第三十五話 破壊力が高い攻撃って使い勝手悪い
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すみません、前半部分の投稿が切れていました。修正しました。
エルクラストの大聖堂に転移した際に聖哉は失禁こそなかったが気絶はやはりした。その後は頭の良い聖哉の理解力をもって、エスカイアさんがこの会社の業務内容をザっと簡単に説明し、社員証発効と各種適性試験を終えていた。ちなみに、主任になるとクロード社長と同じように社員証発効権限が与えらえるようになり、チームメンバーの追加も八名までは自由裁量で採用できるらしい。まぁ、日本側の人間は社長決裁がいるそうだが、今回はすでに社長決裁が下りているので、問題なく社員登録できた。
「……真面目に異世界なんですね。ここって。未だに実感わかないなー。それに、この装置とか社員証とかなんて日本よりも進んだ技術が多数使用されているし」
各種適性試験を終えた聖哉のステータスが見られるようになったので、確認させてもらうことにした。
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赤沢 聖哉 年齢18歳 人間 男性 国籍:日本
社員ランク:F
勇者素質:S
LV1
HP:20
MP:20
攻撃:20
防御:20
素早さ:20
魔力:20
魔防:20
スキル:経験値増量 精密攻撃 弱点属性増大 槍 ローブ 水属性 攻撃魔術 回復魔術
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ステータスの確認を終えると、とりあえず、コピらせてもらいたいものがあるので、聖哉の肩を抱く。けして、やましい気持ちが有るわけじゃないが不思議と緊張をしてしまう。
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>経験値増量をコピーしますか? Y/N
>精密攻撃をコピーしますか? Y/N
>弱点属性増大をコピーしますか? Y/N
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取得できる経験値が増えるスキルと、狙った部位に攻撃が当てやすくなるスキルと、敵の弱点属性ダメージが上昇するスキルがコピーできた。色々と戦闘に便利そうなスキルを所持している聖哉は、オレとともに戦闘系派遣勇者として害獣戦闘にすることになりそうだった。
「まぁ、異世界だしね。オレも初めての時は戸惑ったことが多いし、まだ戸惑うこともある」
「はぁ、そういうものですかね。害獣とかって本当に居るのか実感がわかないですよ」
「それも含めて、今日はいきなりの実地訓練だけど、頑張ろうな。更衣室でそれぞれの装備に着替えて現地に行こう。今日は獣人国家の中でも治安が悪いドラガノ王国の近くらしいからね。油断しちゃダメだよ」
聖哉の顔に緊張感が走る。ちょっとだけ、脅かし半分だが、今日の害獣討伐予定地のドラガノ王国は獣人国家連合の中でも特に治安の悪い国で、ミチアス帝国に次ぐ貧乏国家らしい。
そのドラガノ王国の近くの魔境に今回の害獣討伐地点が設定されていた。まぁ、Cランクの大口鰐の討伐なんで、多分余裕なはず。LV上げも許可をえているので、周辺の害獣も狩っていくつもりだ。
オレ達はそれぞれ、更衣室で自分の装備に着替えると目的地に転移していった。
目的地のドラガノ王国の王都ギブソンに到着したが、ここもミチアス帝国に初めていった時のように住民達に活気があまり見られなかった。多くの住民は獣人で犬や猫、狼、牛、中には人魚とかもいるそうで、雑多な取り合わせの住民が住んでいた。
「やっぱり異世界なんですね。獣人が闊歩しているだなんて日本じゃありえないですし……親父はこんな所で働いているんですか……」
「まぁ、この仕事は家族にも中々伝えられないからね。普通、こんな場所で仕事してますって言ったら、聖哉も親父さんの頭がイカレタと思うだろ?」
「確かに翔魔さんの言う通りですね。この現実を見てないなら、親父が壊れたと思います」
身内が異世界で魔物退治していると言い出したら、気でも狂ったのかと思われるのは、オレも実家で体験しているので、赤沢主任の心中を察するとホロリと泣きそうになってしまった。子供や嫁のために異世界で害獣を駆除したり、要人警護したりして頑張って稼いでいるのに、それを子供から不審がられるとは可哀想すぎる。
そんな赤沢主任の気持ちを分かってもらうためにも、聖哉には社員としてキッチリと仕事を教えないといけないと思った。
「翔魔様、時間も余りありませんし、早速、害獣討伐に参りましょう。その前に主任権限でチーム編成をしてもらえると助かります。これをしておかないと経験値が皆に入らないので」
エスカイアさんがチームを組むようにと促してきていた。
「え? そうなの? てっきり自動だと思ったけど……違うんだ」
