第092話 おかあさーん、お人形さんがしゃべったー
「ここがギルドですね」
エルシィが建物を見ながら頷く。
「ありがとうございます。助かりましたよ。では、これで」
フリオは礼を言うと、先にギルドに入っていった。
「私達も入りますかー?」
「そうだな」
俺達もフリオに続いてギルドに入る。
ギルドはエルディアのギルドとは違い、そこそこ広く、受付が3つあった。
そのうち右の方の受付にはフリオがおり、若い女性の受付嬢と話をしている。
「他の冒険者の姿がないですねー」
「この時間だし、まだ仕事中なんだろ」
時刻はまだ16時前だ。
俺達はフリオがいる方とは逆の左の方の40代くらいのおじさんがいる受付に向かった。
「こんにちは。見かけない顔ですけど、旅の方々ですか?」
受付に近づくと、おじさんの方から声をかけてくる。
「ああ。ターリーから船で来た」
「それははるばるようこそおいでくださいました。冒険者登録はされておられますか?」
丁寧な人だな。
フレンドリーだったクラーラとは全然違う。
まあ、別にどっちでもいいんだけど。
「ターリーで登録したな」
そう言って、冒険者カードを提出する。
エルシィも同じようにカウンターに置いた。
「少々、お待ちください」
受付の男性は2枚のカードを確認する。
「読めるのか?」
何度も冒険者カードを見たが、俺には何も見えなかった。
「ええ。そういう魔法がかかっていますので。イラドから来られた錬金術師のご夫婦ですね」
本当に読めるんだ……
どういう魔法だ?
「他に何か書いてるか?」
「店を開くために資金集めをしているとも書いてますね。どうですか? 仕事をなさいますか?」
冒険者ギルドの仕事か……
「魔物退治とか護衛なんてとてもじゃないが、無理だな。専門外なんだ」
「他にも仕事はございますよ。私共は冒険者の方々の適性を見て、仕事を振ります。なので魔物退治や護衛といった仕事を錬金術師に振ることはございません。ただ、魔術師(見習い)とありますので希望があればおすすめいたします」
そういや、クラーラも同じようなことを言っていたな。
「そうか……ちょっとその辺のことやこの国のことを色々と聞きたいと思っている。しかし、明日にしたい。今日は着いたばかりだし、休みたいんだ」
船の中も良かったが、揺れないベッドでゆっくりしたい。
「確かにそうですね。宿は決まっておられますか?」
「今日はそれを聞きに来たんだ。エルディアのギルドのクラーラが知らないところに行ったらギルドを頼れって言ってたんでな」
「そういうことでしたら当ギルドの2軒隣にある【海のひと時】がよろしいかと思います。王都からの家族連れの旅行客がよく利用される宿屋です」
近いな。
「王都から家族連れが来るのか?」
「少し西の方に行くと、砂浜があるんですよ。この町は夏になると、多くの人で賑わいます。今はちょっと時期が早いですので普通の港町ですけど」
へー……
ちょっと気になるが、夏まで待つのはさすがにない。
「おすすめの飲食店とかはあるか?」
「この町の名物は海鮮系のパスタです。【海のひと時】にもありますよ」
パスタか。
実は好きだったりする。
ラーメンもだが、麺類が好きなのだ。
「じゃあ、そこに行ってみよう。感謝する」
「いえいえ。それでは明日、お待ちしております」
受付の男性が丁寧に頭を下げたのでこの場をあとにする。
ギルドを出る際にちらっと受付を見たのだが、フリオはまだ受付嬢と話をしていた。
「さて、2軒隣だったな」
ギルドを出て、すぐに右を見ると、【海のひと時】という看板が見えている。
「近くて良いですね」
「そうだな。行くか」
俺達は歩いていき、2軒隣の宿屋に入る。
宿屋の中は綺麗めな内装をしており、清潔感があって悪くないと思った。
そして、受付を見ると、8歳くらいの女の子が座っており、他には誰もいなかった。
「こんにちはー」
小さな女の子相手にどうすればいいのかと思っていると、エルシィが声をかけた。
「いらっしゃいませぇ。宿泊のお客様ですか?」
意外としっかりしている子だな。
「うん。2人部屋は空いてるかな?」
「空いてます。2人部屋朝夕食付きで1万ゼルです」
安いな。
結構良い宿屋なんだが……あ、いや、シーズンの夏になったら爆上がりするタイプか。
「ご飯を3食分付けられる? この子も食べるんだよ」
「ウェンディでーす」
エルシィがウェンディを見せると、ウェンディが女の子に向かって手を上げる。
「お人形さんも食べるの?」
「食べます」
ウェンディが返事をし、頷いた。
「へー……じゃあ、3食分……えーっと、1万2000ゼルになります」
「うん。じゃあ、これ」
エルシィが料金をカウンターに置くと、女の子がお金を数え始める。
「ちょうどいただきます。では、これが鍵になります。お部屋は2階の1号室です。ご飯はそこの食堂で食べられます。追加の飲み物なんかは別途お支払いください。それではごゆっくり」
女の子が急に流暢になったと思ったらカウンターに紙が置いてあり、それを読んでいた。
「ありがとー」
エルシィが笑顔で鍵を受け取ったので近くにあった階段を昇り、一番手前の1号室に入った。
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