第二十七話『集団って……』
上空へ舞い上がった俺の視界に写ったのは二ヶ所に詰めかけた人の群れだった 。
「うわぁ~ 、絶景だわ」
なんかで有名な台詞があったな……塵のようだ 、だったか 。
こちらの人は皆個性的なヘアカラーをしているので 、眼下は色の洪水で溢れている 。
「他人事のように言うでないわ ! 元はと言えば誰のせいじゃと !」
「俺じゃありませんよ ?」
「お主じゃ ! とにかく城に降りるから 、なんとか民を鎮めてくれ !」
「え~ !」
「え~ ! じゃないわい !」
垂直に近い角度で城に降ろされたので仕方なく美枝子のいる王様の所へ足を向けた 。
扉の前で緊張した様子で部屋を守る兵士さんに頼んで王様へ繋ぎをとってもらおうと声をかけると 、直ぐに兵士さんが内部へ連絡を入れてくれた 。
「おっ ! オキタ殿 ! おまちしておりました !」
バタバタと室内から足音がしたと思ったら直ぐ様室内へと引きずり込まれた 。
「あっ 、陛下お疲れ様です」
「今まで一体どちらに !? いや 、それよりもオキタ殿 、民を鎮めて下さい ! 突然城へ民が押し掛けて ! とにかく急いでください !」
陛下 、もしかしてこっちが素ですか ? 偉そうな言葉遣いよどこにいったの 。
陛下に促されるままにテラスへ顔を覗かせれば本当に凄い人数が集まっていた 。
空からも確認したが民衆との距離が近い分詰め掛ける気迫は段違いだ 。
「うわぁ 、ちょっと出たくないですね」
「ご自分でこの混乱を引き起こされたんですから責任をとっていただきたい !」
「わかりました 。 その代わり後で抗議は受け付けませんが宜しいですか ?」
「わかった ! わかったから早くやってくれ ! 城門が破られる !」
王様に押し出されるようにテラスへ出ると 、後ろから冷や汗を流しながらも笑顔を貼り付けて王様もテラスへと出てくる 。
「皆のもの ! これより救世主オキタ殿から皆にお話があるそうだ ! 静粛にお言葉を聞くように ! 王家はオキタ殿の出される策を尊重し 、協力を惜しまない !」
おいおい ! そんなんで良いのかよ 。 俺がもし美女ハーレムを作れっていったら作るんかい !
途端に背中にも殺気を感じて振り返ればにこやかなマイワイフが微笑みを浮かべていらっしゃる 。
美枝子様 、冗談です ! 私にはあなた様だけで充分過ぎるほどに幸せです ! お願いですから殺気をしまってくださいぃぃぃ !
「それではオキタ殿お願いいたします !」
張り切った演説お疲れ様です…… 。 はぁ 、仕方がないか 。
蛍の小学校の学年保護者役員を引き受けた時ですらこんな人前で挨拶したこと無いんだけどなぁ 。
「王城にお集まりくださいました国民の皆様 ! こんにちは 。 ただいま国王陛下よりご紹介いただきましたオキタです」
名前を名乗ったらこっ恥ずかしくなるような声援を貰った 。
はたしてこの好意的な声援が帰れコールにならなきゃ良いなぁ 。
まあ 、この世界をどうしたいのかを決めるのは俺じゃない 。
ここにいるひとりひとりが自覚を持たなきゃいくら俺が足掻いたって焼け石に水だ 。
それに俺がこれから推し進めようとしていることは強い反発を生むだろう 。
魔導に頼りきった生活をしている者ほど 、俺がやろうとしていることは気に食わない筈だ 。
……暗殺者が来たらどうしよう……うん 、返り討ちにできるようになにか考えておこうかな 。
とにかくこちらの世界を直ぐに全て魔導依存から脱却させるのは厳しいかも知れないが 、少しずつこの世界に暮らす人々の努力が積み重なれば 、きっとそれは長い年月をかけて大きな山になる……
「皆さん 、この世界を救いたいですか ?」
俺の問いかけに威勢がいい肯定の声があちらこちらから上がった 。
「では……」
この期待に満ちた幾千の瞳が幾つ失望に変わるだろうか……
「現在一般的に使用されている魔導式の使用を世界的に制限していただきたい !」
さぁ 、この世界を終わらせないために断捨離を始めよう 。