「ええ、クエストごとにチーム編成を替えるチームもありますからね。最大で八名までチームに編成できます。このチーム編成中はクエスト内で倒した害獣の経験値は均等割で全員に割り振られますので、レベリングには有効なのですよ。涼香さんみたいな後方支援の方も楽々レベルアップできます。メニューから『チーム』と呟くと編成画面がディスプレイに出ますんで、任意に選んでください。とりあえず今回はトルーデ様以外をチームに入れて貰えると助かります」
「妾はレベル上限に達しておるからの、チームに入れるだけ損だというわけじゃ。聖哉の援護くらいはしてやるが、翔魔なら援護の必要もあるまい」
なるほど、均等割りになるから、トルーデさんをチームから外して経験値が目減りするのを防ぐのか。効率はそっちの方が良くなるというわけだな。元々、害獣との戦闘はオレの担当みたいなものだから戦わせる気はないけど。
「分かった。それでチーム編成をするよ」
「おっと、翔魔さんから招待きた。僕はこれを承認すればいいのですか?」
「そうですね。承認するとチーム員としてメンバーの位置がマップに表示されるのとHP、MPの状態が表示されるようになります」
視界の端にチーム員として招待した聖哉とエスカイアさんと涼香さんのHP、MPの表示バーが現れた。そして、透過式ミニマップにはメンバーの光点表示されている。なるほど、これでお互いの情報を共有して害獣と戦闘をすることができるようになるのか。ますます、ゲームっぽい仕様だ。
けど、強い害獣と戦う際はこうして連携が取れると戦い易くなると思うのでありがたい。
「さてと、準備も整ったし、害獣退治といきますか」
涼香さんは支給品のセクシーな軽装鎧と銃を担いで、目的地に先に歩き出していく。前回の合成魔獣時は会社の制服だったが、今回は発注していた鎧が完成していたので、割と露出度が高い軽装鎧姿になっている。そう、肌色の割合が高い鎧なんですよ。涼香さん貴方は痴女なんですか。
その後を同じく露出度の高い民族衣装を着て杖を持ったトルーデさんが追っていく。
「翔魔様、置いて行きますよ。聖哉君もぼーっとしない」
「あ、はい。すみません。色々と考え込んでしまいした」
「ああ、今から行くよ」
エルフのコスプレ(?)じゃない、正装を着たエスカイアさんから声かけられたことで、我に返ったオレは先に行った聖哉の後を追って目的地に向かい歩き出した。
魔境管理区D-45094。今回はここが、オレ達に設定されたクエスト討伐対象がいる魔境地区となっている。鬱蒼と生い茂る森林地帯であるが、この中に発生している害獣は強くてもCランクまでだと機構からのお墨付きをもらっていた。以前のように、間違ってSランクの緊急依頼を受けていないことは確認しておいた。
「こういった場所にその害獣とかいうのが、発生してそいつらの持つ魔結晶があの高レベルな機器を動かすエネルギーになっているんですね。はぁ、この世界は日本にとって無限大の可能性を持った世界ですね。そりゃあ、調べようとすると公安の怖いお兄さん来るはずだ……」
聖哉は魔境の森を歩きながら、自分がどうして公安警察の怖い人達に連行されたのかを悟っていたようだ。ある程度の推察はしていたのだろうが、現実のエルクラストに来て日本国がとんでもない秘密を抱えていることを改めて確認したようだ。
「そういうことだから。あんまり、喋っちゃダメだってさ。私もバイトでここに入る前にクロード社長から念を押されたからね。このエルクラストではスマホなんかの情報端末は全く使用不可になっていて、写真一枚も撮れないから、伝聞でしか伝わらないけど」
涼香さんが言ったとおり、エルクラストでは、社員証や身分証から発せられるディスプレイ画面で用事が事足りるので、気にしていなかったが、現実世界の情報機器が全く使用できない世界になっていて、ネットも繋がらなければ、写真も動画も撮れない世界なのである。つまり、自分で見た物しか記憶に残せないのであった。
「そうじゃな。多分、ここが日本とは違う理で出来た世界であるため、日本の物はまったく使えないのであろうな。妾もメイドさんの動画が見れなくて寂しいのじゃ」
貴方、メイド好きすぎでしょ。ハマり過ぎ。トルーデさんは日本でメイド喫茶にハマり、支度金で買ったスマホに次々と動画や写真を溜め込んでいたのだ。そのうち、ミチアス帝国にメイド喫茶が開店しないか不安でしょうがない。
そんな風に緊張感無く、ベラベラと喋りながら歩いていたら、前方から熊さんが集団で出てきてしまった。急いで、魔物鑑定を発動していく。
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ビッククローベアー
魔物LV10
害獣系統:動物系
HP:350
MP:123
攻撃:127
防御:82
素早さ:65
魔力:98
魔防:82
スキル:斬撃耐性 痛撃
弱点:氷属性
無効化:なし
