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1-88 第三の宝玉ゴーレム


 「私も行きます!」


 避難道具をしょったウーシアの前でぷんぷんと怒りながら俺に詰め寄ってくるリティッタをソフィーヤがなだめに入る。


 「リティッタさん、お気持ちはうれしいですけど迷宮は本当に危ないんです。ウーシアさんと一緒に避難していてください」


 「でも!ご主人様のゴーレムをこの街で一番うまく使えるのはわたしなんです!」


 「……」


俺は真っ黒な雲が渦巻くノースクローネの空を仰いで溜息を吐いた。


 話の発端はこうだ。


 俺が作った5機の封印用ゴーレム。ソフィーヤが2機、俺が2機操るとして、もう1機を誰かに操作してもらうのがいいだろうという事になった。俺のゴーレムの扱いに慣れているラドクリフやケインにでも頼もうと思っていたのだが、そこにまさかのリティッタが名乗り出てきたわけだ。


 「ジュンヤ様も黙ってないで止めてください」


 「……まぁ、リティが使うっていうのは効率から言えば悪い話じゃないんだよな」


「ですけど……」


 ゴーレムの操作は戦闘しながら片手間にやるのは難しい。素人に任せるよりはよく知っている専門の人間がやった方が確実だ。そしてこの街で俺の次にゴーレムの操作に通じているのはリティッタであることには間違いがない。


 「わたしだって、このノースクローネの住人です。できることがあるのに冒険者の人たちだけに任せて逃げるのは嫌です!」


 「……迷宮に入れば何度も魔物との戦闘になる。全部が終わるまでは帰れない作戦だ。俺もリティッタを守り切れないかもしれない。それでもいいのか?」


 こういう言い方では、リティッタは逃げない。俺から視線を外さず力強く頷くリティの前で俺は諦めのため息を吐いた。


 (俺は悪い男だな)


 「わかった」


 「ダンナさま」


 「ジュンヤ様!」


 ウーシアとソフィーヤが俺を咎めるが、ここはリティの気持ちを汲む。後ろで話を聞いていたプレク達も笑いながらやってきた。


 「なに、素人のジュンヤがいるんだ。一人守るのも二人守るのも一緒さ」


 「そうなんだなっす」


 「迷惑かけるけど、よろしく頼むよみんな」


 握手をする俺の横でリティッタもぺこりと頭を下げた。


 「わがままを言ってごめんなさい。でもわたしも一緒に戦いたいんです」


 「わかるよ、ご主人様がいい加減だから心配だもんな」


 「失敬な。俺はちゃんといろいろ考えているんだぞ」


 ジムマの茶化しに真剣な顔で言い返すが心外にもその場の全員が大声で笑いだした。


 「冗談はその辺にして、そろそろ出発するぞ」


 「リティッタちゃんもご飯と傷薬の準備、しっかりね」


 「わかりました!」


 相手にされないのに少し不貞腐れながら俺はウーシアに後の事を頼んだ。


 「すまんウーシア。仕事道具の入ったマナ・カードだけは大事に持っておいてくれ」


 「わかった、ダンナさまも気をつけてな」








 ゴゥン、ゴゥン……。


 チェルファーナのゴーレムが回すエレベーターに乗り俺たちは地下都市ディルクローネに向かった。下には先行制圧隊のヒム達や主戦力の群青騎士団、ラドクリフ達がついている。俺たちは彼らが開いてくれた血路を急いで駆け抜けるわけだ。


 「みなさん、大丈夫でしょうか……」


 「信じよう、みんな一流の冒険者だからな」


 リティッタの小さく震える手を握ってやっているうちにエレベーターは地下50階に到着する。ドアが開くと同時に、カゴの中にむわっと血と生肉の生臭い異臭が入り込んでくる。


 「うわっ……」


 歴戦のロパエ達ですら顔をしかめる凄惨な光景がそこには広がっていた。破壊され原形をとどめていない建物達。暗い街を照らしていた街灯は全て折れて、制圧隊の誰かが点けたのだろうか、魔法の明かりだけが数個空に浮かんでいる。その青白い光に照らされるのは夥しい数の魔物の死体……。


