第097話 商人?
砂浜を堪能した俺達は町に戻り、定食屋で焼き魚定食を食べる。
そして、11時45分になったので駅に向かった。
「フリオは……いた」
3段に重ねた木箱の近くにいたのですぐにわかった。
「イケメンさんですね。エルシィさん、どうですか?」
「ぜーったいに先輩の方がかっこいいね。オーラが違うよ」
俺、オーラが出てるの?
「そのかっこいい先輩さんはエルシィさんしか眼中にないですよ」
「えー、そうかなー?」
「そうですよ。コミュニケーションが苦手とか言ってるのにカルロさんやフリオさんみたいな若い男性相手には率先してしゃべりますからね。あれはそういうことですよ」
「やっぱりかー」
こいつら、こういう話題になると、本当に楽しそうに話すよな。
「いいから行くぞ」
「「はーい」」
俺達はフリオのもとに向かう。
すると、フリオが近づいてくる俺達に気付き、姿勢良く頭を下げてきた。
「よう」
「こんにちはー」
フリオに挨拶をする。
「こんにちは。この度は依頼を受けてくださり、ありがとうございます」
律儀というか、丁寧な奴だな。
「俺達もちょうど王都に向かうところだったんでな。これが例の運ぶ荷物か?」
「ええ。この3つです」
「じゃあ、早速、魔法のカバンに入れていくわ」
「お願いします。私はチケットを買ってきますが、御二人は個室がよろしいですか?」
ん?
「俺達の分か?」
「ええ。依頼ですので当然、交通費はこちらが持ちますよ」
本当に良い仕事だな。
何の苦労もないのに金がもらえ、さらには交通費まで出してくれるらしい。
「じゃあ、個室で頼むわ」
「わかりました」
フリオは頷いて受付の方に向かった。
「良い仕事なんですね」
「そうだな。やはりギルドに寄った方が良さそうだ」
「それもそうですね」
「さて、収納するか」
魔法のカバンに入れようと思い、木箱に触れる。
「3つとも入りますか?」
「ああ。俺の着替えなんかの荷物はそっちの魔法のカバンに入っているからな……ん?」
この木箱、魚介類だったか?
それにしては……
「どうしました?」
「いや、なんでもない」
木箱を抱え、次々と魔法のカバンに収納していく。
明らかにカバンの口よりも大きいサイズだが、何の問題もない。
これが魔法のカバンなのだ。
収納を終え、その場で待っていると、チケットを持ったフリオが戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがチケットになります」
フリオがチケットを渡してくれる。
「お前は?」
「私は普通席ですよ。1人ですし、それで十分です」
それもそうか。
「荷物はどこまで運べばいいんだ? 王都の駅か?」
「いえ、王都のギルドでお願いします。そこで荷物を渡してくださればギルドから料金を受け取れます」
そういう仕組みなわけだ。
どちらにせよ、王都のギルドには行くつもりだったからちょうどいいな。
「ギルドまで案内してくれよ。王都に行ったことがないから場所がわからん」
「もちろんです。では、ホームに行きましょう」
俺達は歩いていき、改札を抜け、駅のホームで列車の到着を待つ。
すでに発車予定時刻の10分前だが、まだ列車が来ていないのだ。
まあ、日本の電車と違ってそんなにシビアな時間管理をしているわけではないのでよくあることではある。
「フリオは商人だったか?」
待っている間、ちょっと気まずかったので声をかけた。
なお、エルシィとウェンディが『ほらー』とか『ねー』とか言い合いながらキャッキャッしてる。
その隣で列車を待っている老紳士はウェンディを見て、固まっている。
「ええ。といっても店持ちではなく、行商人ですよ」
「やはり店を持つことが目的か?」
「まあ、そうですね。でも、気長にやってますよ。まずは勉強ってところです」
堅実なんだな。
「商人に聞きたいんだが、この国で金儲けをするなら何だ? 実は俺達、錬金術師なんだよ」
「錬金術師ですか……国で募集していますよ? 錬金術師なら好待遇でしょう」
「俺達も店を出したくてな。それで旅をしているし、長期の仕事じゃなくて、短期の仕事をしたいんだ」
「でしたらやはり鉱物関係でしょうね。国中の鉱山から毎日のように鉱物が送られてくるんですけど、その鉱物を精錬する人間が圧倒的に足りていないのです。昔ながらの方法もありますが、やはり錬金術師がやった方が質は良いですからね」
やはりそれ関係か。
「やはりそっち関係でギルドに相談するのが一番か?」
「それが確実ですし、安全でしょうね。この国は治安の良い国と自負しておりますが、それでも悪人がゼロというわけではありません。何も知らない外国人を安価で使おうとする者もいるでしょうし、ギルドに紹介してもらうのが無難かと……」
ふむふむ……なるほどね。
色々わかってきた。
「そうか。それとちょっと聞きたいんだが、これってこの国で売れるか?」
懐から金貨1枚を取り出して見せる。
もちろん、無人島で見つけた財宝のやつ。
「金貨ですね。また珍しいものを……本物でしょうか?」
フリオは手に取ることはせず、まじまじと見る。
「ああ。本物だ。錬金術師である俺が鑑定したから間違いない。純度100パーセントの混じり物なしの金貨だ」
あんなところにあったのに錆びたり変色したりしていないのが何よりの証拠。
「それは高価でしょうね……ふむ。売れるか売れないかでいれば売れるでしょう。ですが、おすすめはしません」
「というと?」
「この国は鉱物が多く採れます。もちろん、その中には金もあります。金の輸出国に金を持ち込んで売るのはおすすめできません。間違いなく、他国で売るよりも安いですよ。レスターさん達は旅をしているのでしょう? でしたらランス、ゲイツ、イラド辺りで売った方がよろしいかと思います」
なるほどな。
実に良いアドバイスだ。
「教えてくれてありがとう」
「いえいえ。このくらいお安い御用ですよ。あ、列車が来ましたね」
フリオが言うように列車がやってくると、俺達の前で停まる。
そして、列車に乗り込み、普通席のフリオと別れると、個室に入り、出発を待つことにした。
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