100 公爵令嬢は赤ちゃんにデレる
少し調子が戻ってきたので、今日も書きました。
私がマリア様の出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げた、と言う噂は、フィアンマ公爵領、男爵領共に瞬く間に広がり、私に赤ちゃんを助産して欲しいと言う声が殺到した。
いや、あの時は緊急事態だったし、男爵領の領主業や商会の会長職だけでもかなりの仕事量があるし、陸上競技大会名誉会長とか公爵領学童院名誉教授とかの肩書の関係で出張も多いのに、その上助産師とか無理がある!
私があと三人欲しい。
因みに、マリア様が行ったマタニティ生活は貴族の間でかなり流行り、つわり対策や栄養バランス、適度な運動など、『貴族の妊婦の常識』として新しく定着しつつあった。
数ヶ月ぶりに公爵家に来た私は、まず早速マリア様と赤ちゃんに会いに行った。
赤ちゃんはスカーレットと名付けられ、両親祖父母に溺愛されていた。
「あらフラン、いらっしゃい。」
妊娠中からのやり取りでマリア様との壁はすっかりなくなり、フランと愛称で呼ばれるようになった。
赤ちゃんはというと、かなり小さく生まれたてのホヤホヤ感はすっかりなくなり、プリプリの真っ白なお肌の『ザ・赤ちゃん』て感じになっていた。
「マリア様、お邪魔しております。
レティはすっかり大きくなりましたね。」
「ええ、こんなに元気になりましたの。
日に日に可愛くなっていくレティに、家族みんなメロメロですわ。」
わかりますとも、私もその一人ですから。
「今日はレティに玩具をお持ちいたしました。」
そう言って大量の手作り玩具を渡した。
レティが私の作った玩具で遊んでいる姿を想像すると、気付いたら目の前が玩具でいっぱいになってしまった。
カラフルボールに布製の大きなサイコロ、起き上がり小法師やガラガラ、ぬいぐるみ、メリーゴーランドなど、あらゆる玩具を持ってきたのだ。
「まぁまぁ、レティが玩具に埋もれてしまいますわ。」
は、はい、すみませんでした。
確かに、玩具はお父様やお母様、お兄様も大量に買い与えている。
しかしお父様、木馬や手押し車はともかく野球セットはまだまだ早過ぎると思いますよ?
ドレスを作ってプレゼントしようかと思ったけど、ひ孫が女の子と聞いたお祖母様が、私の時同様着られそうにない量のベビードレスを送りつけてきた。
いや、わかる。
お祖母様が私にフリフリドレスを着せたがっていた理由も、今の私になら心底わかる。
だが、私が着るとなると話は別だ。着ないよ?
多忙な仕事の隙間時間を見つけては、レティの服や玩具作りに勤しんでしまい、今では男爵邸の私の部屋はベビー用品で溢れ返っていた。
「なぜこのように忙しいフラン様が、これ程までの物を瞬く間に作ってしまうのですか?
おかげて、お部屋が全く片付かないではありませんか。」
物が増えるたびに毎度リッカに叱られる。
とは言っても、この世界にない玩具やデザインドレスを、可愛い赤ちゃんに使ってもらいたいと思うじゃん!
私、こんなに赤ちゃんが好きだったなんて知らなかったよ。
「そ、それ程までに赤ちゃんをお望みだったのですか……?」
それはまた話が違う!
私達まだ婚約者の関係だし、いざそうなるとしたら心の準備が……と言うか、私まだ始まってない……
て、話が逸れるし恥ずかしい事を言わすな!
全く。さぁしかし、この大量のベビー用品はどうにかしなきゃだわ。
当のレティはもうこれ以上受け付け拒否って程のベビー用品持ってるし、だからって捨てるのは勿体ない。
うっかり素材にこだわって、中々高級志向な出来上がりになってるんだよ。
うーん、あ!閃いた!
だったら売っちゃえば良いじゃん。
ブロッサム商会にベビー部門を増設して、玩具やベビー服、絵本やマタニティ本を売っていこう!
ベビー服は、女の子用フリフリドレスはもちろん、男の子がかっこよく着られる騎士風やタキシード風のベビー服、ぬいぐるみみたいにモコモコの着ぐるみ風ベビー服だけでなく、通気性や利便性を考慮した肌着や布おしめ等。
玩具は、ベビー、キッズ、ジュニアまで年齢に合わせた様々な知育玩具。
マタニティ本は、妊娠時の『たまごクラス』、出産後の『ひよこクラス』、妊活用の『こっこクラス』と、男性向けの『パパ活本』
おまけで、臨月の妊婦さんを体験できるマタニティスーツを作ってみた。
「ですから、忙しいのであればこれ以上新しい事を始めないでください!」
もう、最近はどう転んでもリッカに叱られるよ。
ブロッサム商会のベビー用品は、マリア様の件もありあっという間に貴族の間で広まり、大人気商品になった。
意外と好評だったのが『パパ活本』とマタニティスーツ。
つわりやなんやらで苦労しているご婦人方が購入して、旦那様に使っているとか。
所謂『お貴族様』の旦那様にマタニティスーツを着せて一週間活動させるという、日本でも流行ったあれがこの世界でも通用しているようだ。
そして、一番人気は『こっこクラス』。
まぁ、貴族の跡取りのいるいないって死活問題だし、ほぼ迷信と言われている男女の生み分けとか貴族の切望していた内容だ。
ちゃんと『※効果には個人差があります』の注意書き付けてるから大丈夫だと思う。
ただ、問題が一つ。
「これを描いたフィアンマ男爵はまだ十三歳という若さだろう?
なぜこれ程までに詳しく分かるのだろうか。」
「医学に精通していると聞いてはいたが、まさか実体験ではあるまいな。」
……俺含めて実体験ではありません。





