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泡沫に神は微睡む  作者: 安田 のら
二章 聖教侵仰篇
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4話 日々は過ぎて、眠るように謀る4

「こら、(あきら)くん。気が抜けているわよ」


「はい。

……も、申し訳ありません!」


 気も(そぞ)ろに眠気とは違う思考に沈み、警備とは名ばかりの置物と化していた(あきら)は、背中から掛けられた声で我へと返った。


 何時から(あきら)の様子を眺めていたのだろう。

 そこには、(さき)と守備隊隊長の峯松(みねまつ)が笑いを堪える姿があった。


「初めての猩々(ショウジョウ)だから疲労は理解できるけど。

 でも(あきら)くん、あんまり気は抜かないでね。幾ら襲撃される可能性が少なくても、最終的な相手の狙いが鴨津(おうつ)の風穴だって事には変わりがないんだから」


「少々、防人の鍛錬に熱を入れ過ぎましたかな?

 防人たちと混じっても、問題なくついて来れていたようですが」


 朝からの鍛錬は、気は張っていてもどちらかといえば和やかな雰囲気で終始した。

 峯松には悪いと思うが、正直に云って鍛錬での疲労は余り残っていない。


 いや、これは阿僧祇厳次の鍛錬が厳しすぎる可能性が高いのでは。

 そこまで考えて、不毛な結論が浮かぶ前に晶は思考を止めることを決めた。


「はい。

……あの、峯松(みねまつ)隊長に訊きたかったんですが、鴨津(おうつ)の風穴って護櫻神社(ここ)の直下ですよね?」


 流石に自身の失態を、話のネタに引きずられるのは(たま)ったものでは無い。

 強引に話題を変えるべく、(あきら)は心の底で覚えた引っ掛かりを形にならないままに舌に乗せた。


「ええ。鴨津(おうつ)の土地神はこの神社に奉じられています。

――何か気になる事でも?」


「いえ、気になるって云うか……」

 後に続けようとした疑問が形にならず口籠(くごも)(あきら)の様子を、(さき)峯松(みねまつ)がしばらく見守るが、結局、降参とばかりに肩を竦める。

「……すみません。また今度で良いでしょうか?」


「うん。しばらくの間は鴨津(おうつ)に逗留するんだし、焦らなくていいわ。

 交代の時間よ、帰りましょう」


 話題変更の意図には気付いていたものの言及はせずに、(さき)は帰路を促すべく足先を正門に向けた。

 その背中を追うべく一歩を踏み出した(あきら)に向けて、峯松(みねまつ)が右手に持った紙幣を差し出す。


(あきら)殿、こちらが呪符の代金です。

 16円(16万円)を束にしていますので、お納めください」


「16、え!?……」


 常よりも高額の支払いに晶が瞠目する。

 喜びよりも困惑が先に立つ晶を余所に、何を勘違いしたのか峯松は続けた。


何方(どなた)の作かは知りませんが、随分と丁寧な手跡()でした。

 1円(1万円)はその謝礼です」


「あ、ありがとうございます」


……いや、そうじゃない。

 15円(それ)が守備隊への卸値だとすると、晶は呪符組合にどれだけ中抜きをされていたというのか。


 大人に利用されないように気を張っていたのに、相手はその上を行ってたという訳か。

 悔しさはあるが、ともあれ峯松相手に文句を云うのも筋が違うだろう。

 納得はいかないも、晶は不満を押し殺して礼を口にした。


――ともあれ、

 16円もあれば少なくとも後一週間は、高宿の生活であろうと余裕で凌げるだろう。

 手(わた)された円札の確かな厚みは、晶の不安を忘れさせてくれた。




「先刻は、峯松(みねまつ)隊長と何を話していたの?」


 ぽつりぽつりと街灯が道を照らし出す途上、2人肩を並べるだけの静寂を破って(さき)がそう切り出す。


「……野暮用です。当座の資金を捻出するために、峯松(みねまつ)隊長に回符(回復系統)を売りました」


 何という事も無い口調。しかし手の内を曝け出す事に抵抗のあった(あきら)は、当たり障りのない文言を探して数拍、(いら)えが遅れる。


 (あきら)が回生符を作成できる事実は、(あきら)の収入面に余裕を(ねじ)り出すために設けた最後の安全弁である。

 成人に満たない13の年齢(よわい)でしかない(あきら)の回生符が適正な値段で取引が許されているのは、表向き玄生という名の老人が売っているからだ。


――もし玄生という老人が、年齢も満たしていない子供(ガキ)であるなどと露見でもすれば、後ろ盾の無かった頃の(あきら)など鯉が群がる(エサ)の如く(ついば)まれ水面(みなも)に溶けて消える末路しか用意されていなかっただろう。


 呪符組合(じゅふくみあい)の連中を眺めていれば、その予想が確信に変わるのにそう時間が掛からなかった。


 良くはしてくれている(さき)の手前、嘘を述べるのに抵抗はあったが、それでも完全な虚偽ではないと(うず)く良心を宥める。


「ああ。(あきら)くん、回気符が作れたんだっけ。

 でも、当座の資金ってどうして?

 鴨津(おうつ)における私たちの行動は久我(くが)家が保障しているわ。余程の散財をしない限りは、久我(くが)が財布を持ってくれるわよ」


「え?」


「当たり前じゃない。

 久我(くが)家はかなりの無理を云って私たちを鴨津(おうつ)に呼びよせたの。

 財布は私たち持ちなんて隙を見せてしまったら、久我(くが)家の面子が侮られかねなくなっちゃうわ。

 呼び寄せた相手が手元不如意(無一文)なんて意外とザラにあるから、お互いの面子を護るためにも基本的にこう云った場面は領主持ちが原則よ。

 大抵の支払いじゃ文句も云わないから、遠慮なく甘えて良いわよ」


 平然と告げられたその言葉に、暫し呆然と足を(とど)める。

 だが、思い返してみればそれもそうだ。


 前払いが原則であるはずの旅籠で、(さき)は財布の口を緩めた様子も無かった。

 代わりに見せていたのは、小さな木札。


「じゃあ、あの木の札って……」


「監察札の事?

