94 公爵令嬢は味噌を作る
遂に私は、新たな調味料を作る事に成功した。
それは、味噌。
『さしすせそ』の『そ』。
これを完成させるまでに、本当に長い時間を費やした。
米がないから、代わりになる麦麹と大豆麹を作っていたんだけど、フィアンマ男爵領は雨の少ない比較的乾燥した地域。
コウジカビが中々繁殖してくれない。
そう、麹がちっとも作れなかった。
だから、まずコウジカビが育ちやすい環境を作るための建物を建てて、高温多湿の環境内でひたすら試行錯誤をして、やっと麹が完成。
ここからやっと味噌作り。
しっかり洗った大豆を三倍の水に漬けて、半日以上水を吸わせる。
鍋にふやけた大豆とその重量の約1.5倍の水を入れて強火で一気に加熱、吹きこぼれそうになってきたら弱火にして約一時間(地球時間で三時間)ぐらい煮込む。
指で潰せるほどに煮上がったら、大豆をザルなどにあげて煮豆が手で触れるくらいの温度になるまで冷ます。
煮豆を潰す。ただひたすら潰す。
麹と塩を混ぜて、塩きり麹と呼ばれる物をを作り、煮豆をよく混ぜ合わせ、耳たぶくらいの柔らかさになるまで練る。
混ぜ終えたものを団子状にまとめて、空気が入らないよう押し込みながら樽に詰めて、表面を平らに整える。
カビを防ぐために、味噌が空気に触れないよう、サトウキビで作った和紙(と言っていいのかな?)を密着させるように敷く。
中蓋をして、その上に出来高の三割ほどの重さの重石を乗せて、虫や埃などが入らないよう、樽に蓋をして密閉する。
直射日光が当たらない場所で、約一年熟成させたら、味噌の完成!
この味噌制作、茹でて混ぜて放置する簡単なお仕事に見えそうだけど、実際めちゃくちゃ大変な作業で、味噌を作る為の環境作りや分量や割合等のレシピの開発等、作っちゃ失敗を繰り返して、やっと完成したのだ。
完成まで実に三年、ほんっとに長かった、ここまでの道のり……
頑張った自分を盛大に褒めてあげたい。
そして一緒になって味噌を作ってくれた人達、本当にありがとう!
醤油も同時並行で製造中。
こっちはもう少し時間がかかりそうだ、上手く作れてて欲しい。
さぁ、味噌が出来たから何を作ろうかな。
冬も真っ盛りになってきた、味噌の美味しい季節だね。
じゃぁ早速、冬らしい味噌料理を作っていこう。
冬、味噌、と言えばまずはこれ。
適度な大きさに切った人参、玉ねぎ、ジャガイモ、サツマイモ、大根、カブ、ネギを鍋で炒めて、少ししたら豚肉も追加。
肉に火が通ったら、水を入れて沸騰させる。
灰汁が出てくるから、丁寧に取り除くのを忘れずに。
味噌を半分溶かし入れて、野菜に味噌の味を染み込ませる。
野菜に火が通ったら、インゲンと油抜きした油揚げを入れて、残りの味噌で味を整えれば、具沢山豚汁の出来上がり!
お好みで一味唐辛子をどうぞ。
続きまして、こちら。
白身魚のすり身に、水をよく切った木綿豆腐をちぎって入れる。
細かく切った人参、枝豆、ねぎ、塩、酒、砂糖を加えてよく混ぜる。
手に油を塗って、手のひら大程にたねを成形して、油で揚げれば、さつま揚げの完成!
更に。
白身魚のすり身を溶いた卵白、片栗粉、砂糖、酒を加えて混ぜ、粉っぽさが残らないようしっかり混ぜて練り合わせて、モッチモチの弾力を出す。
直径二センチ程の竹串にたねを巻き付ける。
焼き目がつくまで火で炙って、串から外せば、竹輪の完成!
更にさらに。
白身魚のすり身に卵白、酒、砂糖をいれてよく練り、すりおろした山芋と合わせて空気を含ませるようにしっかりすり潰す。
塩を加えて、形を整えて、沸騰したお湯で六分(十分)程茹でたら、はんぺんの完成!
そして、大根、厚揚げ、ゆで卵、牛すじ、がんもどき、昆布巻きと一緒に、さつま揚げ、竹輪、はんぺんを鍋に入れて水を入れる。
こんにゃく、餅巾着がないのが残念。
ペリカドロスのゆで卵だからかなり大きいのは大目に見てもらおう。
味噌、砂糖、酒で味を整えてしっかり茹でて、具に火が通ったら、味噌おでんの出来上がり!
冷めかける時に味が染み込むんだよねー。
トドメは、小鍋に出汁、人参、ごぼう、長ネギを入れて蓋をして沸騰させる。
沸騰したら、鶏肉から入れて、キノコと油揚げを入れたら蓋をして再沸騰。
うどんを追加して、火加減を煮立つ程度に調節して加熱。
焦げ付かないように時折混ぜておくこと。
最後に生卵を入れてひと煮込みすれば、味噌煮込みうどんの出来上がり!
今日は今年一番の寒い日。
と言うか、私が男爵領に来て最大級の大寒波。
日本で例えると沖縄くらい暖かい気候のこの土地で、初めて雪が降ったのを見た。
こんなに寒い日に外仕事をしている皆さんに、冬の味噌料理を振舞った。
まずは豚汁。
「な、なんて美味しいスープなんだ!
大きめに切られた野菜が信じられないくらい甘く感じる!」
「脂たっぷりの豚肉とコクのあるスープが抜群の相性だ!」
続いておでん。
「はふはふっ、ジュワッと味の染み出す大根と、トロットロの牛すじが美味すぎる!」
「卵を半分に割って、黄身に出汁を染み込ませて食べるのが、病みつきになりそうだ!」
「えっ、この薄っぺらい塊や穴の空いたやつ、魚で出来てるのか!?
またひとつ、ここの名産品が出来ちまったなぁ!」
最後にうどん。
「あっさり味のいつものうどんもいいけど、このこってりとした感じの甘塩っぱい汁のうどんもイケるねぇ!」
「半熟玉子を絡めてみろ!
この美味さはヤベェぞ!!」
「っはぁ!暖かい!
これほど寒い日にこんなに身体が温まる食べ物が食べられるなんて、幸せだあ!」
よしよし、どれもいい評価だ。
うぅー、寒い、私もおでんを頂こう。
はむっ、もぐもぐ。
んんー、寒い日のおでんは、コンビニを思い出す素晴らしい食べ物だ。
男爵領に来ていたお父様には、味噌ラーメンを作ってあげた。
「こ、このラーメン、今まで食べた物と全く違う!
強いコクとほのかな甘み、麺に絡みつく濃厚さ!
これを」
「ブリキッド商会で出しません。」
父ショボーン。





