急章:叶わぬ望み-5
更新忘れてましたっ!!
すみませんっ!!
明日もちゃんとがんばります!!
『……づいでぐるな』
「そ、そう言わないでくださいよぉ〜」
クートゥは簡易的に解体し、ある程度軽くなった今日の獲物であるクマの魔物を担ぎながら自身の後を付いて来る男を鬱陶しそうに睨み付けます。
対する男はと言えば、重傷を負っていた身体を、護衛していた行商の荷馬車からこっそり拝借していた即時回復ポーションで簡単に処置し、理由は判らないが化け物の姿であるクートゥに怯えながらも付いて来ていました。
そんな男を、クートゥは訝しみます。
露骨に両手を擦り合わせるようにしてゴマを擦り、慣れない作り笑顔を自分に向け、調子の良い言葉を投げ続けて来る……。
いかにも何かを企んでいる風体の男を警戒しない程、クートゥはお人好しではありません。
まったく心に響かないおべんちゃらばかりを並べ続ける男にいい加減嫌気が差してきたクートゥは、一度その場で立ち止まります。
男は漸くまともに会話をしてくれる気になったと最初は安堵しましたが、振り向いた彼女の自分を見る目を見て、背筋に怖気が走りました。
そこにある四つの眼が写したのは自身の身体。
一つは両腕、一つは両足、一つは胴体、そして最後に頭……。
それぞれに別々の気色を宿した眼は決して外れる事はなく、歪んだ瞳孔が開いていくのを男は間近で認識してしまいました。
『え……あ、あの……』
『わだじが、やざじい、がいぶづに、みえだが?』
『あ、あぁ……』
『わだじば、ばげものだ、びどぐいの、ばげものだぞ』
『ご、ごめん、なさ……』
『おまえ、まずぞうだげど、うるざい。ずごぐ、うるざい』
『ゆ、るし、て……』
『うるざいがら、めんどぐざい。もう、めんどぐざいがら、たべる』
『許して……許して下さいっ!!』
『あんじんじろ。あだまがら、がみづぶず。だがら、いだぐない』
『ひ、ヒィィィっ!?』
男は情け無い悲鳴を上げると足元の泥濘みに足を取られバランスを崩しながら踵を返し、森の中を一目散に走り抜けて行きました。
そんな男の背中を、彼が見えなくなるまで見送ったクートゥは深い溜め息を吐き、振り返って再び歩き始めます。
(何だったんだ……。あの人族の男……)
一体何の目的で自分のような化け物に付いて来ようとしたのか、何故あんなにご機嫌を取ろうと必死だったのか、今のクートゥには検討もつきません。
(まあいいか。そんな事より早く帰って魔物を捌かなくちゃ。ふふふ。スターチスの喜んぶ顔が楽しみだ)
クートゥは先程の男の事を記憶の隅へと追いやり、頭の中を愛息子であるスターチスで一杯にし、勇んで帰路を歩いて行きました。
この時、クートゥは何も知らず、に何も考えてはいませんでした。
彼女にもう少し、昔のような思慮が残っていたのなら、この後に待ち受ける惨劇を避けられたのかも、しれません……。




