破章:暴食と小さな幸福-4
大変長らくお待たせしました!!
グロ描写がありますので、あらかじめご了承下さい!!
『……?』
目が覚めると、クートゥは森の中に居ました。
目の前には闇夜に輝く星々が、空を覆う葉の群れの隙間から覗き、それを見た彼女はほんの一瞬、自身の境遇の事など忘れてしまいそうになりました。
ですがそんなひと時も束の間。
辺りに漂う森の青々とした香りを飲み込むかのような生々しい腥風が、クートゥの鼻を刺激したのです。
彼女はそれを嗅ぎ、胸の奥底から去来する二つの衝動に駆られるように飛び起きます。
一つは悪寒。
そしてもう一つは……____
『ゔ、ぞ……』
彼女の夜目が、現実を容赦なく映し出します。
『あ゛あ゛ぁぁ……。あ゛ぁあ゛ぁぁぁぁっ……』
クートゥの周りには、命だったものが転がっていました。
赤黒く染まる肉。
皮膚から飛び出た骨。
咽せ返るように香り立つ臓物。
食い千切られた手足。
かち割られ啜られた頭蓋。
恐怖に染まる死に顔。
一人二人分ではありません。
数にして十数人分の原型を留めない死体が彼女を取り囲むように散乱しており、瞬間、脳内に嫌な予感が駆け抜け、唸り声が口から漏れました。
『ぐぅぅ……。ぐうぅぅぅぅっ……』
直視したくない現実に逃げたい衝動に駆られ、クートゥは思わず地面に腰を着けながら後退りしてしまいます。
するとその途中____
『あ゛ぁっ!?』
でいくつもの破片を跳ね除けてしまい、彼女は声を上げながら慌てたようにそれらを必死で掻き集めます。
『ぢが、ぢがゔっ! ごめ゛ん゛、ごめ゛ん゛な゛ざい゛っ!! ごめ゛ん゛な゛ざいっ!! ごめ゛ん゛な゛ざいっっ!!』
クートゥは何度も何度も何度も謝りながら辺りに散らばる死体の破片を集めます。
『ゔぅぅ……? あ゛ぁぁ……あ゛ぁぁ……っ!?』
その間、彼女は目の前の肉片にどれもこれも歪んだ歯形が付いているのに気が付き、小刻みに震えながら否定したくなる現実を見ないフリするように両手で顔を覆い隠します。
すると顔を覆おうとした際、一つのモノに目が行きます。
気が動転していたせいで意識が向かなかったのか、それはまるで〝大切な御馳走〟でも扱うかのように木の葉で包まれていました。
それは手の平に収まりそうな大きさで、生暖かく、自身を取り囲む死体よりいっそう甘美に香るもの。
化け物に変貌し、意識を失い、それでも丁重に扱い、優しく優しく保管されていたそれを見て、クートゥはそれから目が離せなくなります。
『…………あ゛ぁぁ』
暫く眺め、腹が鳴り、口から涎を垂らすと、自然と言葉が漏れます。
『心臓……、お゛い゛じぞゔ……。っ!?』
口から出てしまった言葉に、クートゥは戦慄しました。
自分は一体何を言っているんだ?
何を口走ったんだ?
身も心も、最早私は化け物なのか?
一瞬の気の迷いならば自分に言い訳も吐けたでしょう。
ですが彼女の目の前で一際輝いて見える心臓が、正気のままでいる筈のクートゥの食欲を刺激し、正気と狂気が徐々に混ざり始めます。
そして彼女は心臓と辺りに散らばる死体を交互に数度見返し、ゆっくりと立ち上がりました。
『わ゛だじが、ごろ゛じだな゛ら゛、ぜめ゛で……ぢゃん゛ど……ぜん゛ぶ……』
最早彼女の中に、先程のような強い罪悪感はありません。あるのはただ〝勿体ない〟という言い訳と治る事を知らない食欲のみ。
クートゥは掻き集めた肉片を一抱えし、それに思い切り食い付きます。
そこからはもう、止まりません。
『お゛い゛じい゛……。お゛い゛じい゛……。お゛い゛じい゛……。お゛い゛じい゛……』
皮膚が裂け、肉が千切れ、骨が砕かれ、神経が断たれ、臓物が爆ける感覚と味に彼女は魅了され。
口腔に含み、食道を流れ、胃に落ちる幸福感に、クートゥの口角は際限なく上がります。
その目端に、何やら見覚えのある形をした腕章や剣が転がっていましたが、もう、彼女には認識出来ませんでした。
余りに過激なグロ描写は注意されるらしいですが、加減が分からないので修正されたら察して下さい!!




