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107.愛は行動によってのみ証明される

 知ってたわ。もちろん知ってたわよ、あの人の気持ちは。森の民に村を襲われる前から、ずっと私のことを見てたんだもの。


 でも、それはいけないこと。双子かもしれない彼と契りを結ぶことは、社会的にも宗教的にも許されない。理性がそれを止めようとする。


 それに、本能もあの人と一緒になることを許そうとはしなかった。近親者だからでしょうね。なんとなく、抵抗感があったの。


 私は悩んだわ。本当に悩んだ。どんなに頭を使っても、自分がどうすればいいか分からなかった。あの人のことは嫌いじゃないし、尊敬もしてる。でも、彼の気持ちに応えることは許されない。それは『禁忌』だって。


 私が答えを渋っている間も、彼は森の民を殺し続けた。騎士として、英雄として戦っていた。


 情けなくなった。彼は戦い続け、私は色恋で悩んでいる。ブランデンブルクのために動く彼、個人的な問題で悩む私。


 苦しかった。いつまでも待たせている彼に対し、申し訳ない気持ちになった。でも、あの人は、悩む私にこういった。


「俺は騎士だ。務めを果たす」


 その一言に、私は救われたの。意味がわからないでしょう?


 彼は自分のことだけに集中した。他のことは何も気にしていない。これが、私に欠けていたものだと感じた。


 私は彼と結婚した。双子かもしれないという疑いは晴れなかった。でも、良かったの。頭だけが取り柄の私にできることは、力を手にすること。彼がその力だった。そして、『禁忌』をもって生まれてくるあなたも、力になると思っていた。


 最低な親よね。自分の未熟な部分を補うために、結婚をするなんて。


 でも、神様は私に試練を与えたの。


 近親者だから当たり前といえば当たり前だけど、私は妊娠しなかった。何回試みてもダメ。ブランデンブルクの領主は男色とか、勃たないとか、世間にそんな噂が流れ始めた。


 情けなかった。私が望んでいたものは手に入らない。出来損ないだと思っていたあの人は戦い続けているのに、私は戦うどころか、妊娠のために栄養価の高い食べ物を食べているだけ。


 嫉妬を感じた。恨んだ。


 ある日、ソーニャに会いに行った。彼女は私の数少ない友人だったから。私の醜い心を知り、それでも励ましてくれる友人。バランタインで言う皇帝かしら。


 ソーニャの家に行ったとき、あの人がソーニャと話しているのが聞こえた。


『シロックがどうやったらゆっくりしてくれるか教えてほしい。子供なんかどうだっていいから、彼女には休んでほしい』


 こっそり覗くと、彼は頭を抱えながらソーニャに相談していたわ。その姿は、森の民と戦う英雄の姿ではなかった。


 私はそのとき初めて、本当に彼のことを好きになった。


 彼は世間の面子なんてものは気にせず、ただ私のことだけを気にかけていた。それを知ったとき、彼が双子かどうかなんて、どうでもよくなっちゃった。こんなに私のために頑張ってくれる人のことを、嫌いにならないはずないもの。


 愛は、行動によって証明されるということを知ったわ。


 私は彼のために、自分の持てるすべてを捧げようと思った。この人の愛に答えようと思った。


 やがてブランデンブルクの治安は安定し、森の民の力もだいぶん弱まった。サラやキャスを迎え入れ、ラムファード家の力は盤石となった。


 そのときにやっと、あなたたちが来てくれたの。


 彼はそのとき初めて泣いた。


 なんだかんだ言って、子供が欲しかったのでしょうね。私もうれしかった。これで“愛を証明できた”、彼の気持ちに応えることができたって、そう思った。


 そして、あなたたちが生まれた。バランタインは『禁忌の力』を持って。皇帝と同じ、最強の力と業をあなたに背負わせた。


 ごめんなさい。私のエゴのせいで、あなたに辛い運命を背負わせた。


 もう、頑張らなくていい。


 私やコルネオーネ、マインツ選帝侯やファルツ選帝侯は、古い人間。力を求める時代はもう終わり。


 私たちが、力を求める時代を終わらせる。


 あとは──母親として何もしてあげられなかったから、死ぬときくらいは、かっこつけたいの

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