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泡沫に神は微睡む  作者: 安田 のら
三章 巡礼双逢篇
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5話 媛は朱金に舞いて、君よ因果を断て3

 嘗ての奈切(なきり)領は、多くの大鬼(オニ)が闊歩する化外の土地であったと云う。

 南葉根山脈から続く龍脈の合流点であると同時に、高天原(たかまがはら)でも有数の瘴気溜まりを保有する領地。


 この地に住まう民たちは、大鬼(オニ)の襲撃に抗いながら毎日を過ごしてきた。

 剣を鍛え、技を磨き。その総ては、せめて悪鬼どもに一太刀を刻まんがため。


 悪鬼憎しと決意する。壮絶なまでの闘争(歴史)が神器へと鍛造されたのは、もしかするならば当然の帰結だったのかもしれない。


 ただ(・・)人の覚悟そのものを削り出したかのように、それは変哲も無い刀の見た目をしていた。

 刀身は2尺辺りか、鋭さを感じさせない地鉄の武骨な輝きが周囲の灯明を鈍く照り返す。


 迅は軽やかに刀を(ひるがえ)し、魂に刻まれた一言だけを呼びかけた。


百鬼丸(なきりまる)


 それだけで剛風が虚空を断ち割り、蒸気の(とばり)が一気に開ける。

 疾風が奈切迅(なきりじん)の身体を捲いて、誘われるように前方へと足を踏み出した。


 滑るような歩法で大鬼(オニ)の懐に潜り込み、がら空きの土手っ腹に遠慮ない一撃を放つ。


 ――()ォンッ。


 (およ)そ、人間が生ものを殴打したとも思えない轟音が周囲を圧倒し、

 ――腹を波打ち立たせる衝撃に耐えきれず、大鬼(オニ)が踏鞴を踏んだ。


 瘴気で強化された大鬼(オニ)の肌は、生半可な鋼鉄よりも(しな)やかで硬い。

 その上、呪術や精霊力に尋常ではない抵抗があるため、この皮膚を斬撃は勿論の事、精霊技(せいれいぎ)でも食い破るのは至難の業だ。

 未熟とはいえ八家直系である咲や諒太が放つ精霊技(せいれいぎ)を、何の苦も無く凌ぎ切ったのは伊達ではない。


 そんな強靭の代表格でもある大鬼(オニ)を数歩、後退させて、不満そうに迅は口元を()げた。


「ち、生成り(ザコ)が2匹かよ。

 ……舐められたモンだぜ、なぁ」


 大鬼(オニ)は、生じてから過ごした時間に従ってその強靭さを増していく。この鬼は、殴ってから返る手応えからして五年経つか立たないか。


 それでも充分に手強い存在なのだが、今回ばかりは相手が悪かった。


 大鬼(オニ)が大きく振りかぶり、拳を振り下ろす。

 速度は然程に無く、しかし、握り締められた巨大な拳は空を圧し潰しながら迅へと迫る。


 対する迅は、拳に向けて刀を盾と構えてみせた。


 ――激突。

 轟音と共に飛沫(しぶ)く雨粒が、刹那、周囲を白く染める。

 大鬼(オニ)の未だ稚拙な知性が、襤褸(ぼろ)雑巾のように吹き飛ぶ迅を幻視する。……が、視界が晴れた後の光景は大鬼(オニ)予想(期待)を容易く裏切った。


 限り限りと刃鳴らしながら、なんら梃子摺(てこず)る様子もなく刀身で拳を凌ぎ切る迅の姿。

 理解の追い付かない現象に、大鬼(オニ)が恐怖で後退った。


 僅かに開く距離、()かさずに迅の一歩が距離を詰める

 悠然とした足取りに、百鬼丸(なきりまる)が意思を持つかの如く限り限りと()いた。


()くな、百鬼丸(なきりまる)

 小粒とはいえ久方振りの鬼だ。直ぐに喰わせてやる」


 ―――()()ッ!!??