 あれを見せておけば、支払いは依頼を出した領主に回るようになっているの。

 実質、私たちが支払う必要があるのは洲鉄で購入する駅弁くらいね」


「……初めて知りました。

 阿僧祇(あそうぎ)隊長からは、掛かった経費は後で補填としか聞かされていなかったので」


 余りと云えば余りの事実。

 だが、考えてみれば当然の話でもあった。

 そもそも一ヶ月(ひとつき)前までは、(あきら)が平民であった事は周知の事実である。


 長屋住まいの(あきら)に財産が無い事は容易に推測が立つだろうし、懐に木枯(こが)らしが吹く事情など、烏が黒いという程度には当たり前に得られている帰結のはずだ。

 それなのに厳次(げんじ)(さき)も、(あきら)の懐事情を(おもんぱか)る仕草さえ見せなかった。


 洲鉄の切符は出掛けに(わた)された限りだし、そう考えてみれば、(あきら)の持ち合わせで充分だと判断されたのも納得がいく。


「……阿僧祇(あそうぎ)の叔父さまも私も、(あきら)くんの生活に余裕が無いって分かっているし、そこまで危惧する事でも無いわ。

 まあ、回気符を売って少しお金に余裕ができたって思っておけばいいんじゃない。

――それよりも、この先なのよね?」


「……はい」


 道行に橙色の灯りが満ち始め、(さき)の声音が少し沈む。

 深夜にも差し掛かっているはずの往来に何時の間にか、三々五々、人の歩みが散見()られるようにもなっている。

 (あきら)が食事をするために寄る繁華街の入り口で、2人は足を止めた。


 道行く人の姿は、圧倒的に男性のものが多い。

 女性は店住まいの従業員か、見るからに夫婦連れの相手くらいか。


 夜も深まった頃に未婚の女性が出歩くのに外聞が悪い事は、(あきら)とて常識の範疇で知っている。

 それもこんな繁華街の入り口で彷徨(うろつ)くのは、阿婆擦(あばず)れと後ろ指を指されても文句は云えない。

 特に(さき)は、久我(くが)家から目を付けられていて身動きがあまりとれない状況でもある。

 下手に重箱の隅を突いてくるような隙を、久我(くが)法理(ほうり)相手に見せる訳にはいかない。


 それでも、(あきら)とベネデッタの邂逅を報告で耳にして、(さき)はここまで足を運ぶ決心をした。


 実はあれから1度、(あきら)はベネデッタと蕎麦屋で顔を合わせている。

 交わした会話は他愛もない世間話の類であるが、だからと云って(あきら)の警戒が然程に薄まる事も無く、強くなる一方であった。


 1度2度なら兎も角、3度(今日)も続けば必然だ。

 そうであるなら間違いなく、(あきら)は会話の相手として狙いを定められているのだろう。


「こんな時間に繁華街に入る訳にはいかないし、今日のところ私は様子見ね。

 今日も会うようなら、用件を訊いておいて。私の名前を出す事に遠慮は要らないわ」


「はい。

……じゃあやっぱり、向こうの意図はお嬢さまとの会談(・・・・・・・・)でしょうか?」


 硬い声色で確認を重ねる(あきら)に、(さき)も首肯で返す。

 ベネデッタは顔を合わせた事に対して沈黙を守るよう(あきら)に依頼したと聴いたが、実際のところ、あまり沈黙を守ってもらうのに拘泥す(こだわ)る様子は見せていなかった。


 意図は明白。何方(どちら)でも良かったのだ。

 (あきら)が沈黙を守れば、それを切っ掛けに会話を掘り下げていけば良い。

 (さき)が報告を受ける前に(あきら)とベネデッタが顔を合わせていた。その事実を(さき)が知れば、明確にベネデッタと(さき)が会談を持つ際の貸し(・・)となり得る。


