126 公爵令嬢はテストを受ける
エレメント魔法学校では、年に四回テストがある。
一年が十ヶ月のこの世界で、三月、六月、九月の初日からと十月下旬に、座学、武術、魔法実技の三種を一日ごとに行っていく。
と言っても、一年生の第一回テストの武術は体力測定が殆ど。
組手や武器術はやらないそうだ。
いや、そこは私にとってどうでもいい。
なんでテストに武術があるんだよ!
座学みたいに一夜漬けが出来るもんでもないし、魔法みたいに長年の努力としてなかったから、今更もう手遅れだ。
いくら二ヶ月間毎日しっかり運動してても身体が言う事を聞いてくれないし、ダンスだって九歳の頃から練習してるのに六年間ほぼクオリティの変化なし。
もう、諦めるしかない。
そのかわり、座学では今回も満点、魔法実技では自分史上最高の魔法を使ってやる!
テスト前に何か対策している人もチラホラ。
特に、座学は一番成績を伸ばしやすいからね。
この雰囲気は日本の学校とあまり変わらないな。
「「「フラン様、座学を教えて頂けませんか?」」」
来たのは自由研究一班のアンリさん、ウッディ君、ビクター君。
「いいけど、どの教科を教えて欲しいの?」
「「「全部!!」」」
全部かよ。
得意不得意とかあるでしょうが。
「アタシは、全体的に同じくらいの点数とってるから、どれが得意とかありません。」
「オレは数学が苦手だったけど、フラン様の算盤で得意になりました!」
「ボク……地理と生物以外全部苦手……」
むぅ、成る程。
「まず、数学と科学は、法則に対する慣れが大切。
一冊の問題集を何回もこなすようにする事で、問題の出題パターンでよくある、『単に数字を変えただけの問題』や『いくつかの公式を複合させたタイプ』を理解していくことが重要。
国語、地理、歴史で大事なのは、基本的には『覚えること』。
理系科目と比較すると、問題の出題パターンが非常に多いことが特徴で、理数系とは逆に数冊の問題集をひたすらこなして、『どんな問題が来たとしても一度は解いたことがあるっていう状態』を作り出すといいわ。」
三人ともポカーン。
でしょうね。
ともかく、先ずは問題をどんどん解いていこう。
どの教科も満遍なく出来るアンリさんは、特に好きな教科を伸ばしてもらおう。
数学(というより計算)が得意になったウッディ君は、理数系を完璧にしていこうかな。
地理と生物以外全部苦手なビクター君は、残りの文系を優先的に強化していく事にした。
分からないところは私が噛み砕いて説明しながら、最後の答えを本人達が見つけていく。
問題を解く事に慣れさせて、自信をつけていく勉強法が、私の教え方。
これで上手くいくかは本人達の理解力と努力次第だけど、どうなる事やら。
「あれ、フラン達もテスト勉強してるのか。」
ロナウドが教室に入ってきた。
「三人の勉強を私が教えてあげてるって感じかな。
スリーツーマンの家庭教師みたいなものですよ。」
「へぇー、オレも混ぜてよ。」
「ロナウドは勉強出来るじゃないですか。」
「でも、入学式の前は俺負けてただろ?
次は絶対勝ってやるんだ。」
「あら、私に解けない問題はないですよ?
満点取るおつもりですか?」
「当たり前だろ!
俺はいつだって全力だからな!」
前回はレベッカちゃんにも負けちゃう、ちょっと残念な結果だったしね。
そうこうしていると、セシル様とリリーちゃんコンビが教室に来た。
「面白そうですね、僕達も混ぜてください。」
「私にも勉強教えてください!」
リリーちゃんに教えられることなんて何もないよ。
前回ポカミスしなかったら同一満点だったじゃないの。
「では、私もフラン様と同じように皆様をご指導致します。」
急な立ち位置変化だけど、それは心強い。
そして段々と教室に人が集まってきて、クラス全員がテスト勉強をする事に。
指導役は私とリリーちゃんだけでなく、いつの間にかロナウドとセシル様も。
あーだこーだ言いながら、お互いに勉強を教えあったり、練習問題で競争したり。
やっぱり、勉強は楽しみながらじゃないと、やりたくなくなるものだからね。
一人の方が集中出来るタイプの人もいるけど、ファミレスやカフェでグループで勉強する人もいるくらいだから、多少騒がしくてもみんなで勉強し合うのが刺激があるのかも。
「「「アタシ達のフラン様先生が……」」」
なんだか懐かしい呼び方が聞こえた気がした。
第一回テスト座学当日、みんなはいつもより気合が入っている。
私だって気合が入っている。
ロナウドに満点取ると大口叩いてるのだから、絶対ミスれない。
問題用紙を見ると……
やっぱりクオリティが低い。
とは言っても、舐めプしてたらポカミスしちゃうかもしれないから、念には念を入れてしっかり確認をしておこう。
終わった後のみんなの様子は、結構良い表情してる。
前よりよく出来たみたい。
二日目の武術は、もう諦めた。
三日目の魔法実技は、全力を出して鎧姿のミスリルゴーレムで的をぶっ壊した。
結果発表の日。
張り出された座学順位発表掲示板には……
な、なんと、私は二位!
魔法学をたった一問間違えてて、リリーちゃんに負けてしまった!
ありえない!!
「あれ?
満点取るんじゃなかったのか?」
ニヤニヤしてるロナウド。
偉そうに、結果は今回も三位じゃないの!
満点取るんじゃなかったのか!
でも、悔しい!
どの問題を間違えたのか、早速確認。
……ん? 間違えてない?
もしかして、採点ミス?
急いでジョニー先生へ問い詰める。
「あー、すまん、俺の採点ミスだ。
間違えてなかったわ。」
畜生!
メッチャ恥を書いたじゃんか!!
早速掲示板の表示ミス変更して!
「分かったが、もう手遅れじゃねぇか?
みんな掲示板見終わった後だろ?」
ガーーン……
「じゃあせめて口頭で訂正してくださいね。
絶対ですよ!!」
「ああ、すまなかったな。」
ちなみに、武術は最下位、魔法実技は一位(やり過ぎ)と言う結果だった。
なんだよ、『(やり過ぎ)』って。
結果発表の翌日、ジョニー先生は
「昨日発表された成績だが、フランドール嬢は一位だ。
じゃあ授業始めるぞ。」
な、なんだってー!?
そんなサラッと言うなよ!
大事な事なんだよ、もっとしっかり説明してくれよ!
後日、学校長から「ミスリルゴーレムちょうだい」と言われた。





