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泡沫に神は微睡む  作者: 安田 のら
三章 巡礼双逢篇
75/222

1話 己に問い、されど日々は巡る1

今章より、穢レの呼称について変更を入れさせていただきます。

読んでいただいた皆様を混乱させてしまいます事、前書きにてお詫び申し上げます。


二章まで、穢レの名称として妖魔を入れていましたが、此方を化生(けしょう)と変更させていただきます。


手前勝手で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

 新月も近く暗さが一層に際立つ夜闇の中、妙覚山の麓に広がる平原の一角では、山から下りてきた穢獣(けもの)と守備隊の(せめ)ぎ合いが今日も繰り広げられていた。


 ――しくじった!!


 一歩。晶が大きく踏み出した瞬間に脳裏を占めたのは、単純なその一言であった。

 残炎を纏いながら全力で急制動を掛けるが、既に生まれてしまった精霊技(せいれいぎ)の効力を止める事は難しい。


 結果として晶は、鹿と(いぬ)が入り混じる穢獣(けもの)の群れの只中へと飛び込む格好になった。


 ―――(キョ)(キョ)ッッ!!


「く、ぅおっ!!」


 (ケガ)レに堕ちた鹿の咆哮が耳を(つんざ)き、瘴気を纏った(ねじ)れ角が()け反った晶の視界擦れ擦れを過ぎって消える。


 ―――(キョ)ッ!


 ――悲鳴を上げる余裕も無い。

 追撃とばかりに振り下ろされた前肢が、晶の頭があった空間を薙ぎ払った。


「、、、のやろっ!!」


 (すん)で追撃を躱した晶が、腰に佩いた精霊器(・・・)を抜き放つ。

 朱金の精霊光を纏った白刃(・・)が三日月に闇を切裂き、鹿の頸と胴体を断ち切った。


 ―――(キョ)


 瘴気に濁った凶眼(マガツメ)と晶の視線が交わり、その一方が儚く生命を散らす。

 鹿との(せめ)ぎ合いを制した晶は、その勝利に心を残さず精霊器の太刀(精霊器)を下段に構えた。


 ――此処(ここ)は未だ、穢獣(けもの)が囲む群れ()最中(さなか)


 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、初伝――。


「――鳩衝(きゅうしょう)


 紅蓮を伴った衝撃が晶を中心として吹き荒れた。

 下から上へ。四肢で大地を踏み締めている以上、基本的に穢獣(けもの)は下から噴き上げる衝撃に抗う術を持ち得ない。

 殺傷力こそ低いものの広範囲に影響を及ぼす鳩衝(きゅうしょう)の一撃に、晶を取り囲んでいた鹿や(いぬ)が宙を舞った。


 呼吸(いき)を継ぐ余裕も惜しみ、太刀(精霊器)を上段に構え直す。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)連技(つらねわざ)――。


「緋がさ――!」


「晶!