 「ジュンヤさんですかか?こっちです!」


 剣を片手に『青鹿の角』のリーダージェフが駆け寄ってきた。魔物の青い返り血を大量に浴びた姿が戦いの激しさを物語っている。


 「案内します、ついてきてください!」


 「頼む!」


 ロパエ達三人が前、ジョアンとユアンのメガネコンビが後ろという陣形で俺たちは草原迷宮側の入り口に走りだした。街の中ではまだ魔物たちとの戦闘が続いている。上を見上げれば『リヴァンガルー』に乗ったエディオが槍を振り回し次々と飛んでいる魔物を串刺しにしていた。


 「ジュンヤさん!」


 ヒムが廃墟の屋根の上で戦いながら俺に声を掛ける。彼の弓から放たれた矢は魔法で三本に分離し、それぞれがアッシュエビルプに突き刺さり一撃で絶命させた。さらに前方の道をふさぐ獣人のような魔物も、ピェチアが睡眠魔法で眠らせる。奥ではドワーフと俺の作った盾ゴーレムが奥から来るトロールを体を張って押し留めていた。


 「いいわよ、ヒム!」


 「ここは抑えます!今のうちに行ってください!!」


 「すまない!」


 ジェフの先導で魔物のいない道を突っ走り、10分ほどで目的の入り口に到達した。


 「群青騎士団を先頭に計画通りみんな地下に進んでいます。気を付けて後を追ってください!」


 「ありがとう、ジェフ達も気をつけろよ!」


 「封印の事は頼みます!」


 そう言うとジェフはまた街中の方へ走っていった。ロパエがランタンに灯を点けている間にジムマが全員に防御魔法をかける。

 

 「行こう、あまり遅れるとまた魔物に邪魔される」


 「わかった。大丈夫か、リティッタ?」


 「大丈夫です、行けます」


 やや息は切れているが気合十分の声でリティッタが返事をした。ここからはもうノースクローネにも容易に戻ることはできない。俺は覚悟を決めて、リティッタを連れて迷宮の中に足を踏み入れた。








 迷宮の中は暗く広大だ。先行している部隊があらかた魔物を狩っておいてくれているとはいえ、この中を進むだけで肉体的にも精神的にも疲弊する。多くの魔物の死体が散乱する中に、力尽き倒れている戦士や騎士の姿もあった。


「ご主人さま……」


「悪いが今は助けている暇がない。後から来てくれるヒム達に任せよう」


「魔物だ!」


グルルルと唸る魔物の声。先を歩くプレクの警告にみんなが武器を構え、俺とソフィーヤもそれぞれゴーレムの準備をした。


「ダースデミュルフ!隠れていやがったな!」


真っ黒な毛皮と大きな体躯を持つ狼人間の群れが武器を手に吠えながら襲い掛かってくる。数が多い上に通路は比較的広くプレクだけで抑えるのは厳しいようだ。


「コイツの出番だな!」


俺はベルトから白いマナ・カードを出し魔操銃に挿入した。


「我が命により界封の楔を解く!出でよ、『エゥオプロ』!」


挿絵(By みてみん)


デミュルフたちの前に魔法陣が広がり、その中から盾とメイスを持った白銀のゴーレム『エゥオプロ』が現れる。宝玉の力を持つ『エゥオプロ』はどっしりと構えると近づいてくる狼人間達を野球のボールでも打つようにボコボコと吹っ飛ばし始めた。


「うお、すげぇー」


うっかり手を止めてプレクが呟けるほどに『エゥオプロ』のパワーは圧倒的だった。


「プレク、巻き込まれて吹っ飛ばされるなよ!さっさと片付けて進もう!」


「よ、よし!」


「だなッス!」


ジムマが杖から電撃魔法を、ジョアンは巻物から石化魔法を飛ばした。ゴーレムにうろたえていたダースデミュルフたちは次々と紫光に輝く雷に貫かれ、もしくは全身を石にされて倒れていく。


ロパエの弓矢やユアンの槍が撃ち漏らしたデミュルフを仕留めて、戦闘はあっという間に終了した。魔操杖を持ったままのソフィーヤが俺の新しいゴーレムを見たまま呟く。


「ジュンヤ様、これが……」


「はい、三つ目のゴーレム、『エゥオプロ』です。機動力はそれほどでは無いですが、短時間ですが魔法のバリアも張れるので防御に関してはどのゴーレムよりも優れています」


「流石だぜ。コイツがいれば無事に下まで行けそうだな」


パンパンと頼もしそうにプレクが叩く『エゥオプロ』をカードに収納し全員の様子を確認する。みんな怪我は無さそうだ。


「よし、みんな無事だな。先を急ごう」

 

装備を整え直して進軍を再開する。地下100階はまだまだ先だ。

 



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