118 公爵令嬢は参観日をする
社交界のシーズンが本格的に始まる頃、エレメント魔法学校では参観日がある。
そう、この世界にも参観日があるのだ。
時間帯は昼。
内容は、一年生はティーパーティー、二年生は魔法実技で、親達は基本的に子供達とは別席にいて、終わり間近で交流をするようになっている。
遠方や身内の不幸等で来られない親もいるけど、基本的には大体の親が子供に会いに来ている。
もちろん、うちの親も。
我が家は両親とも来ると言ってたけど、二人も来なくていいって。
大抵は父母どちらかだけの参加なんだから。
そう言えば、ロナウド王子はどうなの?
「うちは両親が来たら大変な事になるから兄上に来てくれって言ってる。」
確かにそうだわな、学校参観に国王陛下や王妃殿下が来たら、校内大パニックになるよ。
セシル様とリリーちゃんのところは母親が参加するらしい。
両親そろって参加とか、なんだか恥ずかしくなってきた。
午前中は座学だけで、武術はなかった。
ひゃっほう!
昼食をかなり早めに食べてから、パーティー(参観日)の準備をするんだけど、食後にコルセットとかしんどい。
うっかり満腹まで食べちゃったから、キツめに締めるとリバースしてきそう。
リッカに叱られながら、気持ち緩めに締めてもらう。
うっぷ、これでもギリギリだわ。
お茶会のお茶飲めるかしら。
私はまた準備をササッとして、図書館へ。
パーティー前の恒例行事。
魔法学校図書館の魔導書の数ってかなり多くて、しかも興味深い本がいっぱいだからじっくり読み込んじゃってて、全体の一割しかまだ読めてない。
簡単な魔導具の作り方や魔法陣の詳しい図形等、我が家の書庫にはない物がたくさんあるってのが、魔法学校図書館の楽しいところ。
ただ、学校にいる自由時間は、リリーちゃんや男子二人と一緒に複合魔法の練習をしてるから、中々図書館に行く時間がないんだよね。
貸し出し許可数も一度に五冊までって決まってて、週に一度のパーティー前に返却と貸し出しして、授業中に読むのが私のルーティン。
但し、この図書館は私の天敵が二人とも入り浸ってるから、見つからないように気を付けながら本を物色しないと。
おっと、そうこう言ってたらカーネル生徒会長が向こうから来ている。
ふぅー、気付いてよかった。
カーネル生徒会長がいなくなるまで待って、そこの棚の本を素早く回収。
「誰と隠れんぼしてるんだ?」
げっ、ジョニー先生。
カーネル生徒会長に気を取られて、油断してた。
「おいおい、ここは図書館なんだから、遊ぶところじゃねぇぞ。
遊ぶんなら外でやってこい。」
本でポンと頭を叩かれた。
くっそー、また子供扱いされた。
みんなにはそうゆう態度取らないのに、人よりほんの少ぉーし背が低めだからっていっつも私だけ頭ポンポンとかワシャワシャとか子供扱いしやがって。
一目散に退却だ!
っぶっ!いったぁ!
「誰かと思えば、また君ですか。」
よりによってなんでカーネル生徒会長と乙女チック出会い頭してんだよ!
「大切な書物を地面にばら撒いて。
全く、仕方のない人ですね。」
あんたが私を吹っ飛ばしたから、本をばら撒いちゃったんだよ!
「ほら、しっかりしてくださいよ。
そんな姿じゃ、一人で立ち上がるのも大変でしょう。」
そう言って手を差し出してきた。
ちくしょう、こんな奴の手を借りるなんて本当ならお断りなんだけど、確かにドレス姿だと一人で立ち上がりにくい。
仕方ない、今回は手を借りてあげるわ。
さあ、借りた本を部屋に置いてきて、パーティー会場へ。
親には先に会場入りしていて、子供達の入場から退場までをしっかり見てもらう。
エスコートは、いつも通りロナウド王子。
最後に入場して、一番最初に目についたのが私の両親。
やっぱり二人とも来てるのってうちだけじゃんかよう!
お兄様の時も二人で参加してたって言ってたから、お兄様もこんな恥ずかしい目にあってたんだろう、よく二回目も我慢しててもんだよ。
私達二人は上座について、ロナウド王子が挨拶をしたら、お茶会の始まり。
さっきまであれだけお腹いっぱいで苦しかったはずなのに、もう余裕でお菓子まで食べられる程スッキリしてる。
お茶会には私の作ったお菓子もテーブルに乗せてあって、いつも通りポテチとコーラを頼んだ。
「ここでもフランは相変わらずだな。」
少し呆れたような言い方でロナウド王子がこっちを見ている。
いや、食べてる物はいつもと同じだけど、一応社交場だからお淑やかに頂いておりますわ。
しばらくしたら他の席へ回りながら、挨拶や談笑をしていく。
一ヶ月以上も経てば、みんなが私に慣れてきて、シーーーーンと固まる事も多少なくなってきた。
まぁ、話は長くは続かないんだけど。
ちょっと居た堪れなくなってアンリさんに声をかける。
いつもは三つ編み眼鏡のツンとお澄ましさんだけど、こういうパーティーでは流石、髪を結い上げ手持ち眼鏡を持ち常に笑顔でいる。
「いつも素敵なお姿ですわね。
普段の聡明なお姿も綺麗ですけど、社交場でのアンリ様はそれはもう美しくいらっしゃいますわ。」
「フランドール様にお褒めいただき、身に余る思いです。
フランドール様こそ、いつもに増して高貴なお姿でいらっしゃいますわ。」
社交場の貴族言葉って、すっごく使いにくい。
特に、友達に対して使うのって背中がゾワゾワしてくる。
でも、学校でのパーティーの練習、特に今日は参観日だから、ちゃんと真面目にやらないと。
もちろん、気心知れたリリーちゃんに対しても。
まぁ、リリーちゃんは本来ちゃんとマナーが出来上がってる完璧ヒロインだから、こんなのヘッチャラなんでしょうけど。
パーティーも終盤に差し掛かり、親子の交流になった。
私は早速文句を言いにいく。
「どうして二人でいらっしゃったんですか!?
他の方々は全員父母どちらかだけじゃないですか!」
「「フランの学校生活の評判が私たちにも上がってきてるから」」
一体どんな評判?
「いや、いい評判もあるんだよ?
座学や魔法の実力は学年どころか歴代のトップクラスと肩を並べる程と言われているし、自由研究の内容とクオリティは過去最大級に高評価だから。」
「ただ、それ以上に問題点の報告が多すぎます。
授業中に魔導書を隠し読みしていたり、魔法訓練所を何度も荒らしたり、寮内で騒いで皆さんにご迷惑をおかけしたり。
体力が微塵もつかないのは生まれ持った才能なので仕方ありませんが、いつまでも子供のような事をしていてはなりません。」
だ、誰だ!チクったのはどこのどいつだ!
「そんなんだからジョニー先生に子供扱いされるんだぞ。」
あいつかぁ!
参観日でみんなは親子の交流を楽しんでいる中、うちの親はしこたま文句を言いに来ていたのだった。