 向こうが抜かれたぁぁあっ!!」


 一纏めに灼き祓おうと炎を捲いた太刀(精霊器)を一層に高く振り上げた刹那、勘助の叫びに動きを停めた。

 ――抜かれた。つまり、民家が建ち並ぶ区画へと(ケガ)レの侵入を赦したという事。


「状況!」


緊急(短・)(長短・)一つ(短短)、被害有り!」


「、 、 、っっっ!!」


 連なる呼び笛が報せる状況は、此処(ここ)を灼き尽くすだけの猶予すら無い。

 素早く周囲を確認。晶を取り囲んでいた穢獣(けもの)の大半は、鳩衝(きゅうしょう)の一撃に立ち上がるのが精一杯なのが幸いか。


勘助(カン)っ。

 此処(ここ)は任せた、抑えろぉっ!!」


「応ともよぉっ。気張れや、練兵(ガキ)どもぉっ!」


「「「うおおぉぉぉっっ!!」」」


 勘助の号声に中てられたか、気勢を上げた練兵(少年)たちが槍衾(やりぶすま)を作って穢獣(けもの)吶喊(とっかん)を始める。

 その隙間を擦り抜けて、晶は住宅地に足を向けた。


 疾走りながら、勘助に向けて叫ぶ。


「槍を寄越せ!!」


「――ほらよっ!」


 晶の要請を予想していたか、応じる声と共に予備の槍が投げ渡される。

 掴み取った槍を構えて、晶は渦巻く精霊力を両脚へと集中させた。

 奇鳳院流(くほういんりゅう)精霊技(せいれいぎ)、中伝――。


隼駆(はやぶさが)け!!」


 捲き上がる炎を残し、地を翔ける隼の速さで晶が更に加速。

 時を刻むほどの速度が残像すらも置き去りにして、晶はさらに(さき)へと地を蹴る。


 前方から後方へと視界が流れ、見る間に平原と接している民家の板塀が迫った。


 その民家のさらに向こう側、瓦屋根越しに轟音と炎が立ち昇る。

 火撃符だろうか。本来、住宅街に()いて使用は厳禁とされているが、追い詰められた人間に手段を選ぶ余裕は存在しない。


 ―――噛挫(ガザ)餓刺(ガザ)駕裂(ガザ)()()()


 瘴気に塗れた噪音が耳を蝕んだ。ぬらり(・・・)と艶のある黒胴に毒々しい黄色(おうしょく)の多肢がうねり暴れ、体皮を灼く呪符の炎を吹き飛ばす。


「うあぁぁぁあぁぁっ!」


 魂消る悲鳴が、誰かの危機を晶に報せた。


 民家を回り込む余裕も無い。覚悟を決めて、隼駆(はやぶさが)けに回していた精霊力を総て蕩尽(とうじん)して刹那の加速。

 爆発的に膨れ上がる速度に任せて跳び上がり、板塀の上を更に蹴った。


 糸ほどに儚い繊月(せんげつ)の下、民家を跳び越した晶の身体が衛士の羽織と共にくるりと舞い踊る。

 巡る視界の中。身の丈が2丈(約6メートル)に及ぶ大百足(おおむかで)が、練兵へと迫っている様子が飛び込んだ。


 間一髪、間に合った! 重力に絡め取られながらも気息を整え、晶は手にした槍を下に向けた




 後退る練兵の生命は樫材の槍が辛うじて繋いでいるものの、吹き付けられる毒と瘴気に蝕まれて見る間に腐り落ちた。


「うあ、うわぁぁぁあっ!」


 掌の中で崩れ落ちた槍の残骸を投げつける。

 無論、効果が有るはずもなく、迫る大百足を刺激するだけに終わったが。


 ―――疑散(ギチ)ッ!


 それでも多少は(いら)立ったのか、赤黒い百足の頭部が上下に大きく割れた。


 毒液の糸を引きながら乱杭に連なる牙が、練兵へと明確な死を見せつける。

 蟲にあるまじき牙と舌が殺意に塗れた食欲のままに人間を喰らおうとした刹那、その脳天を嚆矢(こうし)(やじり)と化した槍が貫き止めた。


 ―――()ッ!!


