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第四十八話『リア充爆発断固阻止!』

彰吾と幸広は既にそれぞれの用事を済ませて 、屋敷の前でタバコを吹かしながら一服していた 。


タバコやアルコール 、税金まで上がったうえ 、至るところに禁煙や分煙化が進んでいて愛煙家には肩身の狭い世の中になってしまった 。


俺も昔は吸っていたのだが 、今ではすっかりタバコを止めている 。


「パパ 、臭いから来ないでくんない ?」


禁煙理由は蛍の反抗期……汚ならしいものを見るような目で言われた時に 、禁煙を決意した 。


「おはよう !遅れてすまん !」


「うっす 、俺もさっきついた所だから気にすんなって」


「俺もだ 。職業安定所に新着求人を見に行って来たんだが 、やっぱりダメだな 。面接を受けるやつが多すぎて受かる気がしないよ」


幸広はタバコを持った手を振り回し 、彰吾は疲れきった顔で苦笑している 。


大手企業の大量人員削減はやはり田舎にもかなりの爪痕を残すことになったようだ 。


「まぁ 、どこか良いところがあるって 、軌道に乗ったらうちの会社を手伝ってくれても良いんだぞ ? 今なら専務確定だろ」


「専務なぁ良い響きだ 、ちなみに一成は社長か ?」


「いや 、会長だ 。 ちなみに社長は美枝子」


「へぇ 、んじゃ俺は常務だな !」


俺と彰吾の会話に幸広が常務へ立候補を始めた 。


「兼業常務か 、良いんじゃないか ?」


「それで~ 、会長~お給金のほうなんですがぁ~」


俺が了承すると分かりやすく揉み手をしてみせる幸広 。


「ハッハッハ~そんなものはなーい ! 馬車馬のように働くのだ社畜よ」


「うわっ ! もはやブラックな香りがプンプンすんだけど 、専務 ! 会長が横暴です !」


「俺に振るなよ」


バカなやり取りを続けつつ 、エレベーターを下ると 、既にミアさんが待ち構えていた 。


「お待ちしておりました 。 こちらが腕輪になります」


「ミアさんありがとうございます」


腕輪を三つ受け取り二人に手渡した後 、自分の腕輪を装着する 。


「ミアさん 、俺はこれから二人を連れて黒猫亭へ行ってますから 、なにか連絡があればそちらに知らせをください」


行き先を告げると 、わかりましたと了承された 。


「緊急を要するに案件であればお迎えに向かいます 。 そうでない場合は腕輪に連絡を入れますので」


「はい 。お願いします」


「えっ 、この腕輪って携帯電話代わりになるの ?」


「はっ 、はい 。 えっとですね…… 使い方は……あれ ?」


自分の腕にぴったりとサイズ補正された腕輪を撫でて幸広がミアさんに聞くと 、ミアさんの反応がおかしくなる 。


普段優秀な侍女であるミアさんが幸広が絡むと 、途端にドジっ子になる 、ギャップが凄すぎるだろう 。


一通り操作をミアさんに習った幸広が 、それまで生暖かい目で二人を観察していた彰吾に 、実際に通信が繋がるかを楽しそうに試している姿を 、複雑な表情で見つめ続けるミアさん 。


ふむ 、これは要観察事項だな 。 ミアさんが幸広に好意を寄せているのは間違い無さそうだが 、相手は三十八年物の独身男だ 。


「あれ ? おかしいなぁ 、ミアさんすみませんこれなんですけど……」


「あっ 、はい ! これはですね」


なにか分からないことがあったのか 、ミアさんに声をかける幸広と笑顔のミアさん 。


遅まきながらのリア充だ 。頼むから爆発してくれるなよ 。


幸広の鈍さ加減は俺の知り合いの中でピカイチだった 。


俺からしたら明らかにアプローチされているとわかるお誘いも笑顔でスルーする幸広に 、モテる男の余裕か ?と考えたことがあったが 、今ならわかる 。


単純に自分に寄せられる秋波を受信する機能が 、この男に欠落しているのだ 。


遠回しのアピールなんて高等技術はこの男は気がつかない 。


さすがに直球で告白すれば受信すると思いたい 、俺は切実に友人の幸せを願っているのだ 。


彰吾も同じ意見なのだろう 、二人の様子にニヤニヤしている 。


そろそろっとこちらにやって来た彰吾 。


「なぁ 、あいつらどれくらいでくっつくと思う ?」


「幸広の鈍さは折り紙つきだからなぁ 、一年はかかるんじゃねぇか ?」


「賭けるか ?」


ニヤニヤ楽しそうな彰吾の様子にそれも楽しそうだと思う 。


「そうだな 、掛け金は ?」


「う~ん 、幸広の店であいつのノロケを酒の魚に飲んだ代金を負けたほうが持つでどうだ ?」


「乗った !」


ここに幸広の恋をけしかけ隊が結成された 。

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