125 公爵令嬢はボランティアをする2
途中から稲刈り機を使ったとはいえ、ほぼ一日中麦を刈ってたみんなは、腰や肩がいたくなったそうだ。
こういう時にリリーちゃんがいれば、一発で改善するんだけど。
ちっとも疲れてない私は、老夫婦二組をマッサージしてあげた。
ご老体に鞭打って広大な畑の手入れをしてくれているおかげで、私達は美味しい麦を食べることが出来るんだ。
少しはお礼をしてあげたい。
東洋医学を取り入れたマッサージは、ツボを刺激して凝り固まった筋肉を解す。
日頃溜まった疲れが、少しでも癒えるといいんだけど。
「ふぉぉ、楽になったぁ。
まるで十歳若返ったように身体が軽い。」
それは言い過ぎでしょ。
でも、楽になったのなら良かったよ。
「ありがとうねぇ。
なんだか、孫に肩を揉んでもらったような気分だよ。」
そっか、今年は災害に巻き込まれて帰れなかったんだ。
寂しい思いをしてたんだね。
「「「俺たちにもマッサージしてくれ!」」」
「いくらで?」
「「「ヒドイ!!
俺らの仲だろ!?」」」
どんな仲だよ。
今日も朝から畑仕事。
とんでもなく広大な麦畑、手動稲刈り機を作ったとはいえ、束ねた藁を運んだり脱穀機にかけたりと力仕事はまだまだ沢山。
あと五日間はお手伝いをしていくのだから、グループメンバーはヒーヒー言ってる。
そりゃそうだ、普段は五人の息子さんとその奥様方、そして総勢二十名もお孫さん達で一週間(十日)かけて稲刈りしていくんだからね。
私は相変わらず石人形ちゃんに頑張ってもらってるよ。
と、ふと麦畑の一角に、変わった穂の形をした麦が出来ていた。
「これ、他の麦と少し違うのね。」
農家のお爺さんに聞いてみた。
「そうなんです、麦っぽいんだけど今まで見たことありませんで。
麦と混ざって生えちゃって、抜こうにも根っこが絡んで麦も一緒に抜けちゃうもんでさ、収穫してから分けようっつってこんな状態なんです。」
もしかして、突然変異か何かで新種が出来ちゃったのかな?
一本穂を摘み、一粒手に取ってみる。
籾殻を取って、よく見てみると……
こ、これは!
「すごいです!
これ、食べられるよ!
しかも、ちゃんとした品種の美味しい麦よ!」
「な、何と!
そうだったのか!」
「ええ!
なので、これは次から量産して欲しいわ!
私が全部買い取るから!」
「「「「えぇーーー!?」」」」
やっと出会えた!
私が求めていたものに限りなく近いもの!
一応籾殻にも種は混ざることがあるけど、ある程度の麦を残して、今生えているものは全部買い取らせてもらった。
麦の刈り取りは石人形ちゃんに任せて、私はこの新種の麦でレッツクッキン!
麦をしっかり洗って、水に浸したあと炊く。
炊き上がったら、これを粒がなくなるまですりつぶして、ペースト状にする。
これを適当な大きさにちぎって丸めて、醤油をかければ、もち麦餅の完成!
更にもう一つ。
炊き上がった麦を、ごま、塩を入れてよく揉んで潰しながら混ぜ合わせる。
粘りが出てきたら薄く伸ばして、網焼き。
醤油を塗って味付けしながら、両面が焦げないように焼けば、もち麦せんべいの出来上がり!
あぁ、遂に手に入れた、餅!
餅米とは違うけど、代用としてかなり使える!
お昼ご飯にみんなに食べてもらった。
「こ、これは!?
噛み応えがあるモチモチとした食感としょっぱいタレが絡み合って、なんとも不思議な食べ物だ!」
「こりゃ美味しいねぇ!
これがあの変わった麦から出来た食べ物かい?
いやぁ、フランドール様はすんばらしいお方だ!」
「センベイって言うやつ?
これ、歯応えすごくてメッチャ美味しい!」
「ガリガリとした音とタレの匂いだけで、美味しいってわかりますわ!」
醤油もちもお煎餅も好評。
こりゃ、もち麦の評価が鰻登りだな。
六日間の収穫作業を終えて、学校に帰る日が来た。
「本当にありがとうございました。
今年は息子らや孫どもが来てくれたなかったから、寂しい思いをするのかと思ってたんだが、皆様が来てくれたおかげで作業も捗り、賑やかで楽しい収穫になりました。
それに、脱穀機は本当に革命的な道具だよ、来年から楽させてもらえそうだ。」
「フランドール様、新しい麦であれ程の物を作ってしまうだなんて、噂に違わず素晴らしいお方ですね。
来年からのこの麦は、全てフランドール様とお取引させて頂きますので、何卒よろしくお願いします。」
フハハ、これで餅は全て私のものだ。
餅で美味しい物をどんどん作っていくぞー!
「フランドール嬢、ボランティア活動は麦の刈り取りのはずだったんだが、何故取引をしている?
学校行事中に仕事をするんじゃない。」
農家さんの役に立ったのに、なぜか叱られた。解せぬ。