「――逃げろ!!」


 槍と共に落ちてきた晶が、大百足の頭部を槍と足で板塀に縫い付け叫ぶ。


 情けない悲鳴を上げながら視界から消える練兵を意識から外し、

 誰の視線も無くなった街路の真ん中で、改めて晶は大百足を()めつけた。


 蟲の穢獣(けもの)は総じて生命力に図抜けている。目の前のこれ(・・)が大百足かどうかは疑わしいが、生命力に関しては見た目通りを誇っているはずだ。

 つまり頭部を貫かれた程度では、掠り傷程度の損傷である可能性が高い。


 ―――噛挫(ガザ)餓刺(ガザ)ッッ。


 晶が踏みつける足の下で百足の頭部に亀裂が走り、その奥から瘴気に染まった凶眼(マガツメ)()り出てきた。


 ――合わせて四つ。

 それは蟲に有るはずの無い、獣の眼球であった。


 ―――疑ヒッッ。


 膨れ上がる瘴気濃度に、精霊力を宿していない槍が蝕まれてゆく。

 ぐずり。掌の中で熔け崩れる槍の柄を放り捨てて、晶は確信を吐き捨てた。


大百足(おおむかで)、じゃねぇな手前(テメ)ェ!」


 ―――戲病(ギャ)ハハハハハッッ!!


 僅かに自由を取り戻した蟲の頭部が、正者の魂を削ろうと(おぞ)ましくも嗤う。

 それは唾棄すべきも、確かに知性を窺わせる嗤い声であった。


 己の頭部を押さえつける晶は目障りであるのか、嗤いながらも百足は抵抗に暴れる。

 瘴気を纏った杭の如き多肢が杉材の板塀を破片と散らし、くねる尾部が鞭と(しな)って晶に迫った。


 普通の防人ならば、真面(まとも)に受けると百足の肢に乱裂かれて挽き肉になり果てる。

 ……大百足にとっての誤算は、相手が防人ではなく晶だったという単純な事実であろう。


 大神柱の寵愛を一身に受け、(こいねが)う侭に莫大な権能を揮う事を赦されたただ(・・)人。

 神代と現代を繋ぐ奇跡の結実、――神無(かんな)御坐(みくら)


 虚空に手を差し伸べる。掴むは己の裡、魂魄に納刀(おさ)められた二振りの片方。


 「絢爛(けんらん)たれ、」


 ――掴んだ剣で、くねり迫る尾を迎え撃つ。

 星灯りにしか頼るもののない暗闇を、不可視の太刀(神器)は輝きを宿さないままに疾走った。


 火行の大神柱より賜ったその太刀(神器)は、灼熱の輝きは無くとも不壊(ふえ)にして鋭利(えいり)

 現神降(あらがみお)ろしで強化された身体能力と相まったその斬撃は、眼前まで迫った蟲の尾を容易く胴体から斬り飛ばした。


 ―――戲ィィィイイッッ


 痛苦からか憎悪からか、大百足の口から魂消る咆哮が迸る。

 何処か哀愁すら覚えるその絶叫に構うことなく、晶は夜天高くに己が神器を掲げて見せた。


「――寂炎雅燿(じゃくえんがよう)!」


 願うは、断罪折伏の神威を宿した一握(いちあく)の炎。

 晶の呼び声に朱金(あけこがね)の神気が応え、刹那の内に、絢爛(けんらん)なる輝きを宿した太刀が紡がれる。


 一瞬の停滞(迷い)も見せることなく振り下ろされた朱金の輝きは、大百足の頭部から残り全てを半身に卸して見せた。


 ―――疑! ……ッ! …………!!