 仮に(あきら)(さき)に報告を上げたとしても、(さき)自身は間違いなく迷うであろう。

 (さき)の身分が久我(くが)家と縁づいている訳では無い事は、屋敷前ですれ違った時点で予想が付いていたのだろう。

 そうであるなら久我(くが)家に報告を入れるよりも先に、第三者を交えない状況下でのベネデッタとの個別会談を模索するはずだ。


――つまり(あきら)に口止めを頼むという事は、間違いなくベネデッタは久我(くが)家が関与し得ない交渉の窓口を探しているのだ。


「『アリアドネ聖教』が私なんかに何を求めているのかよく分からないけど、ここまで手間を掛けられた以上、余計に話が(こじ)れる前に会談を持つ必要はあるわね。

 相手も騒ぎを起こしたくないだろうから心配はないと思うけれど、荒事になりそうだったら精霊器を振るう事を遠慮しないで」


「……分かりました」


――――――――――――――――


「――らっしゃい!!」


 ガラリ。やや建付けの悪い引き戸を引いて暖簾を潜ると、すっかり慣れた喧騒が(あきら)を出迎えた。


 防人の入店に客の好奇心が集まりかけるが、その機会も3度目となると慣れるのも早くなる。

 すっかり定席となった壁際の椅子に腰を下ろし、変わらず掛け蕎麦の注文を店主に通す。


 席に腰を下ろして、幾ばくも間を置かず供された蕎麦に手を付けるが、どうにも気持ちが動かず箸が進まない。

 蕎麦の泳ぐ椀を混ぜるでもなく、(あきら)は手にした箸を椀の中に無意味に抜いて刺してを繰り返した。


「相席、よろしいですか?」


ええ(・・)、どうぞ」


 そして、こちらも慣れ始めた柔らかい声色が、(あきら)の耳朶を揺らした。


 視線を僅かに上げると、いつも通り(・・・・・)優しく微笑むベネデッタの姿。

 (あきら)(うべな)いを受けて、柔和な物腰で(あきら)の対席に腰を下ろす。


 やはり、店内の喧騒はそよとも揺るがない。

 異国の女性(明らかな異物)を孕んでしまった店の中は、それでも日常を糊塗して(塗り潰し)くるくると回転する。


「お嬢さまは来られなかったのですね」


「流石に、こんな場末に気軽に足を運べる(身分)ではないので」


 繁華街の前まで、(さき)(あきら)が肩を並べていた姿を見られていたのだろうか。

 見られていたという事さえ、指摘されるまで気付きもしなかった。


 反駁から言外に異国の華族であろうベネデッタの酔狂を野次るが、(あきら)の拙い交渉では意図の読めない微笑みを崩す事は出来ない。


 その事実に妙な敗北感を覚えつつ、目の前に置かれた掛け蕎麦を(すす)る。

 そのいつも通りの優しい鰹節の風味だけが、ささくれた(あきら)の内心を慰めた。


「それは残念です。

……ですが、助かりました。私の意図を読んで下さったのですね」


「ええ。(さき)お嬢さまから、用件を訊いておくよう(ことづか)っています」


「では、こうお伝え下さい。

