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第三十二話『異世界サミット』

翌日 、蛍と美枝子には念のためにエレベーターに乗ってもらい地球の一軒家へと戻ってもらった 。


蛍は不満げだったが 、こちらの世界の住人たちが出した答えによっては危険にさらされかねない 。


美枝子は地球側の一軒家の掃除を買って出てくれた 。


「さぁオキタ殿 、参りますぞ !」


「お 、お手柔らかに……」


そんなわけで現在タマ様の愛竜どらちゃんに騎乗して王城までやって来たわけだが 。


「いいですか ! 私はこの世界全体の事を考えて !」


「いいや ! 貴方のお話が実現できるのであれば救世主様のご助力を頂く事態になるはずがなかったではないか !」


案内された部屋の扉を開けると混沌が待っていた 。


王様や貴族 、商人やら軍人 、市勢の代表者などが目の下に隈を作りながら激論を飛ばしている 。


中にはどう見ても堅気じゃなさそうな人もちらほら 。


よく社会の裏側に住む方を引っ張り出せたなぁと感心せざるを得ない 。


会場には顔や身体の一部に動物の特徴をもつや人達が多く参席していて 、こちらの世界の人種の見本市状態になっている 。


人間に動物の特徴が加わったような種族やロンダさんのように顔が動物のまま人間になったような種族 、悪魔のような角やら尻尾が生えている種族 、まさしく十人十色 、それぞれがこれからこの世界をより良くしようと意見をぶつけ合っているのはいい傾向だ 。


「オキタ様 、タマ様 、こちらのお席へどうぞ」


「あっ 、はい」


女官らしいお嬢さんに王様の側に設えられたテーブル席へと案内されたが 、議論が白熱し過ぎて誰も気がつかない 。


白磁のティーカップに入った紅茶と焼菓子を出されたのでお礼を述べてありがたくいただいた 。


ブラックコーヒー派な俺は 、こちらに来るまで紅茶は甘ったるいペットボトルに入っているのを喉が痛い時などに年に一度飲むか飲まないかだった 。


しかしこちらに来てからと言うもの 、無糖の紅茶も案外悪くない事に最近気が付いた 。


これはしばらくかかるなぁと焼菓子をつまんでいると 、いつの間にか辺りが静まり返っていた 。


「オキタ殿 、いっ 、一体いつの間にいらしていたのじゃ ?」


「ん ? 半刻ほど前でしょうか 。お話が盛り上がっていたようでしたので勝手に楽しませていただきました」


俺の答えにそれまで意見を闘わせていた人達が一斉に蒼くなっている 。


なんか後ろの方から救世主様をお待たせするなんて ! とか怒らせてしまったのでは !? とかなんとか聞こえるが別に怒ってないんだけどなぁ 。


田舎じゃ地区の会合なんか時間通り始まった試しがない 。


「あー 、皆今日は忙しい中お集まりいただきありがとうございます 。 ここにいらっしゃる方々は昨日私がお願い致しました問いに何らかの答えを出された方々でしょう」


俺の一言一言を聞き漏らさないように 、静まり返るなか 、カツカツと必死に書き留めている人がいる 。


後で確認したら公式文書として世界各国に回されるらしい 。


よく見ればそこかしこに水晶が並んでいて 、水晶から半透明な人が生えている 。 


これはあれか 、ホログラムってやつだ 。


国家間で話し合いが必要なものに関してはこのホログラムを活用して連絡が取れるそうで 、本人を魔術でつれてくるよりも 、魔素の消費を低コストで抑えられるらしい 。


また国賓の安全を守る為に警備を増やす等の措置をしなくていいため 、積極的に導入されているようだ 。


それなりに消費魔素を少なくする努力はしていたと言うことだろう 。


お陰でこの場に参席している国から同意を得られるならいいかな 。


もちろん俺の演説に反発やら 、宗教やら好戦的やらの理由で参加していない国も沢山ある 。そちらには後日個人的に我が家の新しい家族であるフェンリルのぽちを連れてご相談にいこう 。


「それでは皆様のご意見を聞かせていただきたいと思います」

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