 強大な化生であるはずの大鬼(オニ)を前に、食材(エサ)扱い。

 見え透いた安い挑発に、大鬼(オニ)の稚拙な理性が真っ赤に染まる。


 ――と、

 獲物と見据えられた大鬼(オニ)の視界に、迅の後ろで電柱を振り被るもう一体の同胞の姿が映った。


 剛腕の(ねじ)り出す暴力が、火花の散る電線を空中で引き摺りながら電柱を小枝かのごとく軽々と振り下ろす。

 仮令(たとえ)、衛士であろうが回避を選択する質量が、高さと勢いを喰って迅へと迫った。


 しかし、迅は前方の大鬼(オニ)に見据えた視線を揺らがせることなく、後方から迫る暴力に向けて無造作に百鬼丸(なきりまる)を掲げるだけ。


 大抵のものを(ねじ)じり潰す質量が人間の腕力に支えられただけの鋼と噛み合い、余剰の衝撃が降り頻る雨粒を刹那の間だけ中空に留めた。


 巻き上がる衝撃に生意気な人間が肉塊と化した光景を期待(・・)する。

 ……だが、衝撃が晴れた後に立っていたのは、電柱と鋼を拮抗させて微動だを見せていない迅の姿であった。


「終わりか、小粒。手前(テメ)ェは後回しだ、大人しく順番を待っておけ」


 宣言も短く、百鬼丸(なきりまる)が振り抜かれる。

 切っ先が虚空に刻む軌跡は、鈍い輝きとは裏腹に小さく鋭く。

 肉打つ音とともに電柱は砕け、鬼は弾かれるように後方へと吹き飛ばされた。


 ―――()()アッ!!?


 轟音が響き、大鬼(オニ)高層建築(ビルヂング)の煉瓦壁へと頭から突っ込む。

 強大な化生であるはずの大鬼(オニ)を片手間に(あしら)い、迅は猛然ともう片方の大鬼(オニ)百鬼丸(なきりまる)を振り翳した。


 陣楼院流(じんろういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、初伝、――鎌鼬(かまいたち)

 尖鋭(するど)い斬撃が宙を翔ける。大鬼(オニ)に回避の余裕を赦さないまま、その体躯へと喰い込み、

 ――後方へと奔り抜けた。


 ―――餓ッ!?


 肩から腰へ、大鬼(オニ)の肌に大きな斬閃が刻まれる。

 かつて経験したことの無い痛苦に、鬼の口から戸(まど)う悲鳴が漏れた。


 生成りと云えど、その鬼も人里を襲ったことがある。

 防人と交戦したことも当然に。


 その際に精霊技(せいれいぎ)を幾度となく受けたが、己の身体はほぼ無傷でその全てを(ねじ)じり伏せてきたのだ。

 だからこそ、精霊技(せいれいぎ)ごときで裂傷を負っている、この現実に理解が及ばなかった。


 奈切(なきり)の血統に宿る神器、百鬼丸(なきりまる)

 その権能は単純にして、明快。

 相対する鬼と殴り合えるまで、己の所有者を強化するだけである。


 ――その鬼より、強靭(つよ)くあれ。

 ――その鬼より、堅牢(かた)くあれ。


 その総ては、鬼を撃ち滅ぼさんがため。

 鬼種に限定されたその権能は、だからこそ大鬼(オニ)を相手にして敗北も有り得ない。


 渦巻く暴風を刀身に宿し、迅は攻め足から大きく鬼の懐に滑り込んだ。

 陣楼院流(じんろういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)連技(つらねわざ)――。


白襲(しらがさね)


 ―――()()ァァアッッッ!!