 夜闇を刻む浄滅の斬撃は、有無も云わさず百足の魂魄を消し飛ばす。

 ――次いで、太刀の軌跡に沿って炎と衝撃が吹き荒れ、周囲の板塀を大きく揺らした。


「……………………っはあぁぁぁ~」


 安堵から呼気を吐く晶の掌の中で、役目を終えた寂炎雅燿(じゃくえんがよう)が虚空に散り消える。

 静寂を取り戻した暗闇の中、周囲の瘴気が急激に薄れていく様子に、晶は戦闘の終了を悟った。




 練兵たちが穢獣(けもの)の死体を浄化して回る中、難しい表情を浮かべた阿僧祇(あそうぎ)を前にして、晶は沈痛な面持ちで項垂れていた。


「…………被害1名、か。

 本来なら上々の結果と云ってやりたいところだが、そう云う問題じゃないことは解っているな?」


「……押忍。

 初動で、群れに突っ込んでしまいました」


 血が滲まんほどに下唇を噛み締める晶の表情に、一応は理解をしているかと厳次は頷いた。


 大百足が勢子班を喰い破って民家の灯りに向かったことが犠牲の発端であるし、その場に居合わせなかった晶に非が無いことはこの場にいる全員が理解している。


 だから、晶の失策はその他に有った。


「群れのど真ん中に飛び込むなと、何度も教えたはずだ。

 四方を敵に囲まれたら取れる対応手段は激減するし、抜けるのも苦労しただろう。

 鳩衝(きゅうしょう)は悪くない判断だが、下手をすれば群れが散って楯班を抜いてしまう危険も増える」


「…………………………はい」


 攻防、遠近、多勢無勢。精霊器との相性の良さに任せた精霊技(せいれいぎ)の多彩さが、奇鳳院流(くほういんりゅう)の強みだ。

 しかし、極端に選択肢を削られてしまうと、せっかくの強みが消えてしまう。


「お前は精霊力との相性が莫迦みたいに高い。だからこそ、今回の問題が起きた」


 ……それこそが、晶が直面している最大の問題だった。


 どんな精霊技(せいれいぎ)であろうと、晶が行使すれば過剰なほどに効力を発揮する。

 本来であれば長所と云えるのだが、制御を越えるほどに突出し過ぎた火力は、集団戦闘となると欠点にしかならない。


 要は着いていけていないのだ。晶も含めた、誰も彼もが。


「お前が放つ火力は、桁違いに高い。だからこそ今回は問題なく済んだが。

 ――何時までも、上手く行けるとは思うな」


「…………………………押忍」


 厳次(げんじ)からの言葉は短く、然程に詰められることなく話は終わる。

 晶は悄然と肩を落として、後始末に加わるべく向こうへと去っていった。




「――少し、云い過ぎでは?」


「……仕方が無いだろう。

 今のうちに釘を刺しておかないと、後で必ず後悔する」


 晶との話が終わったと見た新倉(にいくら)が去っていく晶を見ながら弁護するが、厳次(げんじ)から返る口調に迷う響きは見られない。


 ――晶に付き合うものたちの生死が掛かってくるのだ。最悪、手加減だけでも教えないと、守備隊との(・・)行動すら、侭ならなくなる。


 その先に有るのは、敵陣に単騎で放り込むしか使い道のない、体の良い英雄代わり(爆弾扱い)だ。


 それこそ、誰もが望んでいない未来だろう。

 晶も、その上(・・・)も。


 充分にその意図を理解していた新倉(にいくら)も、それ以上、抗弁の口を持たないまま肩を竦めるに留めた。


「それよりも、これはどういう事でしょうか。

 大百足(おおむかで)ですよね? これ(・・)……」


 話題を変えた二人の視線が向かう先には、両断された巨大な百足の死体。

 じぶじぶと音を立てて、未だ瘴気を燻らせるその死体は、新倉(にいくら)の知る大百足よりも数倍は巨きい。


 確かに大百足は、元となった百足よりも巨大になる傾向はある。

 しかしこれまで確認されたものは最大でも、6尺6寸(約2メートル)を超える事は無かったはずだ。


「そうだ。……ああ、これを見るのは初めてか?

