99 公爵令嬢は出産に立ち会う
大変期間を開けてしまい申し訳ありませんでした。
約8ヶ月ぶりの更新になります。
あれからマリア様は、二ヶ月半(地球時間で約四カ月)もの長い長いつわりを乗り越え、ようやくベッドから起き上がれるようになった。
食べられなくなっていた物もほとんど食べられるようになり、見る見るうちに元気になっていった。
そして問題発生。
マリア様、食べすぎで体重が激増してしまった。
多少お腹がふっくらしてきたとはいえ、もう今までの服は腕を通すことすら怪しい。
このままでは妊娠中毒症になってしまい、安産どころかマリア様の命が危ない!
「マリア様、体調はいかがですか?」
「ええ、最近かなり調子が良くなりましたの。
これで、赤ちゃんの分もご飯をしっかり食べる事が出来ますわ。」
「その事なんですが、ご忠告させて頂きたい事があります。」
「なんですの?」
「妊娠中の急な体重の増加は、母子共にかなりの危険を伴います。
妊娠高血圧症や妊娠糖尿病と言った妊娠中特有の病気にかかりやすくなり、最悪の場合母子の命に関わってしまいます。」
「そ、それ程までに……
わたくし、妊娠中は子供のためにたくさんご飯を食べなければならないとお聞きしておりましたわ。
それに、運動をなさると身体に負担がかかって赤ちゃんに悪影響を及ぼすとも。」
「平民の常識ではその通りです。
しかし、平民の方々は貴族のマリア様とは違い、日々の食事が満足に行えない方が多くいらっしゃいます。
更に、妊婦も普通に仕事や家事をしているので、常にベッドでゆっくりしている訳ではありません。
なので、平民の妊婦は『普段よりしっかり食べてちゃんと栄養をつけ、力仕事や激しい運動など無理をしない』ようになっているのです。」
「そ、そんな……
で、では、わたくしはこれから何を致したらよろしいのです!?」
「これからは、食事の量ではなく質に気をつけて栄養バランスの良い食事を取り、散歩やストレッチなど軽めの運動を無理なく取り入れて、過度に増えてしまった体重を落としつつ、浮腫や体の凝りを取り、出産に必要な体力や柔軟性を得て、万全の状態で出産に臨める身体作りをしていきましょう。」
「……わかりましたわ!
何から始めればよろしくて?」
「先ずはお身体についてお伺いします。
元々の体重によって異なりますが、出産時の理想体重は妊娠時の五〜十キログラム増と言われております。
それより増加している場合、産道に脂肪が付きすぎて出産時の事故につながる場合もございます。
マリア様はいかがですか?」
「す、すでに十五キロも増加しておりますの……
この場合は五キロ程減量すればよろしくて?」
「はい、ただ単に減量ではなく、健康的に減量する事が大事です。
食事はコックに、マッサージは助産師に任せるとして、マリア様が出来る事は運動です。
公爵邸の広い庭を眺めながら散歩も出来ますし、床にマットを敷けばストレッチをする事が出来ます。」
「わかりましたわ!
今すぐストレッチを行うので教えてくださらない?」
「あ、あの、申し訳ございません。
私、運動が全く出来ず、ストレッチはおろか準備体操ですらぎこちない状態なので、リッカを通じて使用人に方法を伝えておきます……」
こうして、マリア様の妊娠ダイエットが始まった。
元々頑張り屋(と言うか負けず嫌い)のマリア様は私が言った事をかなり真剣に取り組んでいて、逆にちょっと無理してるんじゃないかと思う時もあった。
食べすぎで大きくなった胃を元に戻すのがかなり苦痛だったらしく、食べたくなったらひたすらウォーキングしていたそうな。
いや、動き過ぎはあかん言うたやろ。
その努力の甲斐あって、マリア様の体型はお腹以外妊娠前とほぼ変わらない姿になっていた。
「わたくしが本気を出せばこんなのどおって事なくってよ。」
中身もすっかり元通りだ。
そして、もうすぐ臨月になろうかと言う頃。
公爵邸で久しぶりに会ったマリア様のお腹は、すっかり大きくなっていた。
妊娠期間約七カ月半、地球で言うところの大体三十二週くらいに入っていた。
あと一月前後で出産と言うところまで迫っていた。
「お身体いかがですか?」
「ええ、わたくしもお腹の赤ちゃんも順調ですわ。
今もお腹を元気よく蹴っておりますの、お触りになる?」
「え!よろしいんですか!?」
「ええ、もちろんですわ。
ほら、ここに足がありましてよ。」
「で、では、失礼いたします……」
俺のお袋以来に触る妊婦のお腹。
ドキドキしながら足があると言われた部分を触ってみた。
大きく張ったお腹にポコっと小さく固い部分。
わぁ、赤ちゃんの足だ……
そう思いながら足の部分を撫でていると、ポコポコっと少し大きめにお腹が動いた。
「ふふっ、くすぐったかったのかしら。」
そう言って笑うマリア様の顔は、すっかりお母さんになっていた。
帰り支度をしようとした頃、屋敷内がかなり慌ただしくなっていた。
「早く!助産師を連れてきて!!」
とても不安な台詞が聞こえた。
「何が起きたのですか!?」
使用人に声をかけた。
「マリア夫人が!産気を催しました!!」
何ですって!?