 幾重にも畳み掛けるような迅の斬撃に、鬼の肌に無数の裂傷が生まれた。

 軽くはあっても無視できない痛苦に混乱したのか、明らかな劣勢のまま鬼が前へと足を踏み出す。


「ち!」


 舌打ち一つを残して、攻め足から退き足へと素早く切り替えた。


 鬼が振り下ろす拳を、(ひるがえ)る刀身が受けて流す。追い縋る拳の連なりを、強化した膂力が難なく叩き落す。

 やがて猛攻が途切れ、その隙に攻め足を踏み込もうと――、

「!」


 乱杭歯の隙間から嚇怒を吐き、大鬼(オニ)の体躯に瘴気が這い回った。

 ただでさえ巨きな鬼の体躯が、不自然なまでに一層と膨れ上がる。


 みちり、みち。軋む音を立てて、瞬く間に銅色(あかがね)の肌が裂傷を覆い隠していく。

 確かに大鬼(オニ)の回復力は図抜けているが、ここまで急速に回復すると異常でしかない。


 初めて見る現象に、迅の口が確信を吐いた。


「ただの生成りかと思いきや、何か手を加えられているな?

 ――まぁ、いい。頸を落としてやれば、生きていられる道理も無いだろうさ」


 ―――()()ァァアッッッ!!


 その呟きに大鬼(オニ)の雄叫びが交差。

 両者は示し合せることもなく、互いに地を蹴って距離を詰めた。


 ――――――――――――――――――――


 精霊器の切っ先を跳ね上げて、晶は神父(ぱどれ)の胴体を狙う。

 万朶(ばんだ)の面をしたままのその男は、手にした刀でその斬撃に合わせつつ哄笑を浴びせた。


()、卑。もどかしいですなぁ。

 あと一歩だけ踏み込めば、身共に刃が届くというのに」


「ちぃっ」


 相手の挑発に玩弄されながらも、晶は斬撃を重ねていく。

 攻勢を保っているのは晶の方。であるにも関わらず、神父(ぱどれ)の歩法が晶の放つ刃の先を(まど)わせていた。

 滑るような足捌きが、胴体の真芯に刃を合わせることを赦さないのだ。


 ――轟


 後背から剛風が押し寄せ、僅かに神父(ぱどれ)との間合いが開く。


「しまっ、 、 、 、 !!」


 ぬらり(・・・)とした黒い体躯が、強引に間合いへと割って入る。

 蜈蚣の乱入に間合いを引き離されて、晶は神父(ぱどれ)を見失った。


 先刻から、同じ調子が繰り返されている。

 こちらが攻め込めば間合いは容易く詰められるが、僅かにでも間合いが開けば鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の乱入で初めからやり直しだ。

 偶然ではない。間違いなく戦術を立てる知能が、この鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)には備わっている。


 苛立ち混じりに、平薙ぎの斬撃を放つ。

 精霊力を籠めたその斬閃は、鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の甲殻に炎の軌跡を刻む、が。

 ――無傷。


 ―――戲、疑?


 然程の痛苦も感じなかったのか、人がましく首を傾げてから曳航肢を振り抜く。

 鞭と(しな)る肢に弾かれて、晶はさらに後退を余儀なくされた。


「くそがっ!!」


「どうかされましたかなぁ?

 嵩がそれだけの火力、万朶(ばんだ)どのには傷一つ付けられませんぞ?」


「黙れっ」


 蜈蚣の向こうから響く嘲弄に叫びを返し、

 ――上段からの一撃を放つ。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、初伝――、


燕牙(えんが)!」


 ―――戲ィ!?


 炎の斬撃が小規模の爆発を生んで、蜈蚣の巨躯が僅かに浮く。

 それが癇に障ったか、毒々しい黄色(おうしょく)をした蜈蚣の多肢が晶に伸びた。


 ―――噛挫(ガザ)餓刺(ガザ)駕裂(ガザ)ッッ!!


「!!」


 幾重にも多肢が追い縋り、幾つか弾くも堪らず晶も回避を選ぶ。

 諦める事を知らない黄色の槍が晶を追い、その度に路面が肢の形に穿たれた。


「……変ですなぁ。

 貴殿の火力は、その程度では御座(ござ)いませんでしょう。何を遠慮されているのですか?

