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宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~  作者: 出雲大吉
第2章

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第087話 落ち着き


 落ちた穴から四角い光の線が見える横穴を歩いていくと、すぐに立ち止まった。


「扉、ですかね?」


 エルシィが言うように四角いのは扉である。

 扉から光が漏れているのが四角い線となって見えているのだ。


「灯りがついている?」


 それとも外に繋がっているのか?

 でも、落ちた穴はかなり深かったし、横は海のような気がするんだが……


「どうします?」

「行ってみよう」


 やはり好奇心に勝てず、さらに奥まで歩いていくと、再び、立ち止まった。

 目の前にあるのはやはり扉であり、ドアノブが見えている。

 手を伸ばし、ドアノブを握った。

 そして、ゆっくりと回して引くと、ぎぃーという音を立てて、扉を開ける。

 すると、まばゆい光が俺達を襲った。


「誰か来たと思ったらお前達か……」


 扉の先は10畳程度の板で覆われた部屋だった。

 そこには一人の男が立っており、振り向いて俺達を見ている。


「アラム、だったか?」


 男は大柄な髭面の男であり、私掠船の船長であるアラムだった。


「ああ。お前達は……名前を聞いてないが、錬金術師の職人だったな」

「そうだ。オイルの原料の木の実を採取中に穴に落ちてしまったんだ」

「そいつはついてないな」


 アラムが笑った。


「お前も落ちたんじゃないのか?」

「そう見えるか?」

「いや……」


 多分、違うと思う。

 何故なら、アラムの後ろには大量の金貨が積まれているのだ。

 ぱっと見て、思った感想は“財宝”だった。


「ついてないのはお互い様か。まさかこれを見られるとはな」

「何だ、それ? 金貨なんて初めて見たぞ」


 この大陸のほとんどはゼルと呼ばれる紙幣が金だ。

 昔は金貨や銀貨なんかが貨幣だったと歴史の授業で習ったが、それは100年以上前の話になる。

 つまりこの“財宝”は100年以上前のものということになる。


「ハァ……」


 アラムがため息をついた。

 その瞬間、隣にいるエルシィをかばうように一歩前に出た。


「前にニーナに聞いたことがある。昔の伝説の海賊が残したお宝がどこぞの無人島にあるっていう伝説だ」

「それは俺も知っているな。この辺に住んでいる人間なら一度は聞く話だ。いや、海の男なら死ぬほど聞く話だな」


 それはそうだろうな。


「それか?」

「これは違うだろう。いや……これもその財宝の一部かもしれんな。伝わっている伝説の財宝はこんな量じゃないんだよ。ここにある財宝を金に換えても5000万ゼルがいいところだ。伝説の財宝は1000億ゼルを超えると言われている」


 尾ひれがついてそうだな。


「そうか……その財宝は見つけたお前のものか?」

「そうなるな……そうなるんだが……」


 チッ!


「何か問題でも?」

「俺は元々、海賊なんだよ。ちっぽけな弱小海賊だがな。敵国の海賊船とやりあって倒した時に軍から私掠船の話をもらって、それを受けたんだ」


 やっぱり海賊か。


「それで?」

「敵国から得たものは俺のものにしていいということになっている。だが、それ以外は没収なんだよ」


 敵国以外を襲わせないためだ。


「そうか……じゃあ、それは軍のものだな」

「そうでもない。このことを知っているのは俺とお前達だけだ」


 そうだな。

 本当にそうだ。


「――エルシィ、下がれ!」


 叫ぶと同時に右に飛び込んだ。


「チッ!」


 剣を抜き、振り下ろしたアラムが苦々しい顔で俺を見る。


「敵国以外はマズいぞ。縛り首じゃないのか?」


 そう告げながら立ち上がった。


「それも目撃者がいなければいいことだ。お前達を殺し、この穴は埋める。それで見つからないだろうし、後で取りに戻ればいいだけだ」


 それは叶わない。

 何故ならすでにウェンディが助けを呼びに行っているからだ。

 しかし、こいつにそれを伝えて、どうにかなるだろうか?

 奴はすでに剣を抜いている。


「やるか? 言っておくが、魔術師だぞ」


 そう言って手を掲げる。


「それはこえーな。でも、この距離なら関係ない」


 狭いんだよな、ここ……


「エアカッ――くっ!」


 魔法を使おうとしたのだが、向こうの方が早かったため、魔法を中断し、横に飛び込んで何とか剣を躱した。

 しかし、その際に財宝に飛び込んでしまったので大きな音を立てて、山となっていた財宝が崩れ落ちる。


「じっとしてろ。痛みなく殺してやるし、ちゃんと女の方もすぐに送ってやるからよ」


 冗談じゃねーわ。


「どうだ? この財宝は俺が見つけたことにしないか?」


 こうなったら交渉だ。


「あん? どういう意味だ?」

「この財宝は俺が見つけた。そうすれば俺のものだ。あとで山分けという算段だ。俺達はこの仕事が終わったらすぐに別の国に行くし、訴えないぞ」

「そういうのはこうする前に提案してほしかったぜ」


 だよね……

 もうこいつは引き下がれない。

 でも、十分だ。

 注意は引き付けることができた。


「エルシィ!」

「――ファイヤー!」


 横道の方に避難していたエルシィが火魔法を放ち、アラムの背後を襲う。


「舐めるなっ!」


 アラムは横にステップをし、火魔法を躱した。


「ガキがっ! 先にお前の、方を……がっ!」


 エルシィの方を見たアラムは胴体が2つに分かれ、床に倒れた。

 アラムが横に躱したと同時にエアカッターを使ったのだ。

 威力を下げたのだが、それでも屈強なアラムの身体を簡単に切断してしまった。


「先輩っ!」


 エルシィが部屋に入ってくると、尻餅をついている俺に抱き着いてくる。


「エルシィ、無事か?」

「はい! 先輩の方は!?」

「俺も大丈夫だ」


 そう答えながらエルシィの後頭部を押さえ、強く抱き寄せた。


「アラムは……死んでますよね?」

「あれで生きてたらゾンビだ」


 死んでいる……俺が殺した……初めて人を殺した。

 ゴブリンの時はあれほど動揺したのに今回はまるで動揺がない。

 あるのは助かったということとエルシィが無事で良かったという安堵感だけだった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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帰ってきた、ひゅー、ひゅー ウルトラスパーク
エリクサーで生き返ったら、それはそれで足がつく。
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