さっきまで何事もなかったのに!?
と言うか、日本の三十二週ってギリ大丈夫とは言われてるけど早産扱いじゃない!
陣痛の練習と言われる前駆陣痛の可能性もあるけど、かなり心配だ。
私も急いでマリア様の所へ向かった。
マリア様のいる部屋へ付き、ノックをしようとした時、
「破水なされました!
早く助産師を!!」
は、破水だって!?
「マリア様!?フランドールです!!
入りますね!?」
そこには数人のメイドに囲まれたマリア様がいた。
「フ、フランドール……
た……助けてくださいましっ!!」
痛みに耐えられず座り込んでいるマリア様がいた。
「助産師の到着は!?」
「先程使いの者をよこしましたが、まだ到着しておりません!」
「では、この屋敷に出産の立ち会いをしたものは!?」
「出産経験のある者はおりますが、立ち会い経験者はございません!」
そ、そんな……
俺だって母親の立ち会い出産はした事がない。
ましてや、助産なんて医療を勉強してても知らないことだらけ。
でも、この中じゃ一番私が一番適任。
不安しかないけど、助産師が来るまでこのまま放置なんて出来ない!
「先ずは、赤ちゃんを包む為のタオルをたくさん持ってきて!
あと、へその緒を硬く結ぶ為の紐も用意して!」
「失礼します」とマリア様の様子を伺う。
もう赤ちゃんの頭が出かかっていた。
おそらく、次のいきみで出産してしまう。
赤ちゃんの頭を支えて、生まれた赤ちゃんが落ちてしまわないように構えた。
次の瞬間、マリア様が強くいきんた。
「ーーーーーー!!!」
声にならない声で力を込めたマリア様から、赤ちゃんが産まれた。
素早く身体についた羊水を拭き取り、低体温症にならないようタオルで身体を包む。
お願い!息をして!
そして遂に……
……んやぁ、んやあぁ、んやあぁ……
やった……無事だ……!
へその緒を縛り、マリア様へ赤ちゃんを渡す。
「生まれたての赤ちゃんは寒いのが苦手なんです。
お母さんの温もりで温めてあげてください。」
私がそう言うと、マリア様は涙を浮かべながら赤ちゃんを優しく抱きしめた。
「なんて小さくて可愛い……」
「お母さんが頑張ったから、赤ちゃんと出会えたんですよ。
マリア様、ご出産おめでとうございます。」
「……ありがとう、フラン。
出産とは、これ程にも素敵な出来事ですのね……」
その後、遅れてきた助産師によってへその緒の処理や後産の対応をしてもらい、暖かい部屋で赤ちゃんの体重や身長を測った。
二千グラム程度と小さいけど、とても元気の良い可愛い女の子だ。
そして、産着を着せられた赤ちゃんは、再びマリア様に抱っこされながら一緒に休んでいる。
「フラン、ちょっとこちらにいらして。」
マリア様に呼ばれた。
「是非、この子を抱っこしてくださらない?」
「わ、私がですか!?
お兄様より先に!?」
「何をおっしゃるの?
わたくしより先に赤ちゃんに触れたのは貴方ではありませんこと?」
「で、では、失礼いたします……」
一瞬にして汗でベトベトになった手を服で拭き、そっと赤ちゃんを抱き上げた。
なんて小さくて尊いんだろう。
えも言われぬ感情がこみ上げて、涙が出そうになる。
「貴方のおかげでわたくしは赤ちゃんに出会えましたの。
貴方がいらっしゃらなければ、このような幸せな時間を過ごす事が出来ませんでしたわ。
妊娠した時から、常にわたくしを心配してくださり、見守ってくださって、本当に感謝致しますわ。
この子は、私と貴方二人で産んだのですわ……」
その言葉を聞いて、こみ上げてくる気持ちを留められず、涙が止まらなくなった。
直後に、出産の知らせを聞いたお兄様が飛んで帰ってきた。
「え……なんでフランが僕より先に赤ちゃん抱いてるの?」
お、お兄様……全てにおいてタイミングがよろしくなくてよ……
体調が中々回復せず、かなり久々になってしまいました。
これからも不定期にはなりますが、投稿を開始しようと思います。
文章や雰囲気が変わっているかもしれませんが、優しい目で見守ってください。
よろしくお願い致します。