 ――ああ、」

 口にしてから漸く気付いたと云わんばかりに、神父(ぱどれ)の口調に侮蔑が混じる。

「真逆、民への被害を恐れているとは。

 ――宜しい、これでも神職に在った身。貴殿の憂い、晴らしてご覧に進ぜよう」


「止め――!!」


 神父(ぱどれ)の嘲弄に従い、鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の巨躯が蠢いた。

 晶が制止する間もなく、縦横無尽に高層建築(ビルヂング)の壁面を走り回るようにして耕す。

 動けずに隠れていたのだろうか、建物のそこかしこから絶叫が上がった。


手前(テメ)ェッッ!!」


 怒気が晶を突き動かし、精霊力が呼応して刀身に炎が捲く。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、中伝――、


隼駆(はやぶさが)け!!」


 水蒸気で揺れる地面を全力で踏み込み、高層建築(ビルヂング)の壁面を這う鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)へと跳躍。

 砕ける窓硝子と煉瓦材を越え、中空を泳ぐ曳航肢を掴んだ。


 引き摺るだけの肢を引いて、蜈蚣の胴体へと迫る。

 壁面を駆って、更に加速。


 滞空する刹那、刀身の間合いが鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の尾を捉えた。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)連技(つらねわざ)、――時雨輪鼓(しぐれりゅうご)


 迷う余裕は無かった。晶は腰から巻き込み、炎を捲き上げる斬撃を(ねじ)じり落とす。

 崩れる体勢も構わずに放たれたそれは、僅かであれど確かに蜈蚣の胴体を斬り裂いた。


 ―――戲ィ病ャアアア!


 魂消る悲鳴が鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の口腔から迸り、暴れる巨躯が壁から地面へと落ちる。

 地響きを立てて大路に落ちたそれは、まるで人間かのように哭きながら地面で苦痛に身を(よじ)った。


 僅かに遅れて舗装路へと着地した晶は、油断なく彼我の距離を測る。

 未だ、朱金の輝きを宿す火気が燻る刀身を中段平突きに構えて、油断なく呼吸(いき)を整えた。

 狙うは最短、放つは最速の精霊技(せいれいぎ)

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、初伝――、


雲雀突(ひばりづ)き!!」


 灼熱を宿した刺突を、一刀一足の間合いから全力を以って叩き込んだ。


 ―――戲、戯ィアアアアッ!?


 鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)の脇腹が深く抉れ、絶叫を上げた化生が口腔から天を仰ぐ。