 平地に下りてくることは滅多に無いからな、無理もないが。

 ――これが鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)だ」


 見た目が似通っているから混同されがちではあるが、中身は別物だ。そう云い置いて、厳次(げんじ)は清め水を死体に振り掛けた。


 青白い浄化の炎が死体を包み、外皮と肉を焼き上げる。

 耐えがたいほどの悪臭が一頻(ひとしき)り。炎が収まった後に残っていたのは、蟲に有るはずの無い巨大な骨格であった。


穢獣(けもの)ではない?」


「化生に分類されるな。

 岩山や洞窟を特に好む、縄張りに踏み込まない限り襲ってこない臆病な奴だ。

 ……手出しした分だけ無駄に痛い目を見るから、故郷じゃ無視するのが定石だったが」


 本能しかない穢獣(けもの)と違い、化生に分類されるものは知性の側面がより際立つようになる。


 これまでは上手く棲み分けが出来ていたが、今回の前例が生まれたことで戦闘教義の見直しをしなければならない可能性すら生まれてきた。


「単純に人肉の味を覚えたとかは?」


「だけ、なら良かったんだがな。此奴が洞窟を好む理由は水気の瘴気溜まりが多いからだ。

 ……俺の知る限りで、南葉根山脈には鎧蜈蚣(ヨロイムカデ)を養えるほどの水気の瘴気溜まりは無かったはずだ」


 南葉根山脈に通る龍脈は、遠く壁樹洲(へきじゅしゅう)に続くものしかない。

 水生木。五行運行上に()いて木気は水気を吸い上げるため、水気が(ケガ)れて溜まるほどの余地は無い。

 ――つまり、この蜈蚣は南葉根山脈ではない何処かからやってきた可能性があるという事だ。


「これは、人為が絡んでいると?」


何か(・・)、が絡んでいる可能性は高いな。

 ――くそ。明日、本部へと出向くか。総隊長どのと鉢合わせしたくないが」


 気鬱な予定が立ったことで、厳次(げんじ)は思わず愚痴を零した。


 奇鳳院(くほういん)に楯突く気概も無いが晶の処分を諦めきれない万朶(ばんだ)は、矛先を厳次(げんじ)へと向ける事に最近は(もっぱ)らの御執心である。

 顔を合わせれば都度の嫌味に、流石の厳次(げんじ)もげんなりとしていた。


「ご愁傷様です。

 それにしても、晶くんはこれで化生討滅の経験が2匹めですか。

 もう、中伝を認定しても良いのではないですか」


「実力だけならな。

 ……未だ、心構えが及んでいない。あのままじゃあ危なっかしくて、一人で面倒を見させられんよ」


 数回見れば、精霊技(せいれいぎ)をものにできるほどの勘の良さ。尽きないと錯覚しそうなほど潤沢な精霊力に、戦闘に()ける胆の強さ。

 そして何よりも、段階を幾つか抜いているとしか思えない成長の早さ。


 中伝に認定することに関して異論は無いが、どんな才児であっても聴いたことのないほどの成長ぶりは、晶すらも置き去りにしてしまっていた。


 今の今まで増上慢にならず、素直に成長していることが異常に思えるほどだ。

 その現実こそが、厳次(げんじ)にとって危ういものと映っていた。


 侭ならんなぁ。零す分だけ生まれる愚痴に、思わず天を仰ぐ。


 昏い空の中に浮かぶ繊月(せんげつ)(おぼろ)なだけで、それでも我関せずの高さを保っていた。



TIPS:穢レの違いについて。

前述にも入れましたが、今章より穢レの名称について変更を入れさせていただきます。

総称・(ケガ)レ。

 上位の穢レ、名称、怪異(かいい)

 土地、瘴気溜まりそのものに焼き付いた過去の記憶。

 倒しても復活するなど厄介で強大だが、記憶に縛られるため過去の行動を繰り返す弱点もある。

 中位の穢レ、名称、化生(けしょう)

 血肉を持った生物の範疇から外れた存在。知恵が回り、怪異と違い土地や記憶に縛られることは無い。

 一般的に怪異よりも弱いとされているが、宿している瘴気の濃度が及ばないだけで油断できるような相手ではない。

 下位の穢レ、名称、穢獣(けもの)

 文字通り、瘴気に侵されて狂った獣。

 穢レと訊けば、大多数の相手が思い浮かべる存在がこれ。

 元となった獣より体躯が大きくなり、狂暴になる。

 人里に下りてくることに躊躇いが無くなる。

 守備隊の主たる活動目的が穢獣の駆除。


読んでいただきありがとうございます。

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