」
現在進行形で醜態を晒しているよ。





