第百十話 勇者コースの子たちが、大戦果あげると俺もサボれない
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朝礼を終えると装備を付けて聖哉とともに、勇者コースを選択した子たちが待つ中庭に向かった。
今日も無事故で終わらせないとな。
勇者コースは低LVとはいえ害獣と戦うことになるので、万が一の事故も起きないように細心の注意を払って行うことにしていた。
「翔魔様が来た! 皆、整列」
オレの姿を見たオルタが、参加者を呼び集めて整列させる。
年齢的には上の者もいるが、オルタはリーダーシップを発揮して、参加者たちを取り仕切っている。
これも、トルーデさんからの薫陶のおかげだろうかとも思うが、もう少し子供らしくしてもいいかなと個人的には思っていた。
「そんなに気張ったら、害獣退治で失敗するよ。肩の力を抜いていいから。はい、深呼吸」
緊張でこわばっていた子たちに深呼吸させてやる。
今ならオレが就活で落とされた理由が少し分かる気がした。
あの時のオレも何十回も落とされて色々と気負っていたものが、相手に見透かされていたんだと思える。
傍から客観的に見ると、そういった余裕のないやつは危なく感じるもんな。
緊張していた子たちに自分の就活時の姿が被る。
「落ち着いて、自信もっていこうか。君たちは聖哉の科した試験に合格したんだ。胸を張ろう」
オレの言葉に子供たちがスッと姿勢を正す。
さきほどの緊張した様子は消え去り、自信に満ちた顔が並んでいた。
「柊主任の言う通り、君たちは僕の科した試験を通過したことを誇りに持ってくれればいい。そして、油断なく落ち着き、冷静に害獣と戦うことを心がけていこう」
勇者コースの選定をした聖哉も子供たちに注意を与えながらも励ましの言葉をかけた。
「さて、行く前にバフ掛けするから並んでくれ」
「「「「はいっ!」」」」
無事故の討伐にするためにも、オレの有り余る魔力を使って、参加者たちにバフ掛けを行っていく。
成人していないため、能力値等は不明だが、オレのバフが掛かれば、まず傷を負うこともない。万が一、負っても自動回復が発動してすぐに癒されるようにしてある。
「装備点検!」
オレのバフ掛けが終わったのを見越して、聖哉が子供たちに装備を点検させていく。
この辺りは聖哉や、会社に所属する元自衛官たちを講師と呼んで、しっかりと教え込んでくれていた。
そのため、子供達はオレよりも格段に速く、自分の得物の点検を済ませている。
この装備もグエイグさんに頼んで作ってもらった武具で、(株)総合勇者派遣サービスが提供してくれる装備よりも実は優秀な装備で、外に売れば結構いいお値段がするのだが、子供たちの安全確保のため、領主としての収入から購入していた。
なので、今目の前にいる子たちは、装備とバフでエルクラストにおいて割と強い部類に入る子たちだ。
「全員異常なしです」
「じゃあ、討伐に出かけよう。けして、一人では戦わないように、皆で助け合った害獣を一体ずつ確実に仕留めていこう」
勇者コースに参加している一〇名と手を繋ぐと、短距離転移魔術を発動させていた。
目的地の魔境地区はヒイラギ領に一番近いS44320地区で、低レベル害獣のスライムやビックフロッグなどがよく発生する沼地であった。
転移を終えて、すぐに周囲を捜索する。
高レベル害獣は見られないな。一番高いのでDランクか。
これなら、子供たちに任せて危ない時だけ手を出した方がいい経験になるな。
「五人で一チーム作るぞ。それぞれ、オレと聖哉が引率して害獣狩りするから」
すぐに聖哉とオルタで話し合いを行いチーム分けは滞りなく行われた。
オレが引率するのはオルタが率いるチームの方だ。
「柊主任。では、それぞれのチームでお昼まで害獣退治に励むという形でよろしいですね?」
「ああ、緊急事態はオレに連絡入れてくれ」
「了解しました。では僕はこちらに行きます」
聖哉は引率するチームを率いて沼の右手側を歩いていったため、俺は反対の左側を進むことにした。
沼の周りは人の手が入っていないため、下草が胸の高さまで伸び、視界が悪くなっている。
「見通しが悪いから、みんな固まって行動するように! おかしな動きしているくさむらがあったら、気を付けてくれ」
子供達は手にした得物を構えながら、くさむらのなかを進んでいく。
「翔魔様! くさむらが揺れてます!」
先頭を歩いていたオルタが揺れているくさむらを発見したようだ。スキャンしたマップには赤い輝点が光っている。
スライムだな。
問題ない相手だと確認した。
「よし、オルタ。みんなの指揮を取って害獣を狩るんだ。聖哉や自衛官から教わったことを思い出せ」
「はい。左右一人は周囲の警戒、僕を含めた三人で仕留める」
チームの子たちに的確な指示を出したオルタが、剣をジッと握り、揺れるくさむらへ近づく。
ガササっ!
