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126.5 学校長は公爵令嬢を思う

 我がエレメント魔法学校にとんでもない生徒が現れた。


 フィアンマ公爵令嬢にしてフィアンマ女男爵であるフランドール・フィアンマ嬢。


 過去にこれ程の実力者が居ただろうか。


 国王陛下であるランサー・アースフィールド陛下が、過去最高の生徒だったと評価されていたが、それに取って代わる存在かも知れない。


 有り余る知識量に発想力、そして限界を知らない魔法の実力。


 運動能力は皆無だが、それすら相殺、いや、欠点にも至らない。


 このような人物を、儂は見たことがない。




 フランドール嬢は、五歳の成認式の時から目をつけていた。


 なんと言っても、五十年に一人の存在と言われる火土属性の持ち主。


 魔力量が人より少なめだったのが否めないが、将来有望な人物だと見張っていた。



 ところが、将来と言わずすぐに彼女の実力は発揮されていった。


 見たこともない食べ物をどんどん生み出し、世の人々の心、いや胃袋を鷲掴みにしてしまう。


 新たな道具をどんどん開発してゆき、人々の生活に活力と便利を与える。


 フィアンマ公爵領の学童院の児童の学力をぐんぐんと伸ばしていった。


 たった六歳の少女がだ。


 生徒であり学童院の先生になっていたフランドール嬢は、今や名誉教授に就任している。


 あの陸上競技大会を作ったのも彼女。


 娯楽の少ないこの国の人々に、最高の活気をもたらした見たこともないスポーツの数々。


 熱気に湧いたそれは、他の領地で真似をされる程素晴らしいものだった。


 そこでも彼女は名誉会長の名を手にする。




 そして、その実力を国王陛下に見初められ、たった七歳にして爵位と領地を持つ事に。


 たった七歳の少女が受け取る褒賞ではない。


 しかし、彼女にとってはそれは至極妥当なものだった。


 住人をどんどん増やし、仕事を与え、王都を凌ぐ活気に溢れた領地。


 独特の食文化で、多くの人間の舌を唸らせた食べ物。


 見たことも聞いたこともない発想力で、領外にすら流行らせた娯楽。


 誰もが一生に一度は訪れたいと言われる観光施設の数々。


 あの寂れて誰もが手を付けられないと言われていた領地を、今では特産品と娯楽、観光業に溢れ、『小さな楽園』とまで言われる程に発展させた。


 それだけではなく、彼女は社交界の常識すら打ち砕いた。


 仮面を被り、爵位や立場のない舞踏会。


 見たこともない衣装と飲み物で、女性方を虜にした着物茶会。


 彼女の発想力は無尽蔵に溢れ出てゆき、遂に自身の店舗を持つ事に。


 貴族の女性向けの高級志向の店でありながら、顧客は常に予約待ち。


 彼女の作ったブランドを持つことが、淑女のステータスとまで言われる程だった。




 これほどの噂と事実を目の当たりにして、優秀、いや、天才だと思わない方が不思議な人物。


 その人物が、我が校に入学するのだ。


 楽しみ半分、怖いもの見たさ半分の話題の人物は、容姿はとても幼い小さな少女。


 ただ、する事は壮大なものだった。


 入学前テストでは満点を叩き出した優秀な頭脳。


 自由研究で、過去の制服の情報をこれでもかと調べあげ、見本を作り上げたその努力。


 更に、魔法実技ではその高い能力を発揮するだけではなく、二人がかりでの複合魔法を実行させようとする発想力。


 噂の実力を、学校でも遺憾なく発揮している。


 大量に生産された純鉄は、実験には持ってこいの代物で、非常に役に立っている。


 失敗すら重宝されてしまう不思議な能力の持ち主。


 そして、なんといっても『算盤』という計算補助道具の発明。


 国の重鎮をも虜にした品物は、どのような過程で思いついたのだろう。


 数学に算盤術と言う分野を取り入れる事になったきっかけを作った少女。


 第一回テストの魔法実技で作られたミスリルゴーレムは、過去にも先にも作られる事はないだろう究極の逸品。


 未来の王妃がこの学校の歴史に名を残すにふさわしい代物なのは一目瞭然。


 早速交渉して手に入れ、魔法学校の一番目立つ場所に展示。


 二年生はおろか先生方すら目を止めてしまうミスリルゴーレムの美しさ。


 彼女が更に名を上げるきっかけになった。




 彼女が将来、どのような人物になるのか、儂は今から楽しみで仕方がない。


 きっとこの国の魔法学校のあり方を改良し、世界最高峰の魔術師になる事は間違い無いだろう。


 もうすぐ八十才を迎える儂は、彼女の人生の末を見ることが出来るのだろうか。


 いや、必ず見届けてみせる。


 気合で、あと五十年は生き続けてやる!

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