――波国(ヴァンスイール)審問官ベネデッタ・カザリーニが、お嬢さまとの会談を希望いたします。

 日時と場所はそちらの都合に合わせます、と」


「……分かりました、確かに(さき)お嬢さまに伝えましょう。

 用件は以上ですか?」


「いいえ。もう一つ、(あきら)さまにお話が」


「俺に?」


 てっきり、(さき)との仲介役の役割しか期待されていなかったと思っていた(あきら)は、突然の話題転換に目を瞬かせた。

 何の用かと相手の目を探るが、真剣な眼差しが跳ね返るばかりで真意が見えてこない。


「随分と深く何かを考えておられるようなので、不躾かとは思いましたがお声がけを。

 よろしければ、話を聴く事くらいなら私がいたしますが」


「酔狂ですね。他国の者の悩み事を聴くのも仕事なんですか?」


「これでも聖職に就く身であります。異郷の子らといえど、迷える子羊の曇りを晴らすのは羊飼いたる私たちの務め。

……告解というにも場所がそぐいませんが、相談事の体裁なら問題ないでしょう」


 痛いところを突かれて、確かにと唸る。

(さき)との用件も、何処か他人事に伝言の受け渡しをするだけで、(あきら)の関心事は他に在った。

 異国のものに聴いて貰うようなことではない。だが、相談する相手に困っていたのも事実。


 物は試しと、(あきら)は居住まいを正してベネデッタに視線を向けた。


「……つい先刻、平民の練兵から防人になりたいからどうすればいいのか訊かれましてね。

 まぁ、彼が防人になるのは不可能である事は判っているんですが」


「なら、未練を断ち切ってやれば宜しいのでは?

 下手に希望を持たせるのも、それはそれで残酷なものですよ」


「ええ。そこに悩んでいる訳ではありません。

 問題は、彼が持っていて俺が持っていないもの(・・)に気付いた事です」

 眩しく将来を見据える陸斗(りくと)の姿。全てを賭けて故郷を、祖国を護らんと叫ぶ確固とした意志。

 その全てが、(あきら)には持ちえないものばかりであった。


「俺は平民です。故郷から放逐された三年前から、一人で生きてきました。

――日々を生きるために、精一杯に足掻いてきた。

 そこに不満がある訳じゃない。寧ろ、胸を張って云ってやっても良いくらいだ」

 それは(あきら)の本音である。

 何も無いからこそ、(あきら)の得た全ては自分自身のために後腐れもせず蕩尽(とうじん)できたのだ。

 だからこそ、

「防人に偶然なれて、俺が欲しかったものが全て与えられていた事に気付いて、

――俺は、俺には何も残っていないことに気付いた」


 氏子になって華蓮(かれん)に住むことを赦されて、日々の心配は露と消えた。

 守備隊に居座り続けている意味は、その全てを手に入れる為であったというのに。

 すべてが満たされた今だからこそ、(あきら)は戦う理由すら喪っていた事に、今更の如く気付かされたのだろう。


――立ち上がれ! 戦え! 喰らいつけ!