囲まれたことを察したスライムが一番近くにいたオルタに飛びかかってきた。
「ひっ!」
オルタは初めての討伐参加で、少し怯えて腰が引け気味だ。
しかし、左右にいた子たちが即座にフォローに入る。
なかなかに聖哉や自衛官たちの訓練は子供たちに浸透しているようだ。
「ありがとう! 助かった」
「オルタ、指示を」
「ああ、三人でこいつを討伐! 左右の二人は周辺警戒を頼みます」
すぐに冷静さを取り戻したオルタは剣をスライムに向けて振るう。
一緒に討伐している子たちもそれぞれの得物を構え、ウネウネとした動きを繰り返すスライムに斬撃を叩き込んでいった。
「僕たちだって街を守れるんだっ!」
斬撃により、弱っていたスライムはオルタの突きを受けると身体を震わせ絶命し、魔結晶を落として消え去っていた。
「ふぅ。よし。討伐した。周辺に異常ない?」
スライムにトドメを刺したオルタは警戒に当たっていた子に声をかける。
「右前方のくさむらが揺れてる! どうする?」
警戒していた子が新たな敵をみつけたようだ。
割と、冷静に戦える子が多いな。それだけ、聖哉たちが実戦的な戦いを想定して訓練してたのかな。
「沼側に近いから足元注意して近づく、左側の警戒は引き続き頼みます」
オルタが滞ることなく、瞬時に判断して指示を出した。
オルタ、優秀過ぎだな。初めての戦闘で、臆することなく指示を明瞭にだせるなんて。オレなんてエスカイアさんやトルーデさんがいないと……。
出頭人であるオルタが見せる才覚に驚きと喜びを感じる。
「了解! こちらはそのまま警戒を続けて前方に進む」
オルタは先程スライムを倒した子と、揺れるくさむらを発見した子に合流し、新たなスライムを退治し始めていた。
「包み込んで動きを封じるんだ。数の僕たちが勝てる」
四方を囲み敵の逃げ道を絶ったところで、斬りかかり、数の優勢を保って無事にスライムを討ち果たした。
すでにこのチームでキルマークは二つゲットしている。
弱い害獣とはいえ、一般人には大変脅威になる害獣を無傷で倒したことで、オルタたちも自信を感じ始めていたようだ。
この後、オルタ達は害獣に臆することはなく、スライムやビックフロッグを退治していき。
お昼までの二チームによる討伐総数は三〇体にのぼり、勇者コースの子供たちのポテンシャルの高さが確認することができた。
発売日決定しました。
五月十六日にアーススター・ノベル様より発売されます。
来週の更新では、担当イラストレーター様の冬馬来彩先生から許可をいただきました主要キャラ表の公開を活動報告で公開させてもらいます。
エスカイアさんもクロード社長も涼香さんもトルーデさんも静流もバッチリ私のイメージ通り仕上げてもらってますので、公開をおまちくださいませ~
書籍発売まであと一ヶ月と2日