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案の定、大した敵ではない。けど、LV1のままの涼香さんや聖哉には厳しい敵となるため、オレが一気に片付けて、経験値を分けてあげた方が、安全に事が進む。
この程度の害獣なら魔術を使って退治するのもいいが、せっかくなので合成魔獣戦で手に入れたスキルである『稲妻』と『破壊光線』を使って見ることにした。五~六頭の群れがオレ達に向けて一斉に走り込んでくる。ディスプレイから選択し、視界内に表示した使用スキル欄から稲妻を選ぶ。すると、全身が光を放つとともに、ターゲットサイトが出ている魔物に向けて轟音とともに稲妻が迸る。
稲妻の命中したビッククローベアーは直径一〇メートル以上抉られた地面ごと跡形もなく消え去っており、大きく抉られた地面に魔結晶だけが残されていた。地面の爆発に巻き込まれた別のビッククローベアーが吹き飛ばされていた。あぁ、威力が半端なく強かったな。スキルのクールタイムが魔術と違って長いなぁ。このスキルは魔術の繫ぎの攻撃かな、魔力も消費しないし。魔術連発でMPヤバい時に使う用だな。
「しょ、翔魔さん……敵が消し飛びましたけど……何してんすか。派遣勇者ってそれぐらいの能力が普通なんですかね? 僕も稲妻とか撃てるんですか?」
聖哉が持っていた槍を取り落としそうな勢いで慌てていた。今まで冷静さを失わずにいた聖哉がオレの放った稲妻を見て冷静さを失ったのを見ると、案外可愛気のある後輩だと思えるようになるから、不思議だ。
「聖哉君、柊君は別世界の人よ。さっきの柊君が普通の派遣勇者だって思っちゃダメ。普通の派遣勇者は身体から稲妻出さないし、魔術を使うのが一般的だってエスカイアさんが言ってた」
涼香さんもオレが身体から稲妻を出したことにビックリしているようだ。確かにスキル模倣によって害獣からもスキルをコピーしているが、身体から稲妻を出す派遣勇者がいたっていいと思うんだが……。ダメかな。でも、とりあえず『破壊光線』も試してみたい。
誘惑に負けたオレは破壊光線のスキルを選択してターゲットサイトをビッククローベアーの一匹を狙う。自然に手が狙いを付けた害獣の方に向き、周りの魔素を凝縮していく。すると眩い光球が出来上がってその先から光条が目標に向けて放たれた。そして、光条が目標に命中すると簡単に貫いてそのまま魔境地区の大地を切り裂くような形で突き進み、やがて爆風がこちらへと押し寄せてきた。
「うわっぷ。ご、ごめん。ちょっとだけ強いスキル過ぎたみたいだ」
消し飛んだビッククローベアーはもちろんのこと、周りにいた敵も一緒になって爆風に巻き込まれて地面を転げ回っているうちに死んでしまっていた。ドロップされた魔結晶がこちらに向かって集まってくる。
「翔魔……お主の力は強すぎじゃ。魔境地区が吹き飛ぶぞ。翔魔は回復と防護魔術で援護決定じゃ。聖哉、お主がメインで戦え、翔魔の防護魔術とエスカイア、涼香の援護があればここは余裕で狩れるはずじゃ」
爆風で髪の毛が乱れたことを気にしているトルーデから、戦闘禁止命令が出た。ちょっとだけ試してみたかったのだが、合成魔獣からゲットしたスキルは両方ともかなりヤバイ代物でS級討伐の時くらいしか使い道がなさそうであった。
「分かりました。僕も何だかそっちの方が安全な気がしてきました。翔魔さんの力はここの敵にはオーバースペックすぎますね。僕も何だか今ので少しレベル上がったんで、やれそうな気がします」
聖哉もオレがまた何かしでかすかと思っているようで、自分が次の害獣と戦うと言い張ってきた。そんなに本気じゃなかったんだけどな……。色々と戦いのレベル調整難しいわ。
「翔魔様、みんな。さっきの爆風でこの地区の害獣が一気に我々に近づいてきましたわ。翔魔様は防護と能力アップの魔術を皆さんに掛けてください。前衛はわたくしと聖哉君、涼香さんが援護、トルーデ様も援護お願いします。翔魔様は回復援護『だけ』してください」
エスカイアさんにも戦わないように釘を刺されてしまった。いや、オレも悪気があってああいった事態に陥ったわけではなくて……ついね。ものは試しと使ってみたら意外と威力が高すぎてさ。今後は気を付けます。
戦闘禁止命令を受けたオレは、聖哉とエスカイアさん、涼香さんにありったけの能力向上魔術を重ね掛けして、防護魔術も付与しておいた。そして、常時、HPが回復する方陣の設置も完成しているので、誰一人苦戦することなく、ここの害獣を狩れると思われる。なので、オレは害獣のステータスチェックとスキル収集に勤しむことにした。
さ、さすが翔魔様……伝説クラスの勇者は身体から稲妻出したり、手から光条出したりするのね。
わたくしも頑張らないと……(エスカイア)
翔魔の奴は桁外れの力じゃのぅ……下手にあんな力を使われたら、被害がデカくなる。その辺も翔魔にきちっと教え込まないと危ういのう。聖哉はそれなりに使えそうな奴だから、雑魚は聖哉に任せられるように仕込んでいくか(トルーデ)