 それでも尚、心の中で仔狼が吼え立てている。

 だが、その眼差しは、何処か路頭に彷徨う鈍い輝きを宿していた。


「生きているだけで充分、とは考えないんですか?」


「以前のままなら、それでも良かったかも。

 だけど、現在(いま)の俺は防人だ。戦わされているだけの練兵じゃあ、もう許されない。

……俺にはこの先、剣を掴むための理由が無いんです。」


 周囲の喧騒を余所に、吐き出される(あきら)の本音は二人の間に沈黙が(わだかま)る。


「――私は過去に2度、聖伐の従軍を経験しています」


「聖伐?」


「唯一神たる我らがアリアドネに(まつろ)わぬ蛮神を降し(・・)、眷属神に戻す行為。アリアドネの威光で地を遍く照らし出す、聖なる戦いです」


――他の神柱はアリアドネの下にこそいるべき存在であり、それらを支配し管理してやる(・・・・)事は義務であり権利だ(・・・)と、彼らは本気で考えているんです。


 その言葉に、出立前に朱華(はねず)たちと交わした会話が記憶に蘇った。


 他の神柱を踏みにじる事を良しとする傲慢さは、微笑みに塗り潰されて毛ほども見えない。それが当然とばかりに慈愛を以てベネデッタは(あきら)を説く。


流石に、彼女の理想に賛同の意思を抱くことは無い。

それでも(あきら)は、ベネデッタが戦う理由を知りたいと願った。

……それは、(あきら)が未だ心に持ちえないものであったからだ。


「それは、波国(ヴァンスイール)が繁栄するための行為(おこない)ですよね?

貴女自身が剣を取る理由ではない」


「いいえ。いいえ。同じですよ、(あきら)さま。

 私の生命は、アリアドネ聖教に捧げています。

 そうであるが故に、聖アリアドネを奉じる羊飼いとして、その下に跪く数百万の民草を守護し率いる義務があるのですから」

 苦しく(あきら)が切り返す声を、そよとも揺るがぬ微笑みが迎え撃つ。

 蕎麦屋の喧騒は何時の間にか遠く、二人の間を奇妙な静寂が支配した。

「私が剣を取る理由を聞いたところで、貴方の参考にはならないでしょう。

 理解する事も不可能なはずです。

 何故ならば、それは私の理由であって、(あきら)さまの理由ではないからです」


「……」


 どうあれ、ベネデッタを前にして(あきら)は論じるために舌を動かせない。

 懊悩(おうのう)に沈むしかない(あきら)には、ベネデッタに沈黙を返すしか術はなかった。


ただ(・・)人は皆、剣を取る理由を持っています。

 (あきら)さまはそれが見えていないだけで、剣を取る意味を既にお持ちのはずです」

 (あきら)の苦悶には気付いてはいるのだろう。気遣う様子はあれど、ベネデッタは(よろこ)びに頬を綻ばせそう告げる。

「嗚呼、託宣には(すべか)らくの意味が在る。

 私が此処に遣わされた意味は、貴方に在ったのですね。

――(あきら)さま。何時か戦う意味を見出(みいだ)したら、是非、このベネデッタ・カザリーニに教えてくださいませ。

 それが、我が神柱(聖アリアドネ)希望(ねがい)なのですから」

TIPS:監察札について

 元は、奇鳳院や央洲からの使者である事の証明として発行された札。

 現在は客人の身分を領主が一時的に保証する、身分証の代わりに使用されている。

 領に滞在する間、必要経費はここから領主に回るようになっている。


 これを当てにして、手元不如意で贅沢を楽しむ貧乏華族もいたりする。

……乱用は駄目ですよ。


 読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 咲ちゃんのバカー!
[気になる点] >嗚呼、託宣には須くの意味が在る。 「大辞林 第3版」(平成18年・三省堂) すべからく【須く】(副) 〔漢文訓読に由来する語。「すべくあらく(すべきであることの意)」の約。下に「べし…
[気になる点] 振り仮名は同じ一話に一度あればいいかなと思います。晶(あきら)などは特にそう思います。
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