107 公爵令嬢は十五歳になる
今年で十五歳になる私。
十五歳、つまり成人になる年も、盛大な誕生日パーティーをする事になっている。
そして遂に、私もお酒が飲めるようになる。
うはぁ、やっとかぁ、十年ぶりのお酒だ。
パーティーに新しいものを作れとお父様にいつもながら言われているんだけど、もう作るものは完全に決めている。
早めに準備して、誕生日までに間に合わせないと!
原材料は麦。
米や蕎麦はここにはないし、芋より手に入れやすい。
半年以上期間はあるけど、製造工程でかなり時間かかるから、今から始めてもギリギリかな。
それじゃあ、レッツクッキン。
まずは麦を洗って水に漬け、水分を吸収させる。
必要なだけ水を吸ったら、麦を蒸して、できた蒸し麦を広げて三五度くらいまで冷やし、種麹を振りかけて混ぜる。
味噌の時にできてて良かった種麹。
その後、麹室と呼ばれる高温多湿な環境で種麹を繁殖させると、麦麹が完成。
麹ができたら、次はもろみ造り。
麹に水と酵母を加えて混合し、約六日間(地球時間で約七日)かけて酵母を増殖させる。
こうして造られた『一次もろみ』に、麦と水を加えて混ぜ、約十二日(ニ週間)かけて発酵させると『二次もろみ』になる。
発酵を終えたもろみを熱し、沸点の違いを利用して、水とアルコールとに分離し蒸溜することで、焼酎の原酒が得られる。
この工程があるから、蒸留しない日本酒やワインよりも蒸留する焼酎やウイスキーよりアルコール度数が高くなるってわけ。
焼酎の蒸溜方法には、常圧で行う「常圧蒸溜」と、蒸溜機を真空ポンプで減圧して行う「減圧蒸溜」の二種類があるんだけど、常圧蒸溜は熟成による酒質の向上が大きいから味、香りともに濃厚で長期熟成酒を造るのに適していて、一方、減圧蒸溜は揮発成分が少ないから酒質が軽く、クセのないすっきりとした味わいにる。
どうせならどっちも試してみよう。
蒸留されたばかりの原酒にはガス成分が含まれてて、そのまま飲むと荒々しく感じるので、味や香りをたのしめるようになるには少し時間が必要で、半年以上寝かせて熟成していく。
この熟成の工程で、ガス成分が揮散して荒さがとれるとともに、水がアルコール成分を包み込み、酒質が安定して原酒にまろやかさが加わって、原酒のなかに潜んでいる香りが花開くのだ。
その後、酒質を一定にするために樽ごとの原酒を混ぜ合わせて、水を加えてアルコール度数を調整。
瓶詰めしたら、麦焼酎の出来上がり!
なんとか誕生日までに間に合った!
試飲をしたいところだけど、リッカに「ダメ、絶対」と言われてしまったので、ケンとリッカ、もう十五歳になってるレベッカちゃん、酒好きのアデンの四人に味見をお願いした。
「おぉ、これは中々アルコールが強いお酒ですね。
水を足した方が飲みやすくなって、自分は好きですね。」
ケンは水割り派か、中々いける口だね。
「うわぁ、変な味のお酒ですね……
あ、ウイスキーを入れてコーラで割るんですか?
まあ、これなら美味しくのめますね。」
子供舌のリッカはコークハイなら飲めるみたいだ。
「私、緑茶で割って氷入れて飲んでみたんだけど、お茶の香りとアルコールの刺激がすごくマッチする!
ごくごく飲んじゃうよ。」
レベッカちゃん、お茶みたいにごくごく飲んだらすぐ酔っちゃうよ!
「ロックでも水割りでも湯割りでもなんでもいけますね。
ストレートもガツンときて、後味が芳醇。
これは素晴らしいお酒です。」
流石は酒好き、何でも美味しく飲んじゃう。
さあ、これで焼酎は完成した。
あとは誕生日パーティーの演出だ……
遂に始まった誕生日パーティー。
第三王子の婚約者という事で、王宮でパーティーをする事になった。
恐れ多すぎるわ!
来賓も、国中の貴族が来たんじゃないかって位の人数がいる。
いくらロナウド王子の婚約者だとは言え、たかが小娘男爵の誕生日に人集まり過ぎじゃないんかって程。
あぁ、これからすごく緊張する……
「みんなで練習しただろ?
大丈夫だって。」
ロナウド王子が励ましてくれる。
よし、協力してくれたみんなの為にも、頑張るぞ!
扉が開かれ、いざ入場。
明かりが全て消されて、入り口に白くぼんやりとした光が灯る。
そこには、騎士の格好をしたロナウド王子にエスコートしてもらうフリフリドレスの私の姿。
本当はフリフリなんて恥ずかしくて嫌だったんだけど、演出の為ガマンした。
淡く光りながら、二人はゆっくりと、ゆっくりと、壇上へ向かう。
そして壇上に上がった瞬間、一瞬の暗闇に包まれて、薄暗い会場に現れたのはガラスで出来た二人の像。
ガラスの像が光を浴びて行くにつれて、像の周りを激しく咲く雷の花。
次の瞬間。
パァン……とガラスの像は粉々に砕け散る。
そして、会場の明かりがつくと。
壇上には、先ほどとは違う衣装のロナウド王子と私。
「皆様、本日は私の十五歳の誕生日パーティーに足をお運び頂き、ありがとうございます。
先程の演出は、私の親友達と一緒に作り上げました。
お気に召して頂けましたでしょうか。
今日は、今まで私が作った料理の数々に加え、新しいお酒をご用意しております。
食事、歓談をお楽しみください。」
拍手喝采でパーティーが開始された。
「みんなありがとう!
おかげで上手くいったわ!」
「招待客の反応からして、成功だな。」
「中々楽しい演出になりましたね。」
「フランちゃん先生、僕頑張ったよ!」
「フラン様のお役に立てて、本当に嬉しいです。」
そう、この演出は、セシル様、ポスカ君、リリーちゃん、そしてロナウド王子と私の五人で作り上げたのだ。
水蒸気をポスカ君の水魔法で作ってもらう。
それが逃げないようにセシル様の風魔法で覆う。
そこにリリーちゃんの光魔法でロナウド王子と私の歩く姿を映される。
そして、私の錬金魔法でガラスの像を作って、ロナウド王子の雷魔法で火花を咲かせた。
私がガラスの像を壊して、そのガラス粉がかからないようにセシル様が再び風魔法で調節。
その間、私たちは壇上の影に隠れていた。
つまり、最初から会場にいたのだ。
しかし来客の皆さんは私の残像に注目していて、私たちの存在に誰も気づいていない。
作戦大成功!
「先程の演出は、五年前にも勝るとも劣らない素晴らしいものでしたね!
是非、娘の成人の時にも!」
「ガラスのお二人、とてもお綺麗でしたわ。
あれはもうないのかしら?
是非、譲っていただきたいのですが。」
「料理に出されているショーチューと言うお酒は、大変素晴らしい!
私どもが手にできるのはいつからでしょうか!?」
五年前にも似たような事言われたなぁ。
それより、私は早くお酒が飲みたいんだ!
ビール、ワイン、そして焼酎。
ポテチを肴にどれから飲もうかなぁ。
とりあえず、まずはビールから。
んぐっんぐっんぐっぷはぁー!
思わず一気飲みしちゃった。
いゃー、ポテチとの相性抜群ですなぁ!
目が覚めると、見た事のある広くて高い天井があった。
たった一杯のビールで、気がついたら私は休憩室のベッドで横になっていた。
お酒超弱かった。ショック……





