第四十七話『競売に参加した!』
売却基準価額八十六万円 、買受可能価額六十七万八千円 、物件タイプ戸建て築百十三年というのがあの屋敷の掲載情報だ 。
ネットパソコンやスマートフォンなどのネット環境があれば不動産競売物件情報サイトから今競売にかけられている物件を閲覧できるのだ 。
あの屋敷の土地面積は約三百三十平方メートル 、平屋の一階部分の床面積だけでも約三百平方メートル……
広い広いとは思っていたが俺のマイホームが屋敷の面積だけ見ても三棟建てられるぞ 。
これだけの広い屋敷の買い手が現れないのは 、間違いなく掲載内容にある一文のせいだろう 。
『過去の持ち主達の家族が 、何人か家宅内から謎の失踪を遂げていて 、未だに未解決である』これだろうな 。
後は 、『解体業者が数名思わぬ事故や体調不良で入院している…… 』辺りだろう 。
異世界に通じている事を知ったからこそ買う気になるが 、誰がそんな恐怖物件を好き好んで買うってんだ 。
俺なら間違いなく買わない ! 今回は買わざるを得ないけどな 。
多分だが 、確実に何人かはあちらに迷い込んでいるだろう 。
しかも失踪者は若者ばかり 、最後の失踪者はおよそ二十年前か…… 失踪者は当時十八歳の少年ねぇ 。
ん ? 当時十八歳って今は三十八歳か ?
それが本当なら同年代だぞ 、そんな事件があったか ?
……う~ん思い出せない 。
よく見れば入札終了まで一日しか猶予がない 。
ありがたいことにまだ一件も入札がないので入札書と言う書類を地方裁判所で貰い自分の購入希望金額を売却基準価額の八十六万円より少し高く書き 、裁判所に提出することにした 。
誰でもなるべく安く買いたいものだろう ……俺だってそうだが 、競売は一発入札方式 。
後から金額の変更などは一切できないそうなので確実性を採ったのだ 。
俺よりも高額だったら諦めるか 、直接交渉しかないかなぁ 。
結果は開札日に指定されている日に裁判所の担当者が俺のように入札に参加した人の前で 、それぞれの入札書を開いて比べ 、一番高い金額を付けた人がお目当ての物件を落札することができるらしい 。
入札には参加料として入札保証金が欲しいそうで 、金額は売却基準価額の十分の二以上らしい 。
今回は八十六万円の十分の二以上だから 、十七万二千円が入札保証金になるわけだ 。
無事落札できれば八十六万円から十七万二千円を引いた金額を支払うことになるそうな 。
落札できなければ全額返してくれるらしいので 、その辺は安心だが 、こちらから入札をキャンセルすると没収されることになるらしい 。
まぁ 、やらないがな 。
入札保証金はなんとかへそくり通帳で間に合った 。
後は落札できるか心配しても仕方がないので 、開札日に指定された日まで地方裁判所には用がない 。
「さぁて 、彰吾達と合流するかな !」
晴れ渡った空を見上げて 、愛車に乗り込むと 、俺は屋敷に向かって公道を走った 。