 痛みから正気を取り戻したか、そのまま落ちるようにして晶へと牙を剥いた。

 対する晶は刀身を引いて、八相構えから垂直に刀を斬り上げた。


「疾ィッ!!」


 朱金の尾を曳く斬撃が、落ちる蜈蚣と真っ向から迎え撃つ。

 鈍い音が響き、再度、蜈蚣の牙が天を仰いだ。


「――くそ。やはり、頭だけは硬いか」


「漸くお気づきになりましたか。

 万朶(ばんだ)殿を護るは神器なれば、不壊(ふえ)の特性を越えぬ限り貴殿に勝利は無しと心得ていただきたい」


「化生が神器を行使するなんざ、聞いた事もないぞ!」


 打って返るその返答に、晶は舌打ちをした。

 悔し紛れの叫びに、神父(ぱどれ)は得たりと口元を歪める。


「いやいや、()どのはご存じのはず。

 えぇ、そうですとも。つい先だって乳海を導く棘(パーリジャータ)を引き抜かれたのは、他ならぬ貴殿で御座(ござ)いましょう?」


 誇らしげに告げられたその言葉に、晶は刹那、動くことを忘れた。

 源南寺(げんなじ)の戦闘が記憶に蘇り、怒気が咽喉(のど)()く。


「あれも、貴様かぁっ!!」


「―――卑、非ィ! しかしながら、解せぬ」

 ぬうるり(・・・・)とした歩法で、神父(ぱどれ)は晶の間合いを侵すように滑り込んできた。

 太刀筋と真芯が合わない。然程に速度も無いが、太刀筋を蝕むようなその斬撃を晶は必死に(しのぎ)で受ける。

「何故、神器を行使されぬ? 顕神降(あらがみお)ろしと併せて行使すれば、身共に勝利することも容易かろうに」


「――!」


「左様。身共はそれなりに物知りでしてな。

 晶どのが神無の御坐(・・・・・)であることも、承知しておりますれば」


 神器を宿している事のみならず、神無(かんな)御坐(みくら)という知識すらも知っている。

 そう嘲笑う神父(ぱどれ)の声に押されて、考える間も持たずに晶は懐から火撃符を引き抜いた。


 直後、轟音と共に生まれた火焔が、彼我の視界を塗り潰す。


 流石に視界を奪われたくは無かったか、神父(ぱどれ)が地を蹴って後退を図った。

 僅かに(ひるがえ)神父(ぱどれ)の長衣。燻る紅蓮を突き破り、晶の掌がその端を掴む。


「―――卑!?」「――逃すかぁっ!」


 儚げに明滅する木行の衣が晶を護り切り、刹那で虚空へと爆ぜて消えた。

 手持ちの木撃符を総て費やした刹那の五劫(ごこう)七竈(ななかまど)。成し得た強引な突破は、晶へと軍配を捧げてみせた。


 晶が振り翳した太刀(精霊器)は雨に濡れて、一層に朱金の輝きを刃に宿す。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、中伝――、啄木鳥徹(きつつきとお)し。

 南天の神気が猛り、爆炎を纏った一撃が神父(ぱどれ)の額に吸い込まれた。


 ――パキ。


「!!???」


 脆く呆気無い音と僅かに手応えが晶の手元に返る。晶の視線の向こう。木彫りの翁面に細く、それでも確かな一筋の(ひび)が生まれていた。


 神器が破損する。その事実は、当の晶へも驚嘆と混乱を与えた。


「……流石に、二度も火行の神気で焙られれば、九法宝典も無視は(・・・)できんか。

 とは云え、お見事で御座(ござ)いますなぁ!」


 だが、その事実を別にしても、威力は確かであったのだろう。

 面が破損しても、辛うじて精霊技(せいれいぎ)を防いだ神父(ぱどれ)が、賞賛を浮かべながら後退を数歩。


 酷く目立つ大路の中央で蹌踉(よろ)け、神父(ぱどれ)は何とかそこで踏み止まった。

 ――そこは丁度、晶が狙ったど真ん中。


嗣穂(・・)!!」「疾イィィィッッ!!」


 金色の輝きが雨天の闇を染めて、蒼炎の眼光が神父(ぱどれ)を射抜く。

 虚空に身体を躍らせた嗣穂(つぐほ)が、獲物を狙う(おおとり)の勢いを得て神父(ぱどれ)の背中を狙った。

TIPS:土地神の神器について

生まれながらの神柱と違い、精霊が昇華して神柱の頂に上った存在が土地神である。

神柱としての象を持たないため、本来は神器を鍛造することができない。しかし、土地に焼き付いた記憶、歴史とも云うべきものを鍛造することで、極稀に神器を得る土地神も存在する。


百鬼丸はその内の一つ。

鬼種に限定されているものの、鬼種であれば単騎で大鬼と殴り合えるという権能を有している。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何度か電柱出てきてるけど大正ぐらいの電柱って木造でしょ 電話出てこないのに電柱だけあるのも含めてその辺違和感があるわ
[気になる点] 晶くん、髪と眼の色が変化してるのによく嗣穂様って分かったね。神気とかを察知したとかかな。それとも服装かな。 [一言] 意外なタイミングでの共同作業、息も合っててなかなか。ただ前哨戦っぽ…
[良い点] 初めての共同作業 [気になる点] 全く日本と同じとは思わないけど、北は東北、北陸。南は北九州、南九州。東は中部、関東。西は中国、四国なんかな このナマズ400年前にも悪さしてる気がする